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カレー屋でインドは思い出さない

家の近くにあるインドカレー屋は、いつ行ってもSimon & Garfunkelが流れている。それもなぜか全てライブ音源で、時々カバーアーティストも入ってくるから、一体何を流しているのかわからない。言われてみると店員は、背丈がSimonと同じくらいで、顔はGarfunkelを少しアジア系にしたような感じだ。

僕の旅路が通常でなかっただけかもしれないが、インドを旅して回ったときは、いわゆる日本で食べるようなインドカレーを食べた記憶があまりない。ナンに関してはおそらく一回も食べていない。それよりもよっぽど思い出深いのはチャパティとサモサで、カレー屋に入ってサモサがあるとつい余計に頼みたくなってしまう。

インド料理とひとえに行っても、北と南では全然違うらしい。僕は北の方しか行ったことがないので、南方の本場インド料理を知らない。けどこの前、大森駅近くに南インド料理屋さんを見つけたので行ってみた。お店の名前は「ケララの風」だったと思う。僕はどっちかというと、南方系のほうが好きだなと思ってしまったので、またインドへいく用事ができてしまった。

南と北の料理の違いは、気候などで差異が生まれたらしい。水が豊富で暑い南は水分がおおくカレーもシャバシャバしている。逆に北は水が少なく寒い地方のため、僕らがイメージするようなどろっとした濃い味のカレーを食べるらしい。確かに、インドほどの国土があれば北と南では生活環境も食事嗜好も変わるだろう。日本のような小さい国で生活していると、20時間も電車で揺られた先が同じ国だという発想自体、すごく新鮮だ。

食文化ということで言えば、日本は他国に負けず非常に多様な文化を持っている。うどんやそば一つとっても関東関西で論争がおこり、お好み焼きでは関西広島論争がおこる。これだけ小さい国土ながら、他県にゆけば大抵その土地のローカル飯文化を目の当たりにするのが不思議で仕方ないが、それが日本の面白いところであるなと思う。軒を連ねる外国料理屋に日本の食文化が埋もれつつあるのが少し残念だ。

これだけ異国の文化を多様に取り入れようとする日本であるのに、外国人に対しては拒絶的な反応をとる人が多いように感じる。結局、インド料理とかスペイン料理と謳っているけれども、日本用に脚色された文化輸入なんだろう。あくまで「その気」になりたいだけであって、「本物」を期待している人が少ないというのが、拒絶の根本にあるように思う。

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