ニキビなんて潰しちゃうに決まってんじゃん

プチっという感触と共に少しの痛み、ブシュッと膿が出たりニュルっと芯が出てきたりする。でっかい鼻くそが出てきたかのような、大量のうんこが出たときのような、夏場ドロドロのベタベタの状態からシャワーを浴びたときのようななんとも言えない、どことなくスカッとした気分になるあの感じ、僕にとってニキビを潰す快楽はあの感じに近い。

わかっている、わかっている。ニキビを潰すことで痕になりやすくなるのはわかっている。まず医療機器を使っているわけではないので傷口の状態が悪い、さらに手も綺麗な状態ではなく不潔だ。そりゃあ治りは遅くなるし、綺麗に治らないよ、知ってる。

でも、潰してしまうんだ。顔を見たとき『あぁ、なんか大きい芯が取れそうだな~』と思うと潰してしまう、我慢が出来ない。だいたい”ニキビを潰してはいけない”という暗黙の了解が良くない、背徳感が潰したい欲求を加速させる。

そもそも、「ニキビは潰しちゃダメよ、これ塗っておきなさい」と言う教えに対し、触らずに軟膏を塗り、待つことが出来る人はコツコツした人だ。夏休みの宿題は計画立ててお盆前には終わらせ、浪人なぞせず、ストレートに大学を出て勤める。たばこは吸わず、酒はたしなむ程度、朝はラジオを聞いて過ごし、夜はお気に入りの女性と共に食事をし、寝る前にホットミルクを飲み軽いストレッチをし、赤ん坊のように熟睡する。そんなコツコツした人だ、吉良吉影みたいな人だ。

たばここそ吸わないが、酒を飲み、食事時間、睡眠時間はぐちゃぐちゃで、浪人も留年もし、働いていない期間もあった、もちろん夏休みの宿題は最終日まで溜め、終わらないとなると「やったんですけど家に忘れました~」とその場しのぎの言い訳をしていた。
コツコツした人とは程遠い僕はニキビなんて潰して当たり前じゃないか、そうだ、これだけの僕が毎夜ニキビにオロナインを付けてみろ、そんな姿不気味だ、逆に不気味だ。
吉良吉影は普段いたって真面目な会社員だったが、その実連続殺人犯で女性の手を持ち歩いていた。なんとも不気味だったろう、その人っぽくない言動は不気味さを出すんだ、呪怨だってそうだ、本来活発で生気あふれる子供が真っ青な顔で立っている、だから不気味なんだ。不気味さが自分から出るなんてまっぴらごめんだ。

だから”ニキビを潰してしまう”ということはある種の運命であり、宿命で使命だ、僕はニキビを潰してしまう星に生まれてきたんだ、受け入れよう。

はい、受け入れた、受け入れました。


とまぁ、ニキビを潰してしまう自分を何とか正当化したく書いたのだが、なんだか自分が情けなくなってきたぞ、あぁ…。
僕はダメ人間なのか?いやいやそういう訳じゃないでしょ、ね?ね?

カラスの鳴き声が聞こえた、よし、カラスは僕はダメ人間じゃないと言ってくれている。

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