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『追憶の烏』という地獄を読みました

本日読了した、八咫烏シリーズの『追憶の烏』。

すでにお読みになっている方はお察しの通りかと思いますが、

読了した現在、作品のことしか考えられず、キャラクターたちのことを考えては、のたうち回っています。重症です。助けて。


ということで、傷を癒すべく勢いで書いた感想(悲鳴)です。追憶の烏以前の巻へのコメントも混じっています。

当然のようにネタバレしていますので、ご注意ください。


・若宮ーーーーーーー!!!!弱点が弱点だから絶対どこかで死んでしまうと思ってたけど、まさか、藤波の手で死んでしまうとは……。若宮があっさり死んでしまうの、彼はあくまで歴史の中のいち登場人物という感じがして怖かった。

・若宮は雪哉を信じたかったんだろうな。でもお互いどうしようもなく賢くて、同時に気づけていない部分もあって、小さな小さなすれ違いが、一見絆の強い主従関係の表面下に広がっていって、若宮の死によって、そのひびが修復不可能であることに、雪哉は気づいてしまったんだね……。そしてかつては自分がああはなるまいと思っていた存在になってしまったことに。

雪哉は悲しいほど賢くて、だからこそ、若宮の思いにも応えきれず、誰かに対する心の底からの執着を持てなかった。だからきっと我を忘れるような激しい恋はできないのだろうし、どこか恋愛的に慕っていた紫苑の宮も一緒には逃げてくれない。

・紫苑の宮が幸せになってほしいと願い、宮の前で泣き笑いのような顔を見せる雪哉が辛い。すべてを見透かしているようでいて、それでも笑ってくれる人が雪哉には必要だったんだろうな。でも彼女も雪哉の手から離れていく。雪哉は孤独な立ち位置を与えられると、最もその冷酷無比な実力を発揮できるけど、もっとも一人にしてはいけない人。そんな彼がどんどん近しい人から手を離されていくのが苦しい。

いや、若宮の遺言といい、手を離していたことに気づかなかっただけなのか……、いずれにしても、雪哉の笑いは凄絶で痛々しくて、本当に辛い。皆が雪哉を厳しく断罪して拒絶(それこそあせびを断罪した時の若宮のように)したのではなく、優しく拒絶したのが辛い。するっと手を離していって、いつの間にか雪哉一人だけになっているような怖さと寂しさ

でも雪哉に心がないわけじゃないんだよな……。若宮を死なせたくないって思いが、消えたわけではなかっただろうし……。

・茂丸といい、明留といい、みんな遺言を残さずに逝ってしまった。だからこそ若宮の遺言に雪哉は期待したんだろうし、だからこそ、そこに自分の名前がなかったことに絶望したんだろうな。自分は誰かにとっての特別にはなれなかった、という絶望。

・ますほのすすきが、「わらうひと」で心を求めていたと語っているけれど、若宮もそれを求めていたんだろうな。澄尾はたぶん若宮に心を差し出していたんだろうし、ますほにもそう。でも雪哉はそれを差し出せない。頭脳や才能など、雪哉にはひとより主に与えられるものはたくさんあったけれど、一番求められるものを捧げることができなかった。 

・明留……千早の発言で嫌な予感はしていたけど……

最初は使用人になんでもやらせていたのに、「ちはやのだんまり」で千早たちのために喧嘩したり、人のために体を張れる男、だからこそあの最期なんだろうし、昔のままだったら綺麗な顔で死ぬことができたのかもしれない。

でも彼は貴族としてではなく武者として生を全うした。彼の奮闘で金烏は妻の元で息を引き取ることができた。護衛としての矜持、己の主のためなら綺麗な顔を汚しても歪めても構わないという覚悟。彼にはきっと、若宮に身命を賭して仕える選択をしたことに後悔はないんだと思うと、それがもうすべて……


・千早の心境考えるだけで心臓痛い。明留を思わせる頼斗とともに行動している時、一体どんな気持ちだったんだ。そして彼が雪哉を盲信しているのを見ている時。感情をほとんど出さないからこそ余白が多すぎてしんどいし、そんな彼が友人と言っているのを思い返すと、もうどうすればいいかわからない。

忘年会から逃げてくるのはおもしろいけど。雪哉は内心毒を吐きながらニコニコ応対してたんだろうな〜。


・澄尾、ますほのすすき様と結婚したのか!おしどり夫婦になってそうとほっこりしている場合じゃなかった。

澄尾、崩御の知らせ聞いて苦しかったろうな……、かつて自分が火傷まみれになってまで守った主が、幼馴染が、自分のいない時に死んでしまうなんて。自分がいればって思っているんだろうけど、そうしないとあの時点で若宮は死んでいたかもしれないし、でもあの時もっとこうしていれば……とか悔いはつきないのかもしれない。辛い。


・治真の変貌がけっこうショック。にんまりと笑うのがなんとも……。素直だけど頭は悪くないからなんというか、変貌ではないのかもしれないけど、しごく冷静に雪哉を盲信している狂気。

でも、追憶の烏の終盤のシーンで、彼にも彼なりの矜持と覚悟があって仕えたのかなと思ったり。


・白百合の章は、追憶の烏の前に読んだらやばいのはわかってた。やめてくれ。いきなり最初のエピソードで傷口に塩を塗るのはやめてくれ。千早のエピソードは、追憶の烏と合わせ技で心臓にくることはわかってた。わかっていても、その優しい劇薬は効く。

とはいえ澄尾の告白は大変良かった。ひたゆきな恋をしていて、でもそれを客観的に語れる冷静さもあり、それゆえ苦しんでいて、でもやっぱり幸せそうでよかった。ますほのすすきはかっこよくて可愛くて最高。切実に幸せになってください……


・滝本の回想がつらい 藤波は最後まで滝本の方を振り向かずに、早桃と同じ方法で……。死んでほしくないと悟ったときにはもう遅い。死んだ人が蘇らなかったり、何も言わずに死んでしまうのがあまりにもリアル。

・浜木綿の過去をしっかりお出しした上で、彼女を反逆者として追わせるの、あまりに展開として丁寧で、心をえぐってくる。浜木綿は覚悟した上で妻になったんだろうけど、いざ実際にその時が来るとあまりにも……。あの遺言は夫婦の絆なんだな、1巻の時から、誰よりも若宮のことを考えていたしな……

・あ、あ、あせびーーーー!!?? そして金烏代はどこまで浮雲への執着がすごいんだ! 会う一人すべてくるわせる浮雲母子の破壊力たるや。

それと同時にあせびの空っぽ具合も感じて哀れ 外見が彼女を構成するすべて。

・一気に弱々しくなった紫苑の院の姿を見せた後、全然変わらないのに同じ立場を得そうなあせびを出してくるの、本当に皮肉。場を荒らす要因として「凪」彦を出してくるの、本当に皮肉。

・もうだめだ 今までの巻を平常の気持ちで読み返せる気がしない 「この頃はまだ平和だった……ウッ」ってなりそう……

・『烏の緑羽』は短編ぽいからまだ心がもちそうだけど、『望月の烏』大丈夫だろうか……?心臓もつだろうか……?




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