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『新テニスの王子様』ジャンプ・スクエア最新号レビュー(ネタバレあり)

さて、2ヶ月ぶりの『新テニスの王子様』ジャンプ・スクエア最新号レビューに行こう。

さて、ここからは打って変わってジャンプスクエア最新号の『新テニスの王子様』についてレビューしていくが、許斐先生は相変わらず「攻め」の人というか、相変わらず「読ませない」人だなあと。
兄弟対決の内容もそうだが、それ以上にいきなりの南次郎入院&S2中断でD1先に始めるとか、旧作の全国立海決勝でも記憶喪失展開とか入れてたし、「ここでそれをぶっこむか!?」と思えてならない。
というか先生、あまりにもスペインチームというか南次郎とリョーガに対してドSすぎるとは思ったが、ただ元々のテニプリのコンセプトは「悪人がさらなる悪人を倒す物語」である以上、これは必然だったのだろう。
そもそもなぜこのような展開になったかというと、メタ的なことを言えばD1の対戦カードが正直なところイマイチ盛り上がりに欠けるからというのが一番の理由だろう。

考えてもみて欲しい、そもそも今回の対戦カードとして揃った7人はいずれも「進化の可能性がある者たち」であり、勝つにしろ負けるにしろ「可能性」と「進化」の戦いをテーマに揃えられたメンツであることは間違いない。
その場合、一番盛り上がるのは間違いなく無限に進化し続ける越前リョーマとその進化を能力剥奪という形で停滞させてしまうリョーガの兄弟対決であることに間違いはなく、一番ここが盛り上がるのだ。
その他にもやはり努力で自己進化を続ける跡部様と才能の塊である遠山金太郎、そしていうまでもなく阿修羅の神道のその先を見極めて進化する徳川がいるわけだから、間違いなくS2とS1が最大の見せ場となるだろう。
となると、どうしても浮いてしまうのがやはりD1のツインタワーコンビであり、ぶっちゃけどの順番で入れるかのが最も望ましいのかというとここしかないという他はあるまい。

SNSなどの反応を見ると好意的に受け止めている人と地雷を踏んでしまったという人とに真っ二つに分かれており、しかも南次郎が倒れた理由に突然脳の病気を持ち出すというのもどうなのだろうか?
この手の「話の都合のためにいきなり謎の病気を持ち出す」というのは許斐先生が用いる悪癖の1つであり、幸村のギランバレー症候群に酷似した難病といい、今回の件といい正直好印象ではない。
個人的には人造人間編でいきなり「悟空は未来においてウィルス性の心臓病で死にます」という設定が唐突に出てきたのと同じくらい、今回の南次郎入院は流石に読者を悪酔いさせすぎとは思った。
まあそもそも許斐先生は従来の作品に対する逆張りで作っているところがあるしそれは否定しないが、今回みたいなレッドラインを軽々と踏まれると「おいちょっと待てよ!」となるのも当然ではある。

しかし、そうまでしてわざわざD1を真ん中に持ってきた理由としては、構成というか「形式」の観点からこれ以外に決勝戦を盛り上げる術がなかったからなのは明白だ。
越智・毛利に関しては正直大曲先輩と同じで伸び代という伸び代が感じられず、他の越前・跡部様・遠山・徳川と比べてこれといって盛り上がる要素が見つからない
先生としては一番の大本命であるS2の後に見せてもテンションが下がってしまうし、かといって跡部・遠山のような先発・先陣に向かないという難しいカードだ。
そうなるとやはり物語の展開的に齟齬を生じてしまったとしても、真ん中に持ってきて大本命として控えるS2・S1の前座にしてしまうという大胆にも程がある取捨選択をしたのではなかろうか。

実際、旧作の全国大会決勝ではS2の不二VS仁王がものすごく盛り上がった反面D1の黄金ペアVSジャッカル・丸井ペアが明らかなS1への繋ぎという尺稼ぎになってしまった問題がある。
そういった反省も踏まえてのことであろうし、個人的にはどうだったかというと実はこの展開そのものに違和感はなく、どこでどう盛り上げるべきかを考えたらこの選択が妥当だろうとも思えた。
最初に跡部を勝たせて勝敗を読めなくさせ、D2で七人のリョーマとして金太郎・大曲ペアに負けさせて金太郎のこれからの伸び代とスペインの脅威を示しておくことで地固めを行う。
その上でS2がそのまま展開するのかと思いきや、D1で高校生ペアのツインタワーが負けることによってリョーマに王手がかかってくるという状況に持って行ってるわけだ。

確かに主人公補正をこんな形で用いるのはどうかと思うが、目先はともかく全体の構成・形式から俯瞰した時に先生のこの判断が決して正解とは言えないが、間違いだと言い切ることも出来ない
今までも散々読者を悪酔いさせる展開を入れながらも着地はしっかりしていたので、D1を決して前座っぽく思わせないように盛り上げた上で、S2とS1も盛り上げてくれればそれでよし。
そもそも私はテニプリというか許斐先生に対して小器用な展開なんざ一度も期待したことはないので、なんだかんだそれ相応のところに着地してくれるのでは?と思っている。
合わないと判断したなら読むのを辞めてしまえばいいだけの話だし、「あと3試合やる」と先生自ら公言している以上、言ったことはきちんと守る誠実さはあるプロフェッショナルなので。

それよりも、今回気になったのは「リョーマがこの先どんな進化を遂げるのか?」であり、真っ先にリョーガに自身の一番の切り札である天衣無縫を捨てさせるというのが面白い。
読者の反応としては「え?いきなり切り札をリョーガに喰わせて大丈夫なの?」とお思いであろうが、そもそもリョーマは不二との再戦で既に天衣無縫を攻略されている
しかもラストには狐火球で負けかけたわけであり、あの不二との再戦はリョーマにとって自分のプレイスタイルが南次郎の模倣(コピー)でしかないことの限界を露呈させたものだった
また、あの試合では光る打球も攻略されていたことから、次にリョーガに喰わせるであろう技が光る打球であることも容易に想像できる、おそらく父親のコピーでしかない技は全て吸収させるつもりだろう。

そうなると問題はいわゆるドライブ系ショット(ドライブA・ドライブB・ドライブC・COOLドライブ)が果たして「越前リョーマのオリジナル技」なのか「南次郎の模倣技」なのかである。
前者であれば安易にリョーガに食わせないであろうし、後者であれば次々と捨てさせるであろうから、どちらになるかも含めて興味深いところだ。
また、天衣無縫をあえて最初に捨てさせたということはそれに取って代わる新しい概念を、それこそ南次郎にもリョーガにもない新形態を獲得する流れがあるのではとも感じる。
いわゆる「身勝手の極意」や「孫悟飯ビースト」のようなリョーマ専用の新形態が来るのではないかと考えているが(そうでなければ手塚にも対抗できないだろうし)、どうだろうか?

賢いのはリョーマが試合の始まりの段階で既にリョーガの能力剥奪を理解した上で逆手に利用していることであり、そうとも知らずリョーガは「どんな能力でも食ってやるぜヒャッハー!」と盛り上がっている。
まあこの時点でどちらがメンタルが強いのかはいうまでもないのだが、個人的にはそこは全く問題ではなく、もう私の意識はさらにその先に待ち構えているであろう真の最終回に及んでいる
真の最終回、すなわち越前リョーマVS手塚国光の再戦であるが、これを許斐先生が果たしてこのスペイン戦が終わった後に描くのか?それともここで一旦区切ってまた新章にお預けなのか?が今一番気になっている。
少なくともラインハートみたいに能力を失うだけ失ってボロボロにやられて惨敗ということだけは先生の構想にないであろうことははっきりしている。

また、今回を見ていて改めて思ったのだが、越前リョーマが相対する最後の対戦相手は幸村の互換剥奪といいリョーガの能力剥奪といい「奪う」系であるのは何とも数奇な運命だ
幸村がいわゆる「ヴィラン」から「ダークヒーロー」へと転身したので、新テニではそれがリョーガに移行した形であるが、この能力剥奪も描きすぎるとチートになりかねない。
そのことも含めて、リョーマが手塚への挑戦権を手にするためには敢えてリョーガに南次郎の模倣を喰わせて「越前リョーマのオリジナル」としてのテニスをこの決勝戦で作り上げなければならないのだ。

そう考えるとリョーガ可哀想だな、自分は弟と真剣勝負ができて大盛り上がりなのに、当の本人は「最低な悪人」としか兄のこと見てなくて、その後にVS手塚の構想を既にしているのだから。

あと余談だが、赤也が「あんな最悪なやつがなぜ日本代表に!?」と言っていたが、あんたんとこの部長もかつてそうだっただろうがよ、何ならあんたもかつてはその最悪なやつの一員だったんだよ(笑)

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