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【ネタバレあり】『新テニスの王子様』最新号感想〜才能の塊と努力の塊、そして四天宝寺のチーム愛〜【遠山金太郎&大曲竜二】

さて、少し遅くなりましたが「新テニスの王子様」の最新号感想です。ネタバレありなのでご注意ください。

今回の感想については「驚き」はほとんどなく予想の範囲内でしたが、改めて四天宝寺のチーム愛と金太郎と大曲の対比とがもう素晴らしすぎて、許斐先生やるなあという感じです。
まず四天宝寺のチーム愛についてですが、今回まさかの「クラウドファンディング」ならぬ「”蔵”ウドファンディング(部長が部長だけに)」で金太郎の為に新品のラケット購入してるのが泣けました。
しかもサラッと財前が動画とブログで収益上げて稼いでいるという裏設定まで明らかになりましたが、部長に任命された時のサンシャイン池崎ネタもそうですが、財前って裏ではめちゃくちゃハッチャケるタイプなのだろなと。
だから意外とインフルエンサーとかネットビジネスとかで器用に稼いで、表面上は澄まし顔ながら可愛い後輩のためにサラッとラケット購入費を出すところとかパーフェクトなツンデレムーブです。

何より部長の白石をはじめ全員が金太郎の為にというのがまた泣けるところで、四天宝寺の旧作を読んだだけだとわからない人柄の良さ・チーム愛に泣けて来ます。
いやもちろん青学・氷帝・立海など他の学校だって形は違えどチーム愛や絆はあるけど、四天宝寺はそこをすごくストレートに大阪の浪花節というか義理人情のチームで表現できるのがいいですよね。
実はテニプリでこんな風にストレートにチーム愛が表現されること自体が結構珍しくて、基本的にテニプリってストレートにチーム愛だったり熱血や青春を表現したりってあんまりないじゃないですか。
基本的に主人公の越前リョーマがそうだからなんですけど、あんまり露骨にそういうストレートな少年漫画の表現をしないで「内に秘める静かな熱さ」というような形で表現するのが良くも悪くも「テニプリ」です。

でも金太郎って元々許斐先生が「もう一人の主人公」として設定しただけあってスタンダードな熱血王道キャラとして描いてて、だから彼が所属する四天宝寺もそういうチームなのだなと思います。
本当に大曲竜二だけではなく、四天宝寺の先輩たちも遠山金太郎を「宝箱=才能の塊」だと思っていて、そんな彼を大事に思いながら育てて来たんだというのがわかるのです。
原作でもほぼ中盤〜終盤にしか出てこないから初登場の印象は単なる色物チームだと見てましたが、嫌な印象がないのは奥底にあるのはこの義理人情だからですよね。
これは青学のクールだけども爽やかで熱いチーム愛とは違っていて、青学もなんだかんだリョーマを大事にしながら育てて来ましたけど、四天ほどストレートではないじゃないですか。

むしろリョーマってそういうチームから世話焼かれるのを嫌うタイプですし、青学の先輩たちって基本協調性があんまりないというかスタンドアロンタイプの集合体なんですよね。
リョーマの才能は凄く認めてるし大事な後輩だけど、だからって全員でクラファン募ってラケット買ってあげようとかはない、むしろリョーマって実家が太いのでその必要はないし。
「スラムダンク」で言うなら沢北と流川をハイブリッドしたのが越前リョーマ、桜木花道を関西の中学生にしたのが遠山金太郎なので、少年漫画の王道はむしろ金太郎なんですよね。
だからこそ、遠山金太郎って基本的にクールなタイプが多い「テニスの王子様」の世界観の中ではむしろ珍しいくらいに直球の熱血キャラというのが今回改めてわかりました。

そしてまた、あのウッドラケットがまさか金太郎に力をつけさせるためのパワーリスト・パワーアンクルに近い矯正器具というのも予想外です。
おすぎ婆さんのウッドラケットがそうだったとするなら、オジイが作った六角のウッドラケットもまさかそういう矯正器具のようなものなのでしょうか?
何れにしても、本当に金太郎って「愛されてるなあ」と思うんですよね、リョーマ・赤也とはまた違う愛され方というか。
まあ赤也の場合は殴られ蹴られの「貶し愛」みたいな粗雑な扱われ方ですけど、赤也のようなやんちゃさの場合はむしろそれくらいが丁度いいのでしょう。

そしてもう1つ、再起不能状態に陥っていた大曲竜二が掘り下げられたのも大きくて、「俺には圧倒的な才能はねえ…それでも俺は決勝(ここ)にいる!」というのが泣けました。
いやラケット二刀流ができる時点であんたも十分才能あるでしょと言いたくなりますが、金太郎が「才能の塊=宝箱」であるなら大曲先輩は「努力の塊=磨き抜かれた日本刀」のように思えます。
かといってそれに嫉妬するわけでもなくお互いに尊重した上で「テニス辞められない!」で絆が強まり、対するスペインチームもセダが息を吹き返しはじめていい感じに拮抗しているようです。
終盤に向けて底なしに盛り上がって来ていますが、でもなんだかんだこのD2は個人的にやはり日本チームには負けてほしいというか、勝って欲しくありません

なんでかって金太郎はまだダブルスの良さに気づき始めたばかりで、まだ自分のテニスを完璧にものにできていないと思いますし、何より天衣無縫に依存したプレーになってしまっているので。
リョーマはもうすでに天衣無縫に依存しないプレースタイルを模索してその先を行こうとしていますが、金太郎はまだまだその手前の段階で、自分の才能を客観視してコントロールできていません
このまま勝ってしまったら金太郎も本当に大事なものに気づけず本質を見失ってしまい、下手すればかつての立海みたいに勝つことが常態化して満足して「驕り」が出てしまうのではないでしょうか。
何よりまだダブルス始めたての急増コンビで勝てるようだったら黄金ペアをはじめとするダブルスペアの存在意義は何だったの?ってことにもなりかねません。

セダの方がパートナーのマルスを活かすプレーをしているので、ダブルスチームとしての完成度はやはりスペインの方が上ではないかなと思います。
マルスがいい先輩なのとセダ君が素直なのでリカバリー力が半端なく高いんですよね、流石は「リョーマが7人」と言わしめたチームです。

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