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コンビニ帰りに美術館寄るタイプ『ミュージアムの女』

やあ、僕だよ。飽き性ちゃんだよ。
「美術館によく行く」と話すと七割くらいの人が「すごいね、美術分かるの格好いい」みたいなことを返してくるよね。
僕、美術は分かってないけれど、君たちが興味ない(あるいは何らかのマウントに備えている)のは分かってるよ。でもさ、美術って思うほど高尚な趣味とも言えないんだぜ?
そんな僕の気持ちを美術館で働いている人の視点から描いたのがこちらの一冊。
少しでも美術館に親しんでくれると嬉しいな。さあ、今日も始めようか。

漫画あらすじ感想

『ミュージアムの女』宇佐江みつこ
kindleunlimitedで読了

公式noteにて宇佐江みつこ氏の世界を垣間見ることが出来る。あらゆるおやつの「照り」が素晴らしい。
また、本作の合間にもおやつイラストが定期的に差し挟まれ、僕のお腹を刺激してくれた(事実、僕はミスタードーナツを買いに行った)。

本作は四コマ形式のお仕事漫画である。
美術館の監視員であるネコの「わたし」が共に働く人々、またお客様と美術館で過ごす日々をつづりつつ、「学芸員と監視員の違い」や「メモ用エンピツの貸し出し」など利用者が知らないことも拾い上げてくれる親切な内容だ。

最初はお仕事レポとして読み始めたが、絵を描く趣味がない僕にとって、息をするように絵を描く作者の日常も非常に興味深く、美術が分かる人たちの美術館の楽しみ方も新鮮に感じた。

美術館行ってみたいけど行ったことない人はもちろん、美術館たまに行くけどよく分からないまま終わってていいのかなと思っている人、美術館に着ていく服がない(と思い込んでいる)人に勧めたい一冊です。

営業先が目黒だったから東京都庭園美術館に行った

前後が一切思い出せないのだけれど、営業になりたての僕は気力だけ満ちていて、体力が常に底値だったように思う。
用意した資料を効果的に使うことが出来なくても丁寧に分析をし、決して腐らず、初めてなりに仕事と向き合っていた。

長い通勤時間とじわじわ増えていく残業を引き換えにして、数字が出る手ごたえを得た。
今なら上手く調整が出来るのだけれど、あの頃は気力と体力のバランスを取る考え方自体知らなかったのだ(当時の僕はブラック寄りの考え方で、成長し続けないと死ぬと思っていた)。

珍しく進んでいる案件だったので、僕はその日直帰の予定だったと思う。
せっかくだから美味しい酒でも飲んで帰りたかったが、あいにく周辺のいい店を僕は知らなかった。

そうして東京都庭園美術館前に辿り着いた。
最初は公園か何かだと思ったのだが、チケット売り場で有料の庭園であること、またどうやら美術館が併設されているらしいことが知れた。
美術館だとスーツ姿の僕は浮くのではという懸念があったが、二度と来ない場所だと思い直して、えいやとチケットを買った。

よく分からんけどすごい

玄関のガラス装飾から美しく、複雑で華やかな文様がふんだんに散りばめられた建物は展示が始まる前から美術館であった。

こちらの記事が詳しく、本館の雰囲気がよく伝わるレポである。

僕が行った時は特別展の中でも恒例のものだったし、しかも平日の夕方で人はまばらだった。展示室によっては一人きりであることもしばしばあった。
その静謐の中で初めて、僕はアールデコとルネ・ラリックを知った。

ルネ・ラリックのガラスは透明じゃないのがいい。
ぷっくりしていて、他の素材と混じり合っているとなお良い。
美しいけれど、実用的なものが好きで家具を作っていたところも好きだ。
僕はルネ・ラリックの作品の傾向や思想だったり、他の作家や時代の影響はほとんど分からないが、彼の作品はとても美しいと思う。
(しかも点数が多いので、買おうと思えば買えるのだ!)

契約は取れなかった

その後、目黒に行く度に庭園美術館に寄った。
ルネ・ラリック展はもう一度行くことが出来た。好きな特別展の会期が長いと得した気持ちになる。
ちなみに、美術素人の僕でも一度美術館に入ると早くて二時間、長いと四時間近く楽しめる。千~二千円で楽しめるアクティビティの中でかなり優秀だと思うのだ。

営業先はというと先方の社内調整がつかず、残念ながら流れた。
「タイミングを待つのでなく作るのが営業だ」という人もいるが、僕はお客様に選んでほしかったし、今回はそれでよかった。
僕にとっては美しいものに浸る気持ちよさを知れたこと、スーツでもまったく問題ないことが分かったのが何よりの収穫だった。

Tシャツ短パンで僕は美術館に行く

ルネ・ラリックのおかげで美術館が身近になった僕は、上野や渋谷に来る用事のついでにそれに寄りつくようになった。
特に上野は実家のアクセスもよく、動物園の年間パスも持っていたのでよく行った。
すでに上野公園にいて動物を見ている時やベンチで缶ビールを煽る時に、「あ、行こう」となるのであまり綺麗な恰好でなくても寄る。

特別展初日や最終日の美術館は、チケットを買うのにも並ぶので避ける。僕は印象派画家と海外の博物館特集が好きだから、公園内に飾られている各美術館のポスターを散歩しながら眺める(これだけで楽しい)。
モネの日の出を間近で見て以来、印象派がさして理由もなく好きだ。海外の博物館だって単に旅行気分を味わいたいだけである。

誰もが映画監督になりたくて映画を観るわけじゃないし、小説家を目指して勉強のために本を読むわけじゃない。
美術を見る理由もそうなのだ。綺麗だから、空調効いてるから、デートでネタがないから、よくわかんないけどこの画家の人生が気になるから。これでいい。
めいっぱいおしゃれして事前勉強し、鑑賞するのもまた美術の楽しみ方であるが、それだけではないと声を大にして言いたい。

一人ぼっち、Tシャツで美術館に行ったって全然浮かない。
「絵具重ねすぎウケる」
「このタイトルの隣にこのタイトル置くセンス草」
「名前読みづら!」
「額縁装飾やべえ」
などと心の中で楽しんでいればおのずと気にならない。他の人だって目の前の作品に夢中なのだから。

行く時は感染対策しっかりと!

自粛生活が長引きすぎて、対策するのが当たり前の生活であるので僕がリマインドするまでもないが美術館に行く際も気を付けたい。
また、チケットが事前購入制かつ入場時間が細かく分けられていることも多々あるので出発前に発券し、必ず確認をした方がよい(待機時間のロスがなくなる)。

ところで、この特別展がとても気になっている。
イスラエル博物館ってどこなんだろう。まあいずれにしても、死ぬまでに行くことのない博物館なんだろうな、と思う。

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