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HR豆知識⑥それってDiversity(ダイバーシティ)?

5/12に様々な領域で尊敬している人たちが「組織変革のためのダイバーシティ(OTD)普及協会 アニュアル・カンファレンス」に登壇されるという事でワクワクしながら参加。

東京大学飯野先生がモデレーターとなり、様々な領域のパイオニアの方々が日本のダイバーシティについてその問題意識や必要性についてお話してくれました。とってもリアルでとっても勉強になる気づきがありました。

例えば、

・LGBTカップルはカミングアウトしていないこともあり、Stay at homeがSafeではなく逆にプレッシャーやストレスを与えるきっかけになっている

・僕らはもっと脳内を多様にする必要がある(Unconcious Biasに気づく)

などなど。そしてこのような場に興味を持っていらっしゃる方が多いという事も一参加者として嬉しかった。


ただただ、、、、


終始モヤモヤ(え?そうなの?なんで?うーん。。)した。


ので、モヤモヤの掃き出しと学んだことのシェア。


なぜモヤモヤしたのか?

大きくは3つだ。

理由① 参加者の「ダイバーシティ」の定義にズレがある
理由② ダイバーシティが”負い目の解消”になっている

理由③ クリエイティビティが大事だから、生産性が大事だから

理由① ダイバーシティの定義にズレがある

ダイバーシティという単語の意味は「多様性」で知られているのは皆さんもご存じだと思う。

でもダイバーシティという言葉に、「働き方を多様化させる意味はない」と思う。(おい、小さい頭使ってんなと言われそうを承知の上で)

リモートワークを推進していく事、育児休暇を取りやすくする事、生理休暇を取りやすくする事、それがダイバーシティ推進、、。多くの参加者のコメントに「あれ?そうなんだっけ?」という感覚を持っていた。

アメリカでDiverisityの定義は「Race(人種)、Color(肌の色)、Sex(性別)、Religion(宗教)、National Origin(国籍)の多様性」、また更にAge(年齢)、Disability(障がい)、Sex orientation(性的志向)、Veterans(軍役経験)が加わってくる。すなわち、属性の違いや多様性を示しているのだ。

そして、その多様性というものはマイノリティに着目し、マイノリティに対する差別(Discrimination)が言葉の裏側に紐づいている。

従って、アメリカでのダイバーシティの推進とは、この属性に客観的なデータと比較をした上で差別とみなせる偏りを持たせないこと、または差別的な判断をなくすこと(※)を指している。

※ちなみに、この細かいところはこちらで書いている。

だからこそ、働き方を多様化させることが、ダイバーシティの推進じゃないよな~と思う気持ちと頑固な頭を抑えられなかった。純粋に、働き方を多様化させよう、ってことでいいじゃないかと。この動きはWAAがすごい。

様々な理解のもとで「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉を日本の人たちが平気で使うことに、個人的にはうーん..........と思ってしまったのだ。

理由② ダイバーシティが”負い目の解消”になっている

島田さんの「脳内のダイバーシティが必要だ」という言葉はとても勉強になった。マイノリティであることを「かわいそう」と思ってしまう事がある。それは反射的な解釈であり、私もそうだ。

でも、すべてがそうじゃない。マイノリティになった人にしか、「自分がかわいそうなのかどうかは判断できない

日本人が自分しかいない環境で、そして英語も全然ダメで、超優秀な学生達に囲まれた時に、自分は初めてマイノリティだと思った経験がある。そしてこう思うようになった。


マイノリティというのは、「個性」だ。「強み」だ。「らしさ」だ。


なので、自分がマイノリティかも?と思える環境は自分にとっては大きな体験だった。


これを見てほしい(残念ながら英語版が有料)。

アジア系の少年は、周囲からの偏見やいじめを受けながら、周囲に合わせながらなじんでいく。但し、そのプロセスの中で、本当の自分を見失ってしまった。そんな物語だ。「Stand out, fit in」の本質的な意味は、「本当の自分を押し殺して環境に馴染むのではなく、本当の自分が解放される場所に出会うことを大事にしよう」という事である。

多くのお偉いさんは自らがマイノリティになる経験を積みにいかない。そしてダイバーシティ&インクルージョン推進担当の人たちも実はそんな体験を積んでないんじゃないか、と思う。

ダイバーシティという言葉を深く理解するためには、自らがマイノリティになってみる事が一番大事であり、自分が自分の考えや解釈をリフレーミングするプロセスが大事なんではないか、と強く思う(島田さんの言葉を拝借)。

なので、もし属性の違いによって何かの権利が”奪われている”、”禁止されている”のであれば、それはその場所を見つけるか、仲間と戦うしかないんだと思う。そして、少しでも自分が手伝えるのであれば、協力すればいい。例えば、2019年(平成31年/令和元年)現在、日本国内において同性結婚は法的に認められていない。G7のうち、同性結婚もシビル・ユニオンも法制化されていない国は日本のみである。

ちなみに、アメリカは差別の国と言われるように、マイノリティであることをパワーにして社会に挑んでいく人たちが多い。ミシェル・オバマもその一例だ。日本のダイバーシティ推進担当者はこれも絶対的に読んでおくものだと思う。

そしてDavid Lettermanのこれもとても勉強になる。多様性や差別というものにどのようにリフレイムしていくか、多くのセレブリティが社会一般的な生活を送っているわけではないという事が理解できる。

理由③ クリエイティビティがあがる、生産性があがる

正直、みんながみんな気づいている。のに言わない。


・ダイバーシティの推進でクリエイティビティが上がると思う

・ダイバーシティの推進で生産性があがるとおもう


間違ってはいないんだと思う。


ダイバーシティの定義が広すぎて、無理だ。理解不能だ。


例えば、アメリカの社会心理学者、Irving Janisが提唱したグループシンク(groupthink)と呼ばれる理論がある。これは同じ価値観や考え方の人間が集団で意思決定をしたときに、明らかにリスクが高いものであるに拘わらず、集団に流され大きなミスジャッジをしてしまうという現象だ。


そういった意味で、異なる考え方・バックグラウンドの人員で組織を構成する事はリスクヘッジにつながる。しかし、このGroupthinkはダイバーシティの推進の問題ではなく、本質的にはチームビルディング(心理的安全性)の問題だ。


働き方の多様化でクリエイティビティや生産性があがるか?仮に2つや3つの仕事を持てるようになったとしたら、それは包括的な意味でそうかもしれない。育児の取りやすさや休暇の取りやすさでクリエイティビティや生産性があがるとは思えない。勿論、全てのケースではないと思うが、そんなに長期的な視点で企業はパフォーマンスを管理しない。


そうではなく、例えば多様性を受け入れる就業規則を作るときに多様な宗教で構成されたチームの方がより良いものがつくれるとか、グローバル展開をするアプリケーションをグローバルなスタッフでつくれるとか。


それなら理解できる。プレイステーションがユーザーが北米エリアに多いことからベイエリアに本社を移転させたように(日本にもエンジニアはもちろんいる)※ほぼローカライズに近いけれども


自分の個性を見つめる機会を作り、最大限それを活かす事が最も大事だ。


ダイバーシティは、属性の多様性を指している。インクルージョンは、多様性を包摂する、または融合させる意味を持っている。


ダイバーシティの推進は、属性の多様性を認識する事(または数値化する事)、広げていく事だ。これは、ラベルを付ける事が目的ではなく無意識バイアスに気づくことだ。例えば、世界は右利きを中心とした世界になっているようなこと。育児休暇取得率を追いかける事じゃない(100%の取得が素晴らしいことではない)。

ちなみにアメリカでは、何が差別か?という問いに明確な判断基準を持っている。この判断基準を以下のように呼んでいる。

• Adverse (Disparate) Impact =「集団」に対して差別的な影響があった
• Disparate Treatment =「個人」に対して差別的な扱いをした

それを防ぐためにAffirmative Action(アファーマティブ・アクション)と呼ばれるマイノリティの差別的意思決定を防ぐ仕組みがある。


そして、インクルージョンとは、その違いを融合させ、パフォーマンス向上につなげることに変わりはない。しかし、ビジネスパフォーマンスの効率性を追求すると自分と似た価値観や仕事の仕方を持つ仲間の方が早いだろう

だからこそ、必要なのは、能力だ。圧倒的な能力の違いは、パフォーマンスにイノベーションをもたらさす可能性がある。

従って、インクルージョンを推進するのであれば、社員が能力的な個性を見つめる機会を作り、最大限それを活かすためにどうしたらよいか?という発想が最も大事だと思う。従って、これは自分の強みを見つける事、創ることである。


みんなと同質であることが評価される社会や団体も当然ある。ただ異なることが素晴らしいわけじゃない。もっともっと自分の個性や強みを肯定的に捉えられる個人が多い社会になって欲しいと思う


どれだけ日本が他の国と異なるかは、是非このリンクを使って調べてみてほしい。





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