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読了!石田衣良「池袋ウエストゲートパークⅫ,西一番街ブラックバイト」


《粗筋》
池袋の雑居ビルで若者が飛びおり自殺を図る。彼は急成長したチェーン店の従業員だった。無能の烙印を押され、退職を強要された末にヤケになった若者。そして、次の犠牲者が——。耳触りのいい言葉で若者を洗脳し、つかい潰すブラック企業の闇に、マコトとタカシが斬りこむ! 表題作ほか3篇を収録のIWGPシリーズ第12作。


《感想》
ユーチューバー、整形、ブラック企業について。2015年に書かれた作品で、ユーチューバーを取り上げてるってことから分かるように石田衣良は最新の時事問題を扱う。その時事問題についての石田衣良の価値観に、物語を通して触れることで自分もそれについて考えることになる。「石田衣良」作品はとても大事なことをさせてくれる。
小説の最後にある解説みたいな文章になってしまった笑


《引用》
「マコト、おまえは若い。あまり特別なことをしようとするなよ。若いやつはすぐかんたんに世界がとれると思うもんだ。だいたいは錯覚だけどな。才能なんてないのがあたりまえ。普通でいるのも悪いもんじゃない」(P37)

リストラって、組織を弱体化させるよな。無駄を削るというが、体力まで削られ、社内の雰囲気も悪化する。(P124)

「池袋だよ。この街で起きることは最低のことから最高のことまで、なにひとつおれたちと無関係じゃないんだ。この街を傷つけるなら、おれは動く。Gボーイズもな。そいつはおまえだって同じだろ」
そうだ、単純なことを忘れていた。ここはおれが生まれ育ったホームタウンだった。あれこれとむずかしいことを考える必要などなかったのだ好きなら守ればいい。ただそれだけ。(P133)

ブラック企業にとって人など燃料科用の薪にすぎない。灰になろうが、二酸化炭素を大量に排出しようがかまわない。命の熱を金に換えることができるなら、それで十分。人を壊してつかい捨てる企業は、古の公害垂れ流し企業と変わらないんだが、もうあまりに数が多すぎて野放し状態だ。(P209)

タカシはダウンジャケットを脱いだ。
「マコトもっててくれ。今回こいつらはおふくろさんの店に手をだした。こいつらにはおれがペナルティをくれてやる」(P304)

「ブラック企業」で正社員になったとしても報われる日はこない。こうした閉塞状況は、正規雇用・非正規雇用を貫いている。ブラック企業、ブラックバイト問題は連続しているということも、本書から読み取ることができる重要な論点であろう。(P309 byNPO法人POSSE代表)
 
(2021/6/11)

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