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ポリヴェーガル理論――レジリエンスを語るまえに


昨今、生きる上で障碍感を抱きやすい人々にとり救世主的な、神経学上の研究、発見と実証がありました。

自律神経のメカニズムが、従来の交感神経(昂奮・緊張)vs 副交感神経(緊張緩和・ホッとする)の二元的作用と思われていた者が、改定され、じつは胎児が母胎において成長する最晩期になって形成される、有髄(=機敏)迷走神経としての副交感神経が、その手前に既に形成されていた交感神経と無髄(=古い)副交感神経とを、同時に統御する ことがわかったという理論です。

私のようにかなりの未熟児で生まれて来た人間や、何か不安・危機の徴を感じる状況に遭った際行動を制御する機能に何らかの負荷のかかった人々が、不適応をきたしたことを示す現象として、フリーズ・シャットダウン・擬死(無表情,心筋の停滞etcetc...)があり、これらの症状に陥りやすいことがわかりました。

またこの仕組みが、PTSDの発症、自閉症やADHD、うつ(ASD)、不安障害やパニック障碍(社交不安・広場恐怖等)、強迫性障害などの誘発機制とも連関するというのを知り、人生の中で様々な不適応や、凍結感――他の人々にとっては難なくこなせる状況を、自分は突破できない、その行き詰まるようなお手上げ感覚――障碍感…等々を感じやすかった自分にとっても、妙に納得のいくよろこび・得心をえられたこと、そしてこうした画期的解明への努力が世の中にあることへの感謝の念、また(何のトラブルもない普段の表情はかなり豊かな方とはいえ、突発的な困難に見舞われた際には人一倍凍結作用をきたしやすい)己自身に密接に関係していたらしい、これらの仕組みにたいする、自己理解と自己受容により、ある種の救いをすら得ることができ、泣けてきました。問題の克服も見通しが立ってくると思います。

健常者にはわかりにくい、異なった機作やシステムに支配されがちの非健常者、あるいはその境界線上にしばしばありがちな人々にとって、こうした仕組みの解明や発動差異等々が研究発表されることそれ自身、すでに救いなのではないでしょうか。

こうした画期的な研究がなされる土壌のあることが示す社会の豊かさ。生きにくさを抱える弱者や障害者、また境界性パーソナリティにとり、こうした豊かさがしっかりと担保されるという意味に於いて、「懐深い社会」というのは、同時にまわりまわって共同体全体にとっても余裕のあるあたたかな社会とも言えると思います。

このような丹念な研究がこれからも継承され、意外な発見や解明が時々刻々となされるよう祈っています。昨今の神経細胞や神経伝達物質・機序等にかんする研究は、量子力学・量子物理学の著しい発達とも不可分のようにも思えますが、こうした臨床医学的・臨床心理学的研究分野には、ひとりの人間としてもまた、興味が尽きません。




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