見出し画像

わたしの世界

小説の好きなところは、そこに自分だけの世界があるところだ。

知らない人でも、知っている人でも、家族でも友達でも恋人でも、どんな人だって立ち入ることができない世界。

とても孤独な世界だと思う。
だけど、わたしにはその孤独が必要なのだ。

仕事終わり。
くたくたになって乗る電車。
ああ一人になりたい、と思う。
誰もいないたった一人の空間で、思い切り息を吸って吐きたいと思う。

そんなとき、カバンの中に一冊小説を忍ばせていたら。そこには誰もいないたった一人の世界がある。

わたししか知らない顔、景色、思い、感動、喜び、悲しみ、苦しみ。
頁を一枚めくるたび、現実の世界から、人も、物も、景色も、時間も消えていく。残るのは、わたしだけ。

手っ取り早く一人になりたいとき
孤独を欲しているとき
わたしはいつも本を開く。

孤独を紛らわすためではなく、孤独になるために。
暇つぶしではなく、わたしの世界の時を進めるために。

わたしが頁を開くまで、わたしの世界は待っていてくれる。だから安心して、わたしはわたしのタイミングでそちら側にいける。

いま、カバンの中にあるわたしの世界。
もう少ししたら行くから、待っててね。

この記事が参加している募集

新生活をたのしく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?