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ほっぺたとガラスの器とヨーグルト

我が家ではスーパーマーケットのカートのことを「くるくる」と呼んでいる。子どもたちが小さいころの名残りである。

「くるくる」を押す役目は保育園児だった娘のおしごと。
スーパーマーケットの入り口でいつも娘にお願いする。「あっ!みーちゃん、くるくる持ってきてね」と言うと「はーい」と元気なお返事。並んで一緒に歩く。

買物メモに書かれているのは、たとえばお魚、にんじん、たまねぎ、ウインナソーセージ。見つけたらみーちゃんが操縦するくるくるは、そこでピタッと止まるのだ。そして牛乳コーナーにたどり着くと決まって娘がこう聞く。
「よーぐうとたべう?」「うん、たべようね」答える私。大好きなヨーグルトを買って帰ったら今日は何をかけようかな。

はちみつ、メープルシロップ、ブルーベリージャム。
おさとうは三温糖、それともヨーグルトについてるサラサラの白いやつ?

ヨーグルトは500mlの四角い容器に入っている。おそろいのガラスの器を三つ並べる。おにいちゃん、みーちゃん、おかあさん。きれいに3等分になるようにスプーンで取り分ける。こぼすといけないからこれはお母さんのお仕事ね。

テーブルにひじをついて、まあるいほっぺたを両手でささえながらさくらんぼの絵のついたガラスの器にヨーグルトが入りきるまで、じっと見つめているみーちゃん。その姿のかわいいこと!

小学生になったみーちゃんはおかあさんに代わって、ヨーグルトを取り分ける担当になった。「おかあさん今日は何かける?」そしてそれは、大人になってもずっと続くことになった。

おにいちゃんは自立するのが早くて早々に家を出た。
ヨーグルトの器を並べる数も、いつしか3つから2つになって・・・
やがて会社員の娘と私。

就活もうまくいき、恵まれた環境で働くようになった娘。定年まで働ける会社だからね、結婚しても将来は育休がとれるよ。なんて言っていたのに就職して4年で結婚が決まり、おまけに海外で暮らすことになった。

あれよアレよと、両家顔合わせ、続いてウエディングドレス選びに結婚式、とてもかわいがっていただいた会社では引継も完了して円満退職。
そして出発の日の空港での見送り。

空港に着くまでに娘とふたりで大きなトランクを持ってバスから電車への乗り換え。前の日までに忘れ物がないか何度も確認したから大丈夫よね。

搭乗口に向かう前に娘と二人でカフェに入った。注文したパンケーキにはガラスの器のヨーグルトがついていて。まさかこのタイミングでそんな気持ちになるとは娘も私も思っていなかった。

ふたりして。
ぽろぽろと涙があふれてしかたなかった。
「しあわせになってね」「うん」。

おもい出すのは、ほっぺたとガラスの器と、ヨーグルト。

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プロ着付け師として延べ2,000人以上の着付け経験あり。結婚式場、撮影スタジオ、人気サロンなどで活動 その経験をもとに現役のプロ着付け師さんにもお教えしています おかげさまでスタッフにも恵まれ着付け業務ご依頼を多数頂戴しております http://ichigonohana.net/