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誠意しか勝たん ~暗闇のおかげで見える光~

 前回は計画には短いものと長いもの両方必要というお話をしました。そして遠慮や忖度は問題を解決するのには余計なものであり、上手くかわしながら結果を出せるようになりましょうというお話をしました。

 今回はビジネスにおける「誠意」と「光」についてです。

雇用は契約である

 「雇用」とは「会社と個人の契約」です。契約ですからそこに書かれていないことをすると契約違反です。これは情に流されないための手段でもあり労使がお互いに線を引くために必要なものです。
 長く勤めているとどうしてもお互いに情がわきます。ですがすべての関係性が対等に扱われるために「契約の元において対等」という線引きが必要なのです。

 雇用は社会的な役目や仕組みとしても存在します。つまり入社するということは先達が作った利益を生む仕組みへ参画するという意味があります。だからと言って遠慮することはありません。会社側も選考を重ねてあなたを採用する判断をしたわけですから「私はこの会社に必要とされたから採用された」と思って入社し、そこで全て出し切るという覚悟を持って臨んでください。

 給料もらえたらいいやと思って仕事をしていると行動や発言にあらわれます。経営者や上司はそれを見抜きます。なぜならそのような人をたくさん見てきているからです。一見嫌なように思えますが、それが見抜けない経営者や上司がいる会社って先が思いやられませんか?

雇用は縦の関係ではない

 「従業員」という言葉には「従」という漢字が入っています。そのためどうしても主従関係を思い浮かべてしまいます。もちろんこの漢字には「縦」という意味があります。それ以外にも「後からついていく」「したがえる」という意味もあります。

 私はこの解釈に違和感があります。そこで「従業員」の場合の「従」は「従事する」つまり「ことにあたる」と解釈する方が良いのではないかと思います。よく見れば「従業」なので「業務にあたる人」という方があっていますね。

 勘違いしないで頂きたいのは「そんなキレイゴト言って懐の広さをアピールしたい」わけではないということ。
 むしろ逆で「従」に甘んじて自分の責任を軽くしようなんて甘えた考えは捨てなさいという気持ちで言っています。
 つまり「本気で何かを守りたいのであれば思考停止になってはいけない」ということです。守りたいものなんてない?今まで守られてきたのに何を言っているんですか。次はあなたが守る番です。明らめて頑張りましょう。

正直でいい。でも情は排除せよ

 仕事において大事なことは「自分の感性に正直になること」です。ですがその感性が未熟なままでは単なるわがままになってしまいます。論語に出てくる「心の欲するところに従えど矩を越えず」が体現できる必要があるということです。
 相手の立場や状況を慮り、その取り組みにおける最大公約数を見つける。そこに「自我」「感情」「承認」は不要です。その最大公約数中に現れる自分に課せられた役割とそれに見合う対価が自分なのです。

スキルアップが重要な理由

 敢えて対価といったのは自分が所属している会社に対しても貢献が必要だからです。自分はいい、相手もいい、でも所属している組織に迷惑をかける(有体に言うと利益が出ない)これではだめだからです。

 自分を安売りしないために、相手から自分を安く見られないために、高いお金を払ってでも対応してほしいと思ってもらえるために、そしてそれだけの対価を払った甲斐があったと思ってもらうために、自身のスキルアップが重要なのです。
 スキルアップしたから自分の価値が上がるのではないということを認識してください。これ勘違いしている人が多い。残念な努力は存在します。

コミュニケーション能力が重要な理由

 妥当な対価があり、その対価に見合う責任を果たせる、果たす決意ができるということが大切であり、そのために自分の感性に正直になることはとても重要です。
 お互いに状況を伝えあい折り合いをつけ、案件に取り組む。この姿勢が良い仕事へと繋がります。
 ここでのわがままは見透かされると思ってください。逆に誠心誠意向き合う態度は、誰から見ても美しく受け止められるべきであり、翻ってそれに気が付ける人でないといけません。これらを伝えるため、相手の言いたいことを理解するためにコミュニケーション能力が重要なのです。

良好な人間関係が重要な理由

 これらの行為において感情は余計なものです。そのために良好な人間関係が重要なのです。良好な人間関係が良い仕事につながるのは間違いありません。ですから良い仕事をするために良い人間関係を築いているという前提を忘れてはいけません。決してあなたを認めるための関係構築ではないのです。
 だから我慢して理不尽な契約をするということではありません。相手の状況を理解しこちらの事情も理解して頂いた上で契約を行うことに全力を注ぐ気持ちが大切だということです。

契約とは?

 ところで契約とは何でしょうか?調べてみると、

「当事者の合意に基づく債権の発生原因」

 とあります。つまり、一方的な意思で成立するものではないということ、両者合意のもとで発生する責任と権利だということが言えます。このことから、

契約=誠意

 ということが分かると思います。相手に迷惑をかけないよう期限に間に合うように契約を結ぶこと。その内容に嘘や偽りがないこと。
 契約期間が過ぎてから契約したり、曖昧な部分が多く、見方によって解釈が変わるようなものは誠意があるとは言えないのです。
 人間関係や契約(つまり会社との関係)においては「誠意」が第一であり「誠意しか勝たん」のです。

典型契約と非典型契約

 契約には大きく分けてこの二つに分かれます。

典型契約

 典型契約の種類は13種類

1.贈与 2.売買 3.交換 4.消費貸借 5.使用貸借
6.賃貸借 7.雇用 8.請負 9.委任 10.寄託
11.組合 12.終身定期金 13.和解

 馴染みがあるのは「売買契約」「賃貸借契約」「雇用契約」「請負契約」「委任契約」でしょうか。詳しく知りたい方は検索してみてくださいね。

非典型契約

 典型契約以外の契約は非典型契約と言います。典型ではないものが全てこちらに該当します。具体的なものだと「秘密保持契約」などがそれに該当します。

光と闇が魅せる世界

 契約に関してはビジネスをする上では欠かせない物であり、誠意を具体的に形にしたものというお話をしてきました。
 少し考えると面倒だし杓子定規にもなりがちな部分ですがここを外しての話はありえません。何はなくとも契約を結ぶようにしてください。

 特に経営者がそこをいい加減にすると会社全体にそういう風土が生まれてしまいます。普段から身に付けておいて損はないでしょう。

相反するものの同居

 これまでの起業塾でも「呉越同舟」「塞翁が馬」「禍福糾纆(かふくきゅうぼく)」など相反するものが同時に存在するという話をしてきました。
 光と影はまさにその典型であり、それぞれが様々なバランスで存在するからこの世界は美しく見えるのだと思います。

 これはビジネスや契約にも言えることで、責任をもって対応するということは責任を果たせなかった際のペナルティ(補償)もあるということです。条件を満たせなければ対価を得ることができません。どちらかに有利な偏った契約が美しく思えないのはこういうことが原因なのかもしれませんね。

 そのため会社は様々な仕組みを構築してペナルティを発生させないようにしています。先達がそれを作り上げてきました。ですがそれらは時代とともに陳腐化します。仕組みは必ず陳腐化するということは覚えておいてください。そしてドラッカー氏が言うように陳腐化した仕組みは捨てなければいけません。

安売りの代償

 楽しいことだけしていたい。面倒なことは避けたい。そういう気持ちはだれにでもあります。できる限り面倒なことを楽にできないかというところがITの出番でもあります。

 時々ニュースになる品質の改ざん問題。
 良いものを作ろうと思った仕組みが陳腐化した結果だとも言えます。人間毎日同じことを続けていれば嫌になることは想像できますよね(ヒステリア・シベリアナ)
 ただ違う見方もしましょう。ベクトル反転。
 製品の価格を抑えるために削ったしわ寄せはどこに行くのか。製品原価を下げるためには仕入れを変えなければいけません。同品質のものをより安い価格で仕入れることができればよいですが、そこは日々精査しているはずです。
 となると次は工数削減です。無駄な作業を省いたり効率よくしたりします。それでもダメなときはテストや検査をいい加減にするしかないわけです。つまり品質改竄問題はある意味価格競争の限界が来ているサインという見方もできるわけです。

物価が高いは悪なのか?

 昨今の物価高は給料と同期することで景気の上昇へとつながるわけですが、給料の方が(まだ)追いついていません。これには少し時間がかかります。物価の上昇は受け入れがたい事象なのですが、品質を重視するのであれば、それ相応の対価が支払われなければいけません。安心安全にはお金がかかるわけです。今の物価上昇は「木」であり今後給料が上がって景気が上向く「森」へ向けて意識を向け、取り組むする必要があります。

 ただ「給料が上がる」というところに懐疑的な感覚はあると思います。それもそのはず。日本の平均給与は1990年頃から低迷&横這いです。つまりこの30年給料が上がる感覚を持った人たちが多くないわけです。そりゃそうなるよね。

経営者には不安しかない

 給料が上がらないのは企業側の不安要素がぬぐえないということも関係しているのではないかとも思います。
 バブルがはじけてからイケイケどんどんの雰囲気は鳴りを潜めてしまいました。決してそれが良かったとは思いませんが今となっては、着実に成長していける土台があるほうがありがたいと感じます。

 更に新型コロナの感染拡大による景気の低迷は企業にとっては腹をえぐられるような出来事だったと思うんです。続いてロシアとウクライナの戦争による原油の高騰と輸送費の高騰、そしていつ起きてもおかしくない南海トラフの巨大地震。
 これらを考えたときに、出た利益を社員へ還元するという判断はとても難しい。内部留保していざという時に備える。企業が生き残るにはそれも一つの選択肢である事は知っておいてください。
 ですが、景気を回すのは会社にいる一人ひとり。会社にそれを納得させ社員の給料をあげさせるためには、過去の実績だけで評価するのではなく、将来へ向けて会社が自分に投資をしたくなるような人材になってみるのはどうでしょうか。

 いつ来るかもわからない光と闇。これらを想像しながらどんなことが起きてもいい準備を毎日していくしかない。経営者は神様ではありません。先の事なんてみんなと同じで分からないのです。
 ですがそれを周囲に気取られてはいけません。明るい表情で真っ黒な不安を抱えている。経営者は常にこういう気持ちであること。そしてそれが当たり前であることを意識したいものです。

 この内容は2022年6月17日(金)11時からのインターネットラジオ「stand.fm」で生配信します。皆様からのコメントもお待ちしております。生配信を聞けないというかたは事前にレターも受け付けておりますので、どしどしご参加・ご応募ください。

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