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東洋経済「貧困強制社会」シリーズにおけるアンバランス

気になる記事を見た。

ある男性の貧困問題を扱っている。

そして彼の医療保護入院体験に関して、その強制的な入院の過程を記者は批判的に書いている。

しかし記事をよく読むと、そう簡単に批判することはできないと思われる。


彼は家庭内暴力の末、警察に呼び出され、そこで刑事から医療保護入院を迫られたという。

これを記者は、警察の「民事不介入の原則に照らせば完全な越権行為」としている。

だが、男性が自分の子どもに暴力を振るったのは事実のようだ。さらに、家族の前でわざと包丁を砥石で研いだり、「この家を事故物件にしてやる」と発言したのは脅迫行為に他ならない。いずれも民事に留まらず刑事事件だ。したがって警察の範疇である。

男性のこうした行動を精神症状が原因と警察が判断し医療保護入院を推し進めたのは、むしろ合理的で妥当な判断だったとすら言える。その結果、彼の病名が判明したのは「皮肉」でも何でもなく、医療のプロセスが順当に機能したと見るべきだろう。


もちろん、強制入院(医療保護入院と措置入院)が理想的な制度とは私も思わない。だが日本の現状からすると他に良い手段がないのだ。この点については以前、noteの記事に書いた。

また、警察が強制入院を迫る行為は、恣意的に運用されると危険である。警察と医療が連携を強化するなら、行きあたりばったりではなく、厳正なルール作りが必要だ。


前述の東洋経済の記事は貧困がテーマだが、精神科医療や強制入院といった大きな要素が絡んでいる。これらは、条件反射的な「体制批判」だけでは語り尽くせない事柄である。

貧困層を擁護する姿勢は立派だが、バランスを欠いた内容にしないでほしい。

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