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アルコール依存症一歩手前の私が、断酒できたわけ

 秋も深まり、熱燗が恋しい季節がきましたね。お酒と言えば、コロナ禍を機にアルコール依存症が増加傾向との報道がありました。アルコール依存症の患者数は国内で約100万人、依存症予備軍は900万人と推計されています。アルコール依存症は、自分自身の健康問題だけでなくて、仕事を失ったり、家庭崩壊にいたる例もあるようです。
 実は私もコロナ禍の最中に、アルコール依存と診断されたわけではありませんが、毎日の飲酒量が増えて危ない時期がありました。本書では、30年以上365日お酒を飲み続けていた私が、断酒した経緯を振り返ります。お酒をやめようか迷っている人、やめたいけどやめられない人はぜひ参考にしてください。


自己紹介

 初回の投稿ですので簡単に自己紹介します。現在年齢66歳、43年間システム・エンジニアの仕事をして、今年3月に定年退職した男性です。
子供も独立し、現在は妻と二人で関西で暮らしています。妻は今も仕事をしておりますので、私が家事の見習いをしながら、ライター業を始めたところです。

お酒を飲んでいたころのこと

 結婚当初はそれほどでも無かった酒量が、40代になると徐々に増えていきます。私の職種はシステム・エンジニアですが、システム開発業務はストレスの多い仕事です。とくに管理職になるとプロジェクトマネジメント・部下の教育指導から悩み相談なども加わり、終電近くまで働きクタクタになる毎日。いやしの時間をお酒に求めるようになりました。

 福岡に単身赴任した50歳頃から一念発起して筋トレ・マラソンなどのトレーニングを定期的に行うようになりましたが、飲酒習慣は続きます。ランニング仲間もビール好きが多く、美味しいビールを飲むために走るといったノリです。
 「自分は仕事をいっぱいこなし、体も鍛えているんだから、お酒くらいいいだろう」今から考えればおごりがあったのでしょうね。全く若気の至りです。

山形県酒田の純米酒「初孫」、大好きなお酒です

なぜ、断酒を決意したのか?

 その後も、仕事と余暇のスポーツを楽しくやるというアクティブ思考の生活が続きました。単身赴任地は福岡から東京に変わりましたが、お酒はコンスタントに365日飲む生活が定着。スポーツは東京に転勤してからも継続。スポーツジムで筋トレや格闘技系エクササイズに励み、マラソンから更に100Kmウルトラマラソンまで完走しました。スポーツジムやランニングで汗を流した後のお酒は格別の楽しみでした。

 新型コロナウィルス感染症が蔓延した2020年春ごろから勤務先の仕事はテレワークが増えます。東京で単身赴任中だった私は、一日中単身アパートの一室で過ごすことに。手持ち無沙汰も手伝って、次第に酒量が増えていきました。そのころの生活はこんな感じです。
・早朝はオンラインで英会話レッスン
・昼間はテレワーク(勿論、仕事中はお酒は飲みません!)
・定時後は自宅での筋トレで汗を流す
・筋トレ後は動画配信を見ながら、自炊の料理を肴にお酒を飲む
単身赴任を良いことに、ビール・ワイン・ウイスキー・日本酒・焼酎なんでもござれ状態。寝つきも悪く、催眠が目的の飲酒で、ますます寝れなくなるという悪循環でした。

 コロナ前は職場で他愛の無い会話をしたり、スポーツジムでトレーニングしたり、週末は仲間とランニングを楽しんでいたのが嘘のような生活です。そんな生活が原因でしょうか、2021年の1月中旬には、以前には無かった頭痛が時々するようになってきました。

 そんなさなかの2021年1月20日、あるニュースが流れてきました。お笑い芸人の爆笑問題・田中さんがクモ膜下出血・脳梗塞で入院されたとの報道です。田中さんの場合は、決して病気の原因は飲酒ではないと思います。しかし、頭痛が酷い私は強い危機感を覚えました。

 「単身赴任中の初老男性がアパートの一室でクモ膜下出血・脳梗塞で倒れたまま孤独死・・・」
そんな新聞記事のタイトルが頭をよぎりました。
 このままダラダラお酒を飲む生活をしていると生命が危ないのではないか。頭痛も酷いし、ぽっくり死んでしまうかも知れない。そんなことになったら、自宅に残した家族がどんなに悲しむことだろうか。

 その時は、断酒するなんて大それたことは考えていませんでした。まずは家族に迷惑をかけないように、コロナ禍でせめて健康に暮らせるように、少しお酒を控えようという軽いノリだったのです。

江東区・清州橋 東京にいたころ、隅田川河畔を良く散歩しました

断酒開始時の理論武装は重要

 実は白状しますが、以前にも数回お酒をやめようと思ったことがあります。ずっと筋トレを継続していますが、体質なのか体に筋肉があまりつきません。一説にはトレーニング後の飲酒が良くないとのこと。そこでお酒をやめようとしたのですが、1週間でまた元に戻るということを繰り返しました。

 過去の断酒失敗経験を反省し、今回は理論武装することにしました。
理論武装に役立ったのは、1冊の本と、Youtubeの動画です。
以下に紹介します。

禁酒セラピー

 禁酒のバイブル的な存在の「禁酒セラピー」(アレン・カー)をネットで取り寄せました。著者のアレン・カーは禁煙活動で有名な啓蒙家で、「禁煙セラピー」が代表作。その本のアルコール依存症への横展開版が「禁酒セラピー」です。この本では、お酒はそもそもが健康に良くないものとし、お酒による洗脳から解放されることを説いています。本の評価は賛否両論あるようですが、私は素直に納得できました。今度こそ断酒できるのではないかと思えました。


Youtube動画

・勝間和代さんの動画
 YouTubeで「断酒」をキーワードに検索すると、勝間和代さんの動画に巡り合いました。勝間さんの著書はデビュー作以来ほとんど愛読し、信頼していましたので、この動画も素直に頭に入ってきました。
勝間さんはご自分の経験を踏まえて、「お酒は3日やめて、その後も一生お酒と縁を切るという決意をすれば、やめられる」と強く語られています。この動画は私にとって強い味方になりました。よし、3日間やめられたら、一生、お酒と縁を切ろうと決めた瞬間です。


・断酒道さんの動画
 断酒道さんはアルコール依存症に関わるさまざまな動画を公開されています。ご自身がアルコール依存症の一歩手前から断酒を経験されたことを元に、アルコール依存や一歩手前の方へ啓蒙活動をされています。アルコール依存にまつわる悲惨な事例、それを克服した事例など勇気づけられる動画が盛り沢山。断酒を開始した後は、断酒道さんの動画を毎日見て学習を継続しました。


 以上の書籍やYouTube動画で学習しながら、私の断酒はスタートしました。今回の断酒成功の要因は、スタート前の事前学習とその後のフォロー学習です。飲酒やアルコール依存症のメカニズムと事例をしっかり理解しておくことが大切だと思います。

 断酒スタートは2021年1月24日(日曜日)です。
まず手始めにやったこと。
部屋にあったお酒を、すべてキッチンのシンクに流し込みました。
ビール、ウィスキー、日本酒、焼酎、梅酒・・・大量のストックがありましたが、未練を断ち切るため、容赦なく捨てました。

 問題は夜です。
とりあえず、お酒を飲まずに夕食をすませましたが、このままお酒を飲まずに眠れるのか?1日目の夜はベッドに横になったものの、悶々としながらほとんど眠れませんでした。ただし、翌日もテレワークなので眠れなくても良いという開き直りで始めました。

 一般的にはアルコール依存症の場合、アルコールが抜けると、イライラや神経過敏・頭痛・吐き気・下痢・手の震え・発汗・動悸などの離脱症状が出てくるそうです。私の場合は、幸いそのような離脱症状はほとんど無いままに過ぎた最初の3日間でした。夕食時は自分を紛らわすため、炭酸水で一人乾杯。1日の終わりには、今日もお酒を飲まなかったことを手帳に記録して、満足感に浸りました。

 アルコールの無い生活は淡々と過ぎました。依然として離脱症状はありません。私の場合、アルコール依存症ではなかったのかも知れません。3日、1週間、1カ月、3カ月、半年、1年・・・新型コロナ感染症による自粛生活も断酒生活に味方しました。職場やスポーツ仲間との飲み会に誘われることもありません。朝は目覚めが良く、昼はより活動的になり、夜はアルコールが無くても眠りに入れます。

 コンビニやスーパーに行っても、お酒売り場には近寄らないように迂回しました。まずは自分の脳からアルコールをすべてシャットアウトするのです。この作戦は功を奏したようです。断酒1年までは断酒して何日?とカウントしていましたが、その内に断酒自体を意識しない生活に落ち着いていきました。

断酒後の生活は?

 新型コロナ感染症も落ち着いてから、グループで食事する機会は増えました。私の場合は家族・職場・友人・スポーツ仲間に断酒したことを宣言し、一緒に食事してもお酒は口にしないよう徹底しました。
基本的には飲み会には参加しない、どうしても参加する場合はノンアルコールを守っています。それは家族との間でも一緒です。

 去年の夏にはスポーツ大会で北海道へ遠征し、サッポロビール園でジンギスカン鍋を囲んで食事会がありました。仲間は断酒している私のことを気遣ってくれましたが、断酒1年半経過のそのころには、アルコールを欲しいという欲求自体がありませんでした。自分でも実に不思議です。脳からアルコールは完全に抜けたのでしょう。

 現在は単身赴任を終え関西に戻り、妻と二人で暮らしています。妻はお酒をたまに飲みますが、妻が隣でアルコール類を飲んでいても、私は全く平気です。勝間さんが言っていた「一生お酒と縁を切る」と決めれば、やめられるというのは当たっていると思います。

 ただし、もう大丈夫、飲酒をコントロールできると思うのは大間違い。再飲酒のことをスリップと呼びます。少しでもアルコールを飲めば、スリップすることは自分でも自覚しています。

 妻は、「私はお酒をいつも飲みたいとは思わない。飲みたい時だけ、飲むのだったら問題ないよ」と言います。

私が考えるに、世の中には2種類の人がいるのでしょう。
「飲みたい時だけ、飲酒をコントロールできる人」と「アルコール依存になるか、一生飲まないかのゼロヒャクの人」

前者の人は妻だけではなくて、私の周辺に何人もいます。
前者の人の存在を否定するつもりはありませんが、私はどうも後者の人間のようです。私は自分の特性を理解して、キッパリこの先も「一生お酒と縁を切る」を守っていこうと思います。

瀬田川に架かる唐橋、先日も元気で川沿いのランニングを楽しみました


まとめ

 最後に断酒のメリットとデメリットを整理してみます。人によって意見がさまざまだとは思います。あくまでも私の考えです。

断酒のメリット

・健康に良い
・体重の適正コントロールがしやすい
・夜の時間を学習・読書・趣味などで有効活用できる
・達成感、自己肯定感が持て、メンタルが強くなる
・お酒で自分をごまかさないようになる
・経済的負担を軽減できる

断酒のデメリット

・飲み会から足が遠のき、リアルのコミュニケーションが減少する
・旅行や食事の楽しみが減少する

 デメリットに記載したことも、考え方によってはプラスに転じるでしょう。飲み会がすべて意味が無いとまでは言いませんが、単に発散して騒ぐだけ・愚痴を言い合うだけであれば生産的ではありません。また飲み会ではない場所でも、コミュニケーションをとることも可能でしょう。
 
 旅行や食事も、お酒だけが楽しみではありません。旅行なら写真をとったりスケッチをしたり、食事なら様々な食材を味わったり、食後の紅茶を頂いたり、別の楽しみ方もあるでしょう。

終わりに

 お酒に対する考え方は人によりさまざまです。他人に強制するようなものではありませんが、私は「一生お酒と縁を切る」という決意をしたことを今も後悔していません。もしこの記事を読んでくださったあなたに、私のこの文章が少しでもお役に立つなら、これほど嬉しいことはありません。



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