Nostalgia 第一章・1.5
大英帝国、リヴァプール。――始まりは、あるいはこの場所だったのかも知れない。
イーストエンドの騒動と同時刻。倫敦から南へおよそ八十哩(マイル)の港町でも事件は起こった。
深夜であるにもかかわらず、港に停泊した汽船からは、一斉に乗客達が降りていく。極東――日本からの船である。乗客の数は意外と多く、タラップの辺りでは少しばかり渋滞が起きているようだ。見れば、本国では流行遅れのバッスルを付けた婦人が階段を降りるのに難渋しているものらしい。彼女たちはおそらくは、日本帰りの外交官