ティラノゲームフェス2024お薦め作品紹介③やっぱり正義!見ていて飽きないかわいい作品
はじめに
今年もフリーノベルゲームのプラットフォーム「ノベルゲームコレクション」の祭典「ティラノゲームフェス2024」が開催中です!ダイア玉ブーストも始まりどんどん盛り上がっていますね!ノベコレは私も日常的に作品を探し遊ばせてもらっている最高の場所です。私も感想書いていかないと…。
そこで去年に引き続き私がここまで遊んだフェス参加作品の中から特にお薦めしたい作品を紹介します!ぜひ皆様にも個人制作ノベルゲームの世界に触れるきっかけになればと思います。
去年に引き続き5回の連続記事で3~5作の作品を紹介します。去年とは区分を変え、「私が遊んでどんな気持ちになったか」で区切らせてもらいます!どれもこれもお薦めの作品なのでぜひ遊んでもらいたいです…!
去年の作品紹介記事はこちらから!
各記事の紹介・予告
やっぱり正義!見ていて飽きないかわいい作品(今回)
今回は第3回「やっぱり正義!見ていて飽きないかわいい作品」になります!やっぱりかわいいは正義!その上でそのかわいさがしっかり作品や物語の面白さに繋がっている作品を3つ紹介いたします!
かわいい作品3選
1:ミス・キャスト・レッド・フード
3日間の公演の中で「赤ずきん」の配役を選び、それによって物語と登場人物の運命が変化していくノベルゲームになります。
今作はやはりまずデザインがいいです。三体の動物のキャラクターが二本足でてこてこ歩きながら赤ずきんやオオカミを演じるのがとてもかわいらしく、また全体に布地的な素材感があり、見るだけでも手触りを感じられるかのうようでとても心になじみます。非常に懐かしくも温かい雰囲気で、まるで子ども向け演劇や、Eテレの人形劇や「おはなしのくに」のような優しい雰囲気が多くの人の心に沁みるでしょう。
しかしそれとは対照的に物語はいい意味でかわいくない面に溢れています。そのギャップが遊んでいてゾクッと来ます。3人はそれぞれに性格や口調、能力や演劇へのこだわりも違い、その中で配役や演劇を巡り本当にやりとりがぎすぎすしていきます。読んでいて「だめだよよくないよ…!」ってなりました。
そうして変更することとなった配役によって物語はどんどん予想を超えていきます。ギャグだったり、暴力的だったり、シュールだったりと、時には赤ずきんを離れアドリブやトラブルの嵐が吹きあがります。「え、じゃあ次はこの配役だとどうなるの?」とどんどん読み進めてしまいます。
何より今作はエンディングがとてもいいです。各公演ごとにやってくるエンディングは読後感もそれぞれで、ものすごく暗いオチがあるかと思えば、もやもやするものだったり「えっ?」っとなってしまうものだったりと様々な形で楽しませてくれます。そして最後に到達する結末はまさに演劇のグランドフィナーレって感じでとてもグッときました。
さらにその上でそして、そのあと見られる「あるもの」がとにかくびっくりしました。「えっ、そうなの!!」となりました。本当に驚きました。
さらに遊んだ翌日に今作のことを思い出していると「えっ、最後がああってことはあれそういうことじゃん…!?」となり本当に部屋で声が出ました。最後の最後に私に牙をむいてくるような衝撃がありました。ぜひ、そこまでたどり着いてもらえればと思います。
2:少女の亡国
死んだ友人と深夜二時にガラケーでメールする作品です。「平成メンヘラ文学ビジュアルノベル」と銘打たれる通り、2000年代の、どこか心の闇ととか病がかわいいや美しい、あるいは逆説的な生の喜びとして描かれていた「あの時代」の空気が濃厚に振りかけられた作品となっています。「ああ、あの時代ね」とピンと来る方は間違いなく今作に何らかの思いを抱くでしょう。筋肉少女帯やアーバンギャルドに強く影響を受けたことを公言されているので、そのあたりのサブカル感に思い入れのある方にも刺さるでしょう。それぐらいあの頃の匂いが解像度高く再現された作品です。
とにかくあの頃の「仄暗さ込みのかわいい文化」が強く反映されたデザインに一瞬で引き込まれました。印象的な紫をベースとしたドット絵のデザインにはファンシーさと毒々しさ、けだるい生とさわやかな死を同時を兼ね備えているかのようなあの時代独特の「カワイイ」があって見ていて「あぁ…」となります。あの頃を生きていた人間の一人として、不安に襲われた夜をやり過ごすために友人やインターネットに縋っていた頃を思い出させられました。それをさらに掻き立てるBGMも全部最高なので、遊んだ後はぜひサウンドルームで聴いてほしいです。8bit音楽のミニアルバムとしても楽しめる作品です。
ストーリーはガラケーのメール画面の中で描かれます。その文体もとにかく「あの時代」としてものすごく解像度が高いです。また、物語が進むごとに「なぜ友人からメールが来るのか」「いったい今友人は何をしているのか」などの謎も少しずつわかっていき、考察や謎解きをしながら読んでいくのも楽しめます。そして、その結果たどり着けた結末は、辛くも甘美で胸がいっぱいになりました。最高でした。「そう、この物語はこう終わってほしい……!」って感じでちゃんと終わらせてくれました。
余談ですが私は今作をきっかけにすっかり作者様のファンになり、オフラインの絵葉書き即売会イベントに行ったりもしました。それだけの力がある作品です。
3:kara no utsuwa
宇宙旅行中の着陸事故でたどり着いた無人の星で同じ宇宙服を着た似たような境遇の人々と出会いコミュニケーションを交わしていく分岐なしのビジュアルノベルになります。
フェルト素材のようなデザインが本当にかわいく、このキャラクターたちが宇宙服越しに表情を変えたり動いたりするのを見ているだけでとても楽しいです。本当に愛おしくかわいいです。また、その可愛いデザインで描かれるキャラクターは皆善良ではあるものの、私たちがそうであるようにそれぞれ何らかの問題を抱えています。そのせいで様々なディスコミュニケーションが起きたりしますが、そのディスコミュニケーションの中であがきつつ頑張る姿こそが非常にキュートな人間らしさそのもので、見た目以上にそここそがかわいい作品です。見ていると「頑張れ…!!」「えらいぞ……!」みたいになって心が温かくなります。ゆったりとした必聴のBGMの中でのやりとりを見ているとプレイしているあなた自身が共感できるような人が一人は、あるいは誰もに少しずつ共感できるのではないでしょうか。
また、SF作品でありながら今作を遊んでいて感じるのはむしろ宇宙の「狭さ」です。今作は事故のせいで星に放り出されるのですが、その星はまるで手のひらに収まるようなスケール感で、でも同時に映像やBGMで宇宙っぽさはちゃんと感じられるのが面白いです。そして、そのスケール感ははっきりとストーリー的な意味を持ってきます。結構ハッとする真相が待っていて、爽やかな感動がある作品ですのでぜひ遊んでもらって心に一ついいものを持ち帰ってほしいです。
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本記事で紹介した作品は全て実況をしています!
また、「少女と亡国」については今作で思ったことを元にしたエッセイを書いています!
また2024年上半期のベストフリーゲーム10選+ベスト1記事を公開しています。ティラノフェス2024参加作品も多くありますのでぜひお読みください!