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幸村が完成した手塚に負けた元極悪人ならば、跡部様も決勝S3でその自尊心ごと散っていく元悪人なのではないか?

うーむ、やっぱり決勝のスペイン戦に関しては最新号から色々考えると、やっぱり跡部様は決勝S3で元悪人として滅びゆく運命にあるのではないか?と思えてしまいます。
もうこれはずっと言ってきていることですが、改めて跡部様のファンの方々に勇気を振り絞って問いたいのですが、まさか跡部景吾様を「悪ぶってるけど話のわかるいい男」だと、「根は善人」だと思っていませんか?
それは大間違いであり、跡部様は主人公至上主義の私から見ても「様」をつけるくらいには凄いと思いますが、一度も「かっこいい」「実はいい人」と思ったことはありません。
まず確認しておきたいのは「テニスの王子様」も「新テニスの王子様」も「悪人がさらなる悪人を倒す物語」であり、跡部様も幸村も「悪人」だからこそあのキャラが映えるわけです。

跡部様が最初に氷帝テニス部の頂点に立ったエピソードをOVAで見てもわかると思いますが、跡部様は基本的に非常に自分勝手な男であり、基本的には部内外を問わず「派手好き」として嫌われています。
どうしても主人公の越前、手塚、不二のような青学以上の読者人気が高いから美化されているイメージはあるものの、どこまで行こうと所詮は「悪人」であり、そこから生じるカッコ悪さが最初から目立っているのです。
例えるなら「ドラゴンボール」のベジータやバーダックのような侵略者の極悪人であり、いわゆる「偽悪的なダークヒーロー」ではなく(それは主人公・越前リョーマ)、他者を平気で踏みにじる極悪人でした。
それは氷帝に入った時から新テニの現在まで一貫しており、いわゆる「おいしい」キャラではなく「いやこんなの誰も好きにならんでしょ」という感じのキャラとして許斐先生は描かれています。

にも関わらず、なぜ跡部様が特に女性を中心にあれだけ人気なのかというと、その自尊心の裏にある泥臭く足掻く男の姿であり、また真の強者を認める王の器があるからです。
そんな「ノブレスオブリージュ」を抱えつつ、跡部様は常に「俺様が王(キング)だ!」という誇りを貫き、何があろうと「譲れない一線」というものが心に存在しています。
跡部様は良くも悪くも「男」であり「悪党」であるという、その屈折したガラスのような尖った誇りを持ち続けていますが、それが同じ天上天下唯我独尊の越前リョーマとの違いです。
越前リョーマは明確な「ダークヒーロー」であり、悪ぶっているけどテニスに対しては純粋だし仲間を大切にしてテニスを楽しむ「善」のような心も持ち合わせています。

手塚国光やその始祖に当たる越前南次郎が本作における「ヒーロー」であり、越前リョーマが「ダークヒーロー」ならば、跡部様は何処まで行こうと「アンチヒーロー」なのです。
まあ正確には幸村が「ヴィラン」であり跡部様が「アンチヒーロー」でありますが、同時にだからこそ跡部様は「人間性」の象徴であるし、ギリギリのところで「人間」であるのが大きな対比となっています。
旧作で一番の名勝負と言われる手塚国光VS跡部景吾はなぜ未だに語り草になる伝説になったのかというと「ヒーローVS人間」の図式だからなのです。
あの試合、手塚が左腕を感知して百錬自得の極みを使えていたとしたら、それこそドイツ戦のエキシビションがそうであるように跡部様は手塚に惨敗していたでしょう。

デバフをかけても跡部様は手塚にマッチポイントを奪われかけていたわけであり、あそこで手塚が左肩を負傷したのは偶然であり、じゃなければ跡部様は勝てませんでした。
そう、どこまで行こうと跡部様は「アンチヒーロー」であると同時に「人間」であるが故に「ヒーロー」であり「人外」である手塚国光を超えることができません。
だからスコアの上で勝ったとしても跡部様は手塚を超えられないわけであり、一見跡部様に花を持たせたようでいて、結局は手塚の人外ぶりが際立つ構成となったのです。
しかし青学にはそんな手塚とも跡部様とも違う「ダークヒーロー」であるもう1人の天才・越前リョーマがいたことで更にそれは盤石のものとなります。

大体跡部様ってその派手な俺様ぶりに誤魔化されがちですが、実は今まで本当にきちんと実力で完封勝ちした試合は1つもないですし、それが手塚や越前との違いでもあります。
そして新テニで彼の新たな理解者として立ちふさがった入江ですら跡部様は結局超えることができず、それでも「俺様は跡部景吾だ!」と自分のプライドを捨てられません。
「アンチヒーローにして人間」の跡部景吾を描くことがあくまでも「ヒーロー」の手塚国光と「ダークヒーロー」の越前リョーマを際立たせるためにあるようなものです。
確かに跡部様は試合のたびに進化も成長もするでしょう、でもどこまで行こうと彼は「アンチヒーロー」であり「王様」であり「人間」であることから逃れられません

じゃあなぜこうなってしまったかというと、全ては幼少期のイギリスで体格と人種の壁という差別・迫害を受けたというトラウマが根っこにあるからです。
そこで彼は生き残るために唯一天性の才能として与えられた視覚による洞察力で相手の弱点を徹底的に突くことを目的とした卑劣とも取れるテニスをしています。
そんな跡部様であっても自分の存在を認めさせてたいと願ったのが「ヒーロー」である手塚国光だったし、そこに「ダークヒーロー」である越前リョーマは映りません。
実際越前との試合の時でも「そんなだからてめえは手塚の域に達せねえんだよ」「ここでも邪魔するのか手塚」と言い、入江とのシャッフルマッチでは「約束は果たさせてもらうぜ手塚!」と言うのです。

もはや一種の病気じゃないかという位に手塚へのクソデカ感情が肥大化している跡部様ですが、要するに跡部様はどこまで行こうと手塚に憧憬と劣等感を抱えているのでしょう。
だからドイツに行ってボルクの元で益々「ヒーロー」として純化していく手塚に対し、跡部様や幸村はどんどん「悪人」から「人間」へと降りてきています
幸村は「神の子」と呼ばれながら徹底した「ヴィラン」として描かれた存在であり、過去を清算したからといってそれは彼が「善人」になったことを意味しません。
どこまで行こうと幸村は自身が犯した極悪人としての業から逃れることはできませんし、それは跡部様も同じでどこまで行こうと彼も「悪人」であり続けるのです。

なぜ幸村や跡部様がどこまで行こうとテニスの世界で天衣無縫を極めた2人に敵わないのかというと、天衣無縫の有無ではなくそもそもテニスの神様に「光」の側として選ばれていないからです。
どこまで行こうと跡部様も立海も所詮は「闇」であり「悪人」であって、テニスを心から愛せず他の要素が邪魔してしまうからこそリョーマや手塚のようにはなれません。
だからそんな跡部様に寄り添って彼を心の地獄から救おうと入江は数々の忠告を送りましたが、本音を隠して嘘しかない入江には跡部様を変えさせることはできませんでした。
それで樺地や氷帝の仲間たちといった他の理解者までも追放した跡部様は「どんな屈辱も受け入れる」としてスペインのロミフェルに「クニミツを倒した」と言ったのです。

これが何を意味するのか、いうまでもなく「滅び」であり、しかも平等院や徳川・リョーマと違って蘇ることなど到底不可能な本当の意味での「滅び」ではないでしょうか。
それこそ「ドラゴンボール」でいうバーダックやベジータのような存在だと書きましたが、バーダックもベジータもフリーザを倒すという壁は超えられていません。
フリーザの強大さの前に虚しく散っていき儚い最期を迎えることで彼らの物語は幕を閉じたのであり、悪に待ち受けているのはどこまで行こうと「破滅」しかないのです。
だからどれだけ強くなって格好をつけても幸村は越前と手塚を超えられなかったし、跡部様もまたやはりその2人の前に敗れ去ってしまいました。

その上で入江から0-5で惨敗したまま理不尽なルールで裁かれ、望まぬ出場権を与えられてしまった……これは意図的かわかりませんが旧作の全国大会のセルフオマージュです。
あの時氷帝は読者人気が高かったというメタ事情もあって「開催地特別枠」という形で全国に出ることになりましたが、跡部様は決して喜んでいなかったでしょう
自らの手で勝ち取った全国ではなく、どこまで強くなっても青学はそれ以上に強くなっていて、またもやベスト8の段階で今度は越前リョーマの前に敗れ去ってしまったのです。
そこからさらに時が経って、跡部様は技術の進化もしているし次期部長の日吉への餞別も送って部長としてこなせることはこなしましたが、精神面の成長はどうでしょうか?

幸村や赤也、仁王、真田のようにきちんと自分が旧作時代にしてきたことのツケを払って過去を清算するということを跡部様はしたかというと、していませんよね。
むしろ手塚と試合したあの日から彼の心は止まっていてずっと手塚に呪縛され続け、もはや王様としての威光も氷帝テニス部部長としての存在感も大した意味を持ちません。
つまり、決勝戦S3では完全な「個人」として跡部様はロミフェルと戦うことになるわけであり、きちんと己の所業と向き合ってこなかった彼が勝てるのでしょうか?
そこらへんを考えていくと、全国前に真田を「氷の世界」の練習台として利用したことも含めて跡部様もまた立海のように過去の清算を行う時ではないかと思うのです。

越前リョーマと戦って破られた時でさえ気絶しながらも膝を折らず君臨した跡部様は手塚とQPの前に膝をついてしまうという屈辱を味わいました。
そしてオーストラリア戦で氷の皇帝を編み出して勝ちはしたものの、「悪人」「アンチヒーロー」としての所業をきちんと清算していません
ダブルスならそれでも相方の助けがありますが、それすらないシングルスで彼が勝てる見込みはゼロに等しいです、描写を見る限りロミフェルに隙はなさそうですし。
もしこれで跡部様が奇跡を起こして逆転勝ちを収めてしまうようなことは私は決してあってはならないと思います、あくまで悪人は悪人らしく散るからいいと思うので。


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