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掌編小説/孤独なクリーチャー

掌編小説/孤独なクリーチャー

 寒い日だった。
 重たい雲からは、雪がひらひらと降りはじめた。
 体じゅうに弁当屋の油が染みこんだ頃、ぼくはアルバイト先をあとにした。年末の慌ただしさに逆らうようにして駅から駅へ、次の駅から次の駅へと乗り継いでいく。最後は単線の無人駅で、併設されている地蔵堂の屋根には雪が積もっていた。

「お帰りなさい」
 台所から妻の声が聞こえる。部屋は暖かい湯気に包まれている。
「ただいま」とぼくが言うと、

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