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【オンライン日本語教師】増加にみる業界の課題とそれに対する考え

日本語教師という仕事は、以前より注目を集めています。
2024年からは、外国人を「留学ビザ」で受け入れる学校で働く場合、国家資格が求められるようになった(経過措置はあります)ことからも、この職業が一般的になりつつあることがわかります。

では、みなさんが日本語教師をしようと思ったとき、どんなプラットフォームを選びますか。

・オンライン
・対面

どこで教えるかと考えると、まず大きな分かれ道となるのがこの点です。
オンラインで教えるか、学校などの教育機関で教えるか。
そして、最近は(noteはとくに)オンライン日本語教師が増加しています。オンライン日本語教師の総数について明確な指標はありませんが、大学4年から日本語業界にいる私の肌感からすると、近年は明らかな急増といえるでしょう。

今回は、このようなオンライン日本語教師増加から浮かび上がる、日本語教育業界の問題点についてお話しします。

※この記事は、できれば最後まで読んでください。途中で終えると、意図がきちんと伝わらないかもしれません。

日本語教師がオンラインを選ぶ理由

①自由、お金、手軽さがある

日本語教師として学校に採用されたあと、私は多忙な生活を送りました。大学の4年生だった私は、卒業論文の執筆にも追われ、授業準備には何時間も費やしました。加えて、毎回の授業後にあるプリントのチェック等の事務的処理、引継ぎも必要でした。

オンライン日本語教師の場合、それらの業務は削減されます。

好きな時間・場所で、少なくともネット環境があれば始めることができますし、基本的にフリーランスであることから、人間関係や義務的な作業に追われる負担は少ないでしょう。
もちろん、自分でやっていくということには、別の意味での苦労が発生します。しかし、やりたくない仕事を誰かに「やらされている」という気持ちはないはずです。その分、授業準備も精神的な余裕をもってできるかもしれません。

noteで調べれば、そんなオンライン日本語教師のメリットはいくつも出てきます。副業として月に何万円も稼いだという、魅力的な記事も多くあります。しかし、対面授業を行う日本語学校のメリットを謳う記事はほとんどありません。

それはなぜか。学校は働きにくいからです。

ブラック企業ならぬ、ブラック学校です。
何時間も時間外労働をさせられ給与も少なく、経営がずさんである教育機関は山ほど存在します。法務省告示校であっても、やはり学校に属する限りしばりがあり、フリーランスのように自由に働くことはできません。

②「やりがい搾取」がない

また、「やりがい搾取」という言葉も、ここ数年よく耳に入ってきます。この言葉は、主に教員が給与等に見合っていない過労をしているとき、教育というやりがいを盾にして教員を搾取しているという意味で使われます。

日本語教師も例にもれず、「やりがい」を最後の砦として、嫌なことを我慢して働いている人がいます。低い給与であっても、「やりがいがある」から働いている、オンラインではこの経験はできない、そう言う教師は多いです。

③資格が必須ではない

日本語学校は、慢性的な人材不足です。
それは、上記のような問題を抱える機関自体が招いた事態とも取れますが、その他の要因もあるでしょう。それは、資格です。

日本語教師として採用の条件となるのは、一般的に

・日本語専攻を主専攻もしくは副専攻した
・教員養成講座を修了した
・検定試験に合格した

となっており、大学をすでに卒業した年齢である40代以上女性が圧倒的に多い日本語教師業界では、養成講座修了が一番の資格取得の近道と考えられます。ですが、講座は高額であり、手を出すにはハードルが高くなっています。一方、検定試験合格は2万円ほどで受験できますが、日本語学等になじみがない方が独学で合格するには時間がかかるでしょう。国家資格の「登録日本語教員」となれば、より資格取得は困難となります。
また、法務省告示校以外で教える場合、資格は特に求められません。そのため「資格がなくてもできる」学校や、オンラインに教師が増えることは自然です。

オンライン教師増加による一番の課題

上記のように、オンライン日本語教師は非常にメリットの大きい仕事・副業です。ライフプランや需要を考えたとき、より始めやすいのは、圧倒的にオンラインのプラットフォームであり、「稼げる」のもオンラインだと思います。

ただ、それが問題でもあります。
それは、日本語学校の教員数の減少です。

先程も書いた通り、日本語学校は慢性的な人材不足です。
そして、それを救えるのはみなさん、日本語教師しかいません。

noterはオンライン日本語教師が多い

この記事は、フォロワーの方が減る覚悟で書いています。

この記事をご覧の方は、オンライン日本語教師の方が大半でしょう。私は、みなさんの仕事が学校教員より劣っているとか、悪いとかいうつもりは全くありません。

ただこれだけ言わせてほしいのは、みなさんのような知識も経験もある日本語教師が学校で働けば、この業界は待遇も徐々に改善されるということです。

noterにオンライン日本語教師が多いのは、高い自己実現力があるからだと思います。自分がより束縛なく、稼いで生活したい、自分の手でその権利をつかみ取りたいという気持ちがある方が多い印象です。
そんなみなさんであれば、自分に合う機関を選択することはきっと可能です。学校にもいろいろあります。教師にもいろいろいます。

きちんと選べば、働きやすい環境があります。
そして、業界はそんな環境を作らなければなりません。

何度も言いますが、私はオンライン日本語教師が悪いと言っているのではありません。みなさんに自己犠牲をしろと主張しているわけでもありません。
この記事も、「やりがい搾取」と進めているという批判の的となるかもしれません。メリットが少ないと言われる学校日本語教師を勧めている、時代に反した意見だと思われるでしょう。

ですが、日本語教育という業界全体を俯瞰したときに、これは大きな課題なのです。
能力のある、日本語教師になろうと思ってくださる方が、全員オンラインで始めたら。教員不足の日本語教育機関は、世間で広く知られる学校教育と同じか、それより追い込まれた形となることは確実です。現に、今その手前の段階まで来ています。

ですから、私たち学校勤務の講師は、オンライン日本語教師が増えているのを「いいなあ」「オンラインのほうが手軽なんだ」と言っているだけではいけないんです。

現在日本語学校にいる私のような現職教員や、業界全体が、
働きやすい環境を作らなければならないのです。

さいごに:日本語教師系noterとしての苦悩

1週間ほど前に始めたnoteですが、フォローやスキ、コメントをしてくださる方がいらっしゃって、本当に嬉しく思います。そして、そんな方々のほとんどがオンラインだけで働かれていると知り、「やっぱり学校は働きにくいんだ」と表現しにくい気持ちになりました。

便利で自分なりにカスタムしやすい、オンライン教師で輝いているのnoterのみなさんにとって、学校で教えるなんて想像もできないことなのでしょうか。

厚かましいことは承知しています。
でも、日本語学校でなくても、地域のボランティアでも日本語教室でも、
機会があれば、一度行ってみてほしいのです。

そして、そこで日本語教育業界について、立ち止まって考えてみていただきたいのです。

実際に働いている私も、環境改善の一歩として、
ただ言うだけではなく行動するつもりです。
その一つとして、国家資格試験・検定試験対策の動画や資料を作成し、
順次YouTubeやこのnoteで投稿していきます。


資格を、「いらないから取らない」ではなく、「いらなくてもやってみよう」と思えるような、気軽に手を出せるようなものにしたいと考えています。そして、せっかく取ったら1ヶ月でも働いてみようと思えるような教育機関を設立できるよう、計画もしています。

最後に、ほんの少しでも頭の片隅に置いておいてください。

あえて学校を選ぶという選択肢もあるということ。

どうか、日本語教育の世界が、
すべての日本語教師にとって働きやすい場所になりますように。


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