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2022年下半期:美味しかったクラフトビール 10 パイント

2022 年上半期の 10 パイントに続き、2022 年の下半期で個人的に印象に残っている 10 パイントについて書いてみた。順不同、味やその時の場所の雰囲気等も含めた総合的な個人的感想ということで。

Unannounced Future / Cellarmaker Brewing Co.

Howard Stのタップルームにて

今やサンフランシスコを代表するブリュワリーとなった Cellarmaker だが、今年も美味しいビールを多くリリースし、特にCellarmakerが自信を持っている Pale Ale はどれも美味しかったが、その中でもやはり印象に残っているのはこのバーレーワイン
Weller、Rip Van Winkle 、Thomas Handy Rye といった3 種類のバーボン/ウィスキーの樽で合計 30 か月エイジされ、やや甘めで樽からくるオーキーさが良い意味で強く、最高に濃厚な一杯だった。
大手のブリュワリーでも、かかる時間や歩留りを考えるとこのようなトリプルバレル(3 種類の樽でエイジ)のビールが出るのは稀なので、見かけたら是非飲むのが良いと思う。特にバレルエイジが上手いブリュワリーは最高に美味しいビールを完成させることが出来るので。
こちらのビールは量がすくないこともあり、8.4oz (250ml) での販売だった。
この時に飲みに行った Howard St. のタップルームは 2022 年の年末をもって営業は終了し、今後はミッション地区にある Cellarmaker House of Pizza とオークランドに来春頃にオープン予定のタップルームとなる。

Ephemeral Embrace / Sante Adairius Rustic Ales

SARA's Cellarのボトルは毎年決まったテーマのラベルになっている

Sante Adairius Rustic Ales も2022年に何度も訪れたブリュワリーの一つ。オークランドにタップルームが出来たからというのも理由の一つだけど、それでもサンタクルズ/キャピトラのタップルームにもかなりの頻度で行った気がする。ここはファームハウス/セゾンが有名だけれど、ピルスナーやIPAもすごく美味しく、Humble Sea の Drew 氏が Sante のヘッドブリュワーになってからはバレルエイジされたスタウトもリリースされるようになってきた。
このビールは SARA's Cellar 会員向けのボトルで、バレルエイジされた Bright Sea Blond と Saison Bernice という二種類のセゾンのブレンド。軽めのファンクと華やかな柑橘で美味しく印象に残った一本。Sante 定番のバランスの良いセゾンの味で今後通常リリースもして欲しいと感じた。

Yojo IPA / Moonraker Brewing Co.

定番 IPA: Yojo

カリフォルニア州の州都サクラメントから更に北に車で45分程行った町Auburn (オーバーン)にあるブリュワリー Moonraker。ここはIPAの種類が多く、どれも美味しい。有名なところでは Electric Lettuce DIPA や Thunder Cabbage TIPA 等もあるが、2022年で印象に残ったのはこちらの定番 Hazy IPA Yojo。Galaxy、Mosaic、Simcoe、Citra、CTZを使用しており、ジューシーでいくらでも飲めてしまう味。これをブリュワリーで飲んだ時に「そうそう、Hazy ってこういうやつだよ!」と思わず口にでてしまうぐらい、本当に飲みやすく苦みも少ない。 フレッシュなのをタップで飲むとまた格別。

Three Fog Night TIPA/ Slice x Humble Sea

ユニークなラベルの Three Fog Night

Slice Beer も 前述の Moonraker と同じくサクラメントの北へ車で 40 分程運転した Lincoln (リンカーン)という町にあるブリュワリー。アクセスがあまり良くない場所にありながらも凄まじく人気があるので如何に素晴らしいブリュワリーかなんとなく想像ができると思う。
暑い 8 月の上旬にサクラメント方面へ旅行をし、その時に立ち寄った Slice にて偶然に見つけた Humble Sea とのコラボのトリプル IPA。40℃越えの気温の中で飲む TIPA がこんなに美味しいと思ったのはこれが初めて。Humble Sea 特有のクリーミーさと Slice が得意とするトロピカルな感じが合い、マンゴーやベリー系を存分に味わえるビールに仕上がっている。Mosaic Cryo、Nectaron、Citra、HBC 586 のホップを使用。あまりにも美味しかったので缶も購入して帰った一杯。

Wonderous Original Oktoberfest / Wondrous

ジョッキがOktoberfest

2022年は Wondrous に本当に良く行った年だった。ここは2021 年のコロナの中で開店したブリュワリーで、特にラガーの種類が多くまたたく間にベイエリアのビアギークの間での話題をさらった。個人的にラガーが再び好きになったというのもあるが、ここの作るビールはどれも丁寧で美味しく、何度飲んでも飽きが来ないというのもある。タップルームもモダンで贅沢に空間を使っていて、訪れる価値あり。
When the Poet Dies というダブルバレル(2度異なるバレルでエイジ)されたバーレーワイン、定番ダークラガー Eternal Echo、West Coast IPAのCreek Park、缶を売っていたら必ず買ってしまうポーター Drab など美味しいビールを挙げればきりがないのだけど、2022 年で印象に残っているのはこちらのオクトーバーフェストのビール。缶は売り切れてしまい買えなかったのでジョッキ生で飲んだのだけど、モルトさといいすっきりした後味といい最高に美味しかった。イーストベイの暑い気候もひっくるめた体験の全てでの総合評価と言ったところか。来年もこれは飲みに行かないと。今度は一リットルのジョッキで。

Irvine Orchard Dry/ Lassen Traditional Cidery

Flora & Fermentのグラスと共に

2022 年の個人的な発見の一つはサイダー(シードル)だった。サイダー専門店やサイダリーもいくつか訪問したが、その中で特に気に入ったのは Lassen Traditional Cidery という伝統的な手法でサイダーを作っているカリフォルニア州チコにあるサイダリー。そして、その Lassen を知るきっかけとなったのが Albany にあるサイダー専門のボトルショップ兼タップルーム Flora & Ferment にて飲んだこの一杯。
Irvine Orchard という農園の在来の林檎種とデザート向けの甘味の強い林檎を使ってつくられ、濃厚で複雑味のあるサイダーに驚いた。これ以外にも林檎のテロワールという概念を味わうことができた Wombat Flats Cider、シングルモルト的に同じ農園の単一種の林檎を使ってつくった Newtown Pippin、高い糖度と適度な酸味のWicksonを使いフレンチオークの赤ワイン樽で発酵させたサイダー Filigree Farm など、Lassen の拘りのサイダーは多数に渡る。そのサイダー沼への一歩を踏み出す勇気をくれたのがこの一杯。

The Ringdove and the Hunter /Mad Fritz

The Ringdove and the Hunter

ワインで有名なナパバレーにあるブリュワリー Mad Fritz。ブリュワー(兼ワインメーカー)のナイル氏の拘りによりピルスナーを含む全てのビールが一度は樽で熟成されるという過程を経る為、どれもが独特のここでしか飲めない味わいになっている。ほとんどのビールに使用されるモルトも彼自身がフロアモルティングしていて、水もナパやソノマの自然の湧き水を汲んできて使用している。個人的にはここがつくる昔のビールを再現した Kyut Ale や Grisette、Biere de Garde などが好き。2022 年には Mad Fritz としては珍しく The Brewer's Apocalypse Ale という Ale Apothecary とのコラボ ファームハウスもつくっている。
その中でも2022年に特に感動したのはこちら。非常に滑らかなポーターで、Saaz ホップを使用し中を焦がした新しいフレンチオークの樽で二か月エイジ。カラメルっぽさと樽由来の木の感じがバランスが良くすごく美味しかった。多くのビールは樽一個分しか作られないので、特別なものはメンバーのみにしか提供されず、このポーターもそんな一本。また飲めるのはいつになることやら。

木樽熟成 山伏 Cedar Kogen / 玉村本店 x Jester King x Oxbow

存在感のあるボトル

元 Jester King の Averie Swanson さんが玉村本店とコラボしている写真を見て以来一度は飲んでみたいと思っていたビールで、今年日本に行ったときについに購入できた一本。
日本酒の杉樽でエイジされた後にワイン樽で更に 19 か月エイジし、仕上げに 9 か月瓶内での三次発酵をさせリリースされたファームハウス エール。ボトリングされたのが 2019 年と書いてあったので、この瓶はその後3年間寝かされていたことになる。そのためかかなりスムーズ。しかし一番驚いたのが、まず開けた瞬間に感じられた Jester King 特有のあのアロマ、そしてその後感じられる杉樽の風味。この相性が凄まじく良くとにかく美味しく、飲んだ瞬間に今年のベスト 10 入りが決まった感じだった。もう一本買っておかなかったのが後悔される。
Averie さんには Almanac のイベントで会って少し話をする機会もあり、彼女の作ったビールをもう一度飲んでみたいと思っていてそれも実現でき良かった。

Hay Day / Roses' Taproom

Rose's Taproomの店内にて

Rose's Taproom は Oakland にある非常にお洒落なブリュワリーで、マグクラブもあるぐらい常連さんが沢山いて、Hazy IPA や軽めの Pilsner などが繋がっていることが多い。食事も美味しく、チーズやハム、レバームースなどを頼むとパンと一緒に出てくる。
そこで飲んだこちらのアメリカン クリーム エールがイーストベイの暑い夏の日差しと最高に相性が良く、また飲みたいと思ってしまう一杯だった。クリームエールとはアメリカ発祥でラガーに対抗するために発明された多くの場合トウモロコシを主体とするエール。これはトウモロコシの他に焼いた米を使用し、軽めでありながらもちゃんとしたキレ(クリスピーさ)があり、おこげの様な風味も最高だった。

Wild Friendship Blend 2019 / Cantillon x Allagash x Russian River

最初で最後の Cellar Society イベントにて

Russian River Brewing Co. と言えば、有名なのは一年に一度つくられそれを求める長い列ができることでも有名な Pliny the Younger TIPA と 米国西側を代表するウェストコースト IPA と言われる Pliny the Elder DIPA だけれども、ここのサワーにかける情熱も有名だ。ワインカントリーの中に位置することもあり、ブラウン サワー エールをピノノワールのワイン樽でエイジしたSupplication や  ピルスナーをソーヴィニヨンブランのワイン樽でエイジした Intinction – Sauvignon Blanc 等美味しいものを挙げればきりがない。またその様なサワーの元祖ともいわれるランビックを作っているベルギーの Cantillon との親交も深い。
その中から生まれたのがこの奇跡的な一杯。Russian River Brewing、Cantillon、Allagashそれぞれ各ブリュワリーの空気中の酵母を利用して自然発酵させ樽でエイジさせたビールをブレンドしたワイルド(自然発酵)サワー。最終的には程よいタートさと他では味わえない複雑さで驚いた。RRBCの自然発酵槽(クールシップ)を見ながら飲むという体験も他では無い経験だった。
このビールはRRBCのサワービール専用のボトルクラブ Cellar Society (2022年の終了) の初のイベントで飲むことができた一杯で、他ではCantillionのイベントで僅かながら注がれたことしか無いらしい。

その他美味しかったビール

当初は30パイント程候補があり、その中から10個に絞る過程で落ちてしまったけれども、どれも美味しかった一杯。これはまた見かけたら確実に買うと思う。
また、Pliny the Elder は間違いなく2022年に一番多く飲んだビールだけど、殿堂入りをしているので含まない。

番外編

ビールそのものでは無いが、ビールを飲む上でブリュワリーやビアバーなど飲む場所や環境も重要だ。以下は今年発見した良かった”場所”。

 Woods Outbound

暑い季節限定かもしれないが、Woods のこの Ocean Beach 近くのタップルームはビーチ帰りに寄るのに最高で、Woodsが提供する軽めのビールと素晴らしい相性。明るいこじんまりとした店内、(良い意味で)さびれたリゾート風の町の雰囲気、美味しいビールとエンパナダス。これを超えるのは難しい!

Redfield Cider Bar & Bottleshop

サイダー沼にはまり、色々なサイダーを試す為に何度か通ったサイダー専門店がこちら、お洒落な町 Rockridge にある Redfield。Tilted Shed の 人もオーナーと仲が良くサイダー業界では有名店らしい。タップで繋がっているサイダーの品揃えが素晴らしいのはもちろん、置いてあるボトルの数も凄く、スタッフの知識も素晴らしい

まとめ

サイダーに目覚めた2022年後半、ピルスナーやクリームエールと言った軽めのビールやインペリアルスタウトなど濃いバレルエイジを多く飲んだ半年だった気がする。逆にIPAはいつもよりも少なめ。Hazy IPA が2つ上記の10パイントに入っているが、どちらかと言えば Hazy よりも West Coast IPA の方を多く飲んだと思う。

また、サンフランシスコのビアシーンにとっては多くの出来事があった期間だった。Mikkeller SF の閉店、Old Devil Moon の閉店、Cellarmaker によるThe Rare Barrel の買収、CellarmakerのHoward St. タップルームの閉店とブリュワリー施設のOaklandへの移転、Local Brewing の火災。ベイエリアという観点では Humble Sea Kooks Club の終了、Russian River Cellar Society の終了、など。一方で、Olfactoryという新しいブリュワリーの開店は非常に喜ばしいニュースだった。
こんな状況の中、2023年のサンフランシスコ、そしてベイエリアのビアシーンはどの様になっていくのか、不安と期待が入り混じりながらも2023年へ。

2023 年も美味しい一杯に出会えることを祈って、Cheers!

2022年上半期の10パイントはこちら。

過去の10パイントまとめ記事はこちら。


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