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読了!上橋菜穂子「獣の奏者 外伝」


《粗筋》
王国の行く末を左右しかねぬ政治的運命を背負ったエリンは、女性として、母親として、いかに生きたのか。エリンの恩師エサルの、若き頃の「女」の顔。まだあどけないジェシの輝く一瞬。一日一日、その時を大切に生きる彼女らのいとおしい日々を描く物語集。エリンの母ソヨンの素顔を描いた単行本未収録短編「綿毛」収録。


《感想》
俺この外伝も大好きなんだよな〜。
恋愛を通して本編登場人物の人間らしさが見れるし、幸福で溢れてるから!


《引用》
エリンの口が乳房から離れた。そして、その小さな口をすこしすぼめてから、ふわあっと、あくびをした。思わずそのやわらかい頬に頬をすりつけると、エリンはくくっと喉を鳴らして笑った。とたんに、熱いお湯のような喜びが胸に広がった。(P24)

生き物は、誕生を選べないわ。どんな生き物も、生まれ落ちた場所で生きていくしかない。(P95)

父親たちが早々に高級娼館に連れていく。姓を持つ階層の者たちは、とにかく「跡継ぎを確実に得る」ことをなによりも大切にしているし、女慣れしていないせいで、色香に迷って平民の娘を孕ませてしまうようなことが起きぬよう、親たちは、早くから息子たちを女に慣れさせておくのだ。(P225)

肌を合わせていたいのなら……
そういうわがままを押し通したいのなら、けっして子ができぬように、しなくてはならない。確実な避妊の方法が、ひとつだけある。(P266)

物語を書くとき、わたしは結末までの構成をあらかじめ作ることはしません。頭の中に芽吹いた命が、その命なりの力をもってぐんぐん伸びていく勢いをそぎたくないからです。
(P385 上橋菜穂子あとがき)

とくに恋愛はエピソードとして異常な吸引力を持っていますから、彼女らの恋を描けば、餅を焼いているときに、ある部分だけがぶう~っと膨らむように、そこだけが突出して、『獣の奏者』という物語の姿を変えてしまうと感じていたからです。(P387 上橋菜穂子あとがき)

(2021/7/26)

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