市枝蒔次

いちえだ・まきじ noteとカクヨムにて活動中。 メイン:小説 サブ:エッセイ、詩、絵…

市枝蒔次

いちえだ・まきじ noteとカクヨムにて活動中。 メイン:小説 サブ:エッセイ、詩、絵、音楽、写真、曲紹介、考察、二次創作。 固定記事にリンク

マガジン

  • 浮世黒蝶みをつくし(長編小説)

    和風ファンタジーの連載小説です。 人の悪夢が「黒き蝶」の姿を取る世界。 その蝶を喰らう「浮橋様」という存在。 そして、「浮橋様」に仕える者たち。

  • コミック・シンキング(考察・二次創作)

    漫画の考察および二次創作です。多分、ほとんどワールドトリガー。別媒体で書いていたものの改訂版を含みます。

  • 架空・CD・置き場(絵・音楽)

    自作の絵と音楽の置き場です。CDのように、並べていきます。

  • 市枝蒔次の自己紹介

    作品とリンクの一覧と、100の質問への回答を載せています。

  • SONG RADIO FROM ICHIEDA(曲紹介)

    二言三言で好きな曲の紹介をします。それより多かったりもします。

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情報発信メディア一覧X(Twitter) https://twitter.com/ichd_mkj642470 情報まとめサイト(「花落つる頃、花咲く頃」) noteのマガジン一覧〇一覧 〇詳細 「市枝蒔次の自己紹介」 市枝蒔次に関する基本情報をまとめています。 ・市枝蒔次のリンク一覧(本記事) ・小説を書く人に100の質問 「浮世黒蝶みをつくし」 長編連載小説  和風ファンタジーです。 人の悪夢が「黒き蝶」の姿を取る世界。 その蝶を喰らう「浮橋様」という存

    • シュルレアリスムにしては整然としすぎている何か

       深層心理の水面の、美しいあぶくを掬うようにして、小説を書いている。  シュルレアリスム絵画は深層心理を描き出したものとされる。一見意味が解らないけれど、欲、夢、そういった、人間が奥深くに有しているものを描いているから、目が離せなくなる。シュルレアリスム絵画が好きだったらしいと、最近気づいた。本当に最近のことだ。  意味不明でありながら、人を引きつける作品が書きたいと思った。しかし私の作品は、それにしては整然としすぎている。常識の範疇を越えない。「春は桜」「秋は紅葉」に囚わ

      • 二十二 白き鳥、月夜を飛びける事

        前話  見る人に 物のあはれを しらすれば 月やこの世の 鏡なるらむ 「匂い袋だけではなくて、食べ物も送った方がいいかもしれない」 「妹さんが食べるものはどうしているんだい?」 「世話になってる寺の住職が、面倒を見てくれてんだよ」 「そうなのか、じゃあやっぱり食べ物は必要だね。滋養のつくもの。粥は喉に詰まるかもしれないから……湯に溶かして飲むとか……」  三人は、あらかた「植生倉」の掃除を終え、厨房の一角で食事を取っていた。それでも、会話の内容は倉の中と大して変わ

        • 二十一 藍に染む折に逢はんとぞ思ふ

          前話  気がつくと、板張りの床の上に立っている。  油断していると飲み込まれてしまいそうなほど、辺りは静かだった。窓の隙間から零れる日光は不気味なほどに美しく、それによって生まれる影は筆で塗りつぶしたように黒い。漆喰の壁が、迫るようにそそり立つ。ここはお堂の中。  その中で、少女が一人、眠っている。  黒い髪が影によっていっそう暗く沈み、頬はぞっとするほど青白い。唇はしおれた花のような紫で、体はその枝のように細い。   「……伊那」  引鶴は、ぽつりとその少女の

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        • 浮世黒蝶みをつくし(長編小説)
          24本
        • コミック・シンキング(考察・二次創作)
          6本
        • 架空・CD・置き場(絵・音楽)
          4本
        • 市枝蒔次の自己紹介
          3本
        • SONG RADIO FROM ICHIEDA(曲紹介)
          7本
        • 連作短編集 徘徊紀行(短編小説)
          3本

        記事

          閑話 設定収集・ニ

          前話 【主要な人物の紹介(二十まで)】 ・氷雨 主人公。階級は「新月」。「浮橋様」に再び会い、その謎を知るために、「月下藍」を目指している。絵を描くのが得意。 ・深山 氷雨の師匠兼監視役。階級は「月下橙」。「染め布役」。氷雨に、「浮橋屋敷」での基本作法を教えた。 ・浮橋様 「浮橋屋敷」の主。普段その姿は、「浮橋御殿」の黒い御簾に隠れている。雪代の姿形をしているが……? ・連翹 氷雨の友人。階級は「新月」。草木の香を愛する。「浮橋御殿」で嗅いだ独特の香を追い求

          閑話 設定収集・ニ

          【ワートリ創作小説】前夜

          ※以前別媒体に公開していた作品です。 ※オリジナルキャラがいます。苦手な方はご注意ください。 「お嬢様、ヒュースが来ましたよ」 その声に従って扉の方を向くと、そこには1人の忠士が立っていた。  黒いマントに覆われた背筋はまっすぐ伸び、正面から見据えてくる青色の視線と直角に交差している。黄土色の髪の間からは白い角が生えていた。見慣れていたように思っていたけれど、戦士の恰好をした上でそれを見ると、何とも言いがたい思いが胸に湧く。  彼の名はヒュースといった。  窓辺に置い

          【ワートリ創作小説】前夜

          二十 蝶を抱へて生くる者たち

          前話 「随分と派手に散らかしたね、引鶴くん……」 「……五月蠅いな」 「引鶴、散らばった薬草を、元の引き出しに戻せばいいの?」  三人は各自床に座り、群れからはぐれた薬草を引き出しに入れていく。幸い、色や形、香の違いによって丁寧に選り分けていけば、時間はかかるものの、元には戻せそうだった。 「嬉しいね、薬壺の中に閉じ込められた気分だ」 「これは『たびき』で、これは甘草で……」  嫌味か本音かわからない独り言を呟く連翹。その隣で、氷雨はひとつひとつ名前を呼びながら

          二十 蝶を抱へて生くる者たち

          十九 初秋は薬草の香ぞする

          前 「植生倉」の草木が色づき始めた頃、連翹は匂い袋を氷雨に手渡した。  きっかけは、「わじく」を捌いた日のこと。 「役事所」を出て「月下長屋」に向かう中途の道で、ふと連翹が話を切り出したのだ。 「氷雨くん、ちゃんと眠れているかい?」 「どうして?」  氷雨は不思議そうに連翹を見る。彼は黒い瞳を無言で光らせたまま、じっと氷雨を見ていた。 「ぼくが初めて出会ってから、君の目元にはいつも隈がある。薄い日もあるけれど……、でも、ずっとあるんだよ」 「……そうなのか」  氷雨は思

          十九 初秋は薬草の香ぞする

          十八 竹を編みて月下の務めを知る

           前話  今日の「宿主」は、細く、折れてしまいそうなほど背の高い青年だった。  暗がりでもわかるほど、顔が生白い。氷雨の声にはぼんやりと反応しているようだったが、その瞳は明らかにうつろ。  青緑色の布の下に彼を寝かせ、黒蝶が額から出てくるのを待つ。手には竹籠。しばらくすると、赤紫の光に染まった黒蝶が、ゆっくりと姿を見せる。人の拳ほどもある、大きな蝶だった。 「良し」  それを捕らえると、「月下蛍」の灯りの中に深山の声が響く。氷雨は一息つき、籠の中で羽を休める黒蝶に目

          十八 竹を編みて月下の務めを知る

          『追憶の烏』という地獄を読みました

          本日読了した、八咫烏シリーズの『追憶の烏』。 すでにお読みになっている方はお察しの通りかと思いますが、 読了した現在、作品のことしか考えられず、キャラクターたちのことを考えては、のたうち回っています。重症です。助けて。 ということで、傷を癒すべく勢いで書いた感想(悲鳴)です。追憶の烏以前の巻へのコメントも混じっています。 当然のようにネタバレしていますので、ご注意ください。 ・若宮ーーーーーーー!!!!弱点が弱点だから絶対どこかで死んでしまうと思ってたけど、まさか、

          『追憶の烏』という地獄を読みました

          十七 月下蛍を黄泉へ送りて

          前話 「見て。あれが『月下蛍』。『浮橋屋敷』の灯りにのみ登用される、特別な蛍」 「おお……」  三人は目を凝らした。地上に星が住むならば、きっとああであろうと思わせるほど、その光は美しく、小さい光ながらも目を奪う魅力に満ちていた。 「普通の蛍は夏の終わりにはもういないんだけど、『月下蛍』は特別。伝え聞いた話によると、『月下蛍』は我々『月下』より古くから、『浮橋様』に仕えていたらしいの」 「『月下蛍』がおれたち『月下』の名の由来になったんですか?」 「そういう説もあ

          十七 月下蛍を黄泉へ送りて

          sakura

          さくらさくらのアレンジ

          十六 逝く夏に青白き光を見たり

          前話 「氷雨、頬に墨がついてる」  深山がそう言って、氷雨の頬を指差した。頭上で静かにはためく青緑色の布。それをちらっと見てから、手の甲で頬を拭う。 「うん、取れた。勉強熱心だな」 「『橙の試し』のために、いろんな草花を見て、その形を描いてみているんだ。木切れや、紙の端に。同じ種類の草でも、少しずつ形が違って、楽しい」  氷雨は、自室に置かれた写生の束を思い返す。描いてはそれを保存しているから、今や氷雨の部屋には、幾枚もの草木の絵が置かれていた。画集や展覧会もできる

          十六 逝く夏に青白き光を見たり

          十五 魚捌きてその血色に惑ふ

          前話  靄の彼方から聞こえる雁の声のように、厨房の奥からくぐもった音が聞こえる。野菜が瑞々しく切られていく音。鍋と木べらがぶつかる音。水を流す音。それらが混じり合い、一つになって氷雨たちの耳に届く。 「ほら、湯だ」 「ありがとうございます」  山辻が、氷雨、連翹、引鶴の座る卓までやって来て、急須に湯を注いだ。三人は礼をして、ふんわりと立ち上がる甘く爽やかな茶の香に酔いしれる。 「早いな。今日も、試しのための勉強会か?」 「はい。でも今お茶を飲みに来たんです。これか

          十五 魚捌きてその血色に惑ふ

          十四 刹那、淋しき黒蝶を見たり

          前話  花は根に 鳥は古巣に かへるなり 春のとまりを 知る人ぞなき   桜咲く。  夜闇を含んだ花弁が風に揺れるたび、紐から解き放たれた数珠玉のように、ぽろぽろと舞い落ちていく。枝はそれに多少の未練を見せるように揺れ、幹はただ黙々と見送っていた。  障子窓は、氷雨たちがいる部屋の中と外を切り分ける枠のように広がる。そしてその境界線に立つように、窓の縁に腰かけた少年。  片足を縁に乗せ、桜を背景にして、滑らかな横顔を浮き彫りにしている。漆のように艶やかな黒髪。鼻から

          十四 刹那、淋しき黒蝶を見たり

          十三 三人車座で語るは面映ゆし

          前話  畳の上に三人。連翹は、畳の破片を手でこねくり回しながら、ちらりと引鶴を見やった。 「どうして、引鶴くんは氷雨くんのことを知ってるんだい?」 「俺の師匠が、氷雨の薬を作ってるんだよ」 「薬?」  月光が建物の死角へと移り、「月下蛍」の青白い光だけが、よすがのように輝く夜。引鶴は、氷雨の肩を叩きながらそう言った。余計なことは言わないように、と氷雨は無言の視線を送る。それに気づいているのかいないのか、引鶴は自然な仕草で連翹の肩も叩いた。 「ま、何にせよよろしくな

          十三 三人車座で語るは面映ゆし