見出し画像

ある詩人の旅 9

ある詩人の旅 9

この不安はどこからやってくるのであろう
何ごとにもとらわれぬ精神の自由を感じながら
それでも尚己れを取り巻く曖昧なる不安を
何時から抱え込むようになったのであろうか

大いなる力に争うこともせず 
支配されることも無く
ひたすら自然(じねん)に身を置き 
永らえてきたこの身は
不安という 
得体の知れぬ想念にとらわれる

安んずるものを見出せず
寄る辺なき身を知り
時空の流れのこの一点に
存ることを事実として受け止める

私の描く世界は 
常に此処から生じる

この身の消滅は何をもたらすのか

他者にとってではない
有無を語るのであれば
有っても無きものであることは自明なこと

そうではない

己れにとって何をもたらすか

空しき想念から解き放たれ
存ることの永遠なる確証を得ることができるのか

こう思いながらも
この身を取り巻く不安の中で
消滅の一歩を自ら踏み出せぬことを知り
茫然とする


人知れず

旅に出たいと思った

2020 à Tokyo 一陽 ichiyoh

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?