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読了!市川拓司「きみはぼくの」

《粗筋》
同級生だった妻との出会い、突然襲ったパニック障害、それでも側にいてくれた彼女との結婚、インターネットでの執筆活動、「いま、会いにゆきます」誕生秘話、会社員からプロ作家へ...。ベストセラー作家初エッセイ。

《感想》
「市川拓司」のエッセイ、初めて読んだ。
市川拓司作品が優しさで溢れている理由、ほぼ全ての作品に共通する雰囲気がある理由が分かった。


《引用》
ぼくらは相手を慈しみます。愛は、長く生きて欲しいという願いと同義になります。つねに身体を気遣い、心が曇らないように気を配ります。近くにいれば、いつも無意識のうちに、相手の身体をさすっています。幼い頃からぼくは母親にそうしてきたし、いまは、同じように奥さんの背中や足をさすります。こういった体験や思いが、そのままぼくの小説になっているわけです。(P6)

翻訳SFに夢中になって育ったからこそ、いまのような小説スタイルになったんだと感じています。(P30)

ぼくは創作する人間としては0から何かを創り出すのではなく、すでに自分の中にあるものの断片を吐き出しながら物語を紡いでいくってタイプなんでしょう。(P179)

ぼくの小説では、主人公が煙草を吸う場面は出てこないし、酒のうんちくも渋いバーテンも描かれることはありません。代わりに、ぼくの大好きな水辺や森や、あるいはアクアショップ、緑に囲まれた喫茶店、そしてどこよりも好きな、アパートの小さな部屋がたくさん描かれています。作家によって描き方はまちまちでしょうけど、ぼくはこのように、小説は自分の人格のようなものだって思っています。これが認められなければ、ほかに作家になる道はなかった。(P219)

ぼくは、「楽しませたがり」なんですね。だからエンターテイメント作家になった。彼女が喜ぶ顔が見たいから。すべてはそこから始まったのです。(P222)

(2021/8/1)

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