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どの電子契約サービスを選ぶべき?基礎知識や選定ポイントを解説!

近年、急速に「電子契約」に対応する企業が増えています。その最大の理由は、2021年5月にデジタル関連法案が可決されたことで、それまで電子契約が認められていなかった分野の契約でも電子契約が可能になったことが挙げられるでしょう。

その一方で、電子契約に対応できるようになりたいが仕組みが分からない、どのサービスを選べばいいのか分からないといった課題もよく耳にします。そこで今回は、電子契約と電子署名の仕組みを解説し、国内で利用者の多い電子契約サービスをいくつか比較してみることにします。

電子契約とは

電子契約とは、デジタル化された契約書に電子署名を使用することで締結される契約です。実は契約行為そのものは、民法で定められた「契約方式の自由」によって、当事者全員の合意があれば、口頭やメールでも有効です。つまり、契約書がデジタルデータであっても法的に問題はありません。しかし、企業の契約行為では、当事者全員が合意していること(契約の真正性)を証明できる契約書が重視されます。

書面による契約では、「印鑑」や「署名」によって契約書の真正性を証明します。ところが、紙と比べて改ざんが容易なデジタルデータで契約書を取り交わす電子契約の場合、①契約の当事者が本人であることを証明する「本人証明」、②電子契約書に記載されている内容が改ざんされていないことを証明する「非改ざん性証明」、③電子契約に合意した日時を証明する「存在証明」という主に三つの項目によって契約書の真正性を証明しなければなりません。

電子契約書の真正性を証明する「電子署名」「電子証明書」「タイムスタンプ」

電子契約書の真正性を証明し、スムーズな契約締結ができるよう登場したのが「電子契約サービス」です。電子契約サービスは、先述した本人証明に必要な「電子署名」、非改ざん性証明に必要な「電子証明書」、存在証明に必要な「タイムスタンプ」などのサービスを提供します。

「指定認定局」が発行する電子証明書は、その電子契約書に電子署名された内容が改ざんされていないことを証明します。電子署名された電子契約書を受信した相手は、相手の電子署名と電子証明が一致することを確認することで、その契約書の本人証明と非改ざん性証明を確認できる仕組みになっています。書面での契約書に例えるなら、電子署名は印鑑で、電子証明書は印鑑証明に相当します。

タイムスタンプとは、電子署名と併せて電子契約書に日時を付与する仕組みで、「時刻認証局(TSA:Time-Stamping Authority)」が発行します。タイムスタンプが押された日時に電子契約書が存在したことを証明(存在証明)するとともに、タイムスタンプが押された日時以降に契約書が改ざんされていないことを証明(非改ざん性証明)します。

二種類の電子署名方法

ちなみに電子署名には「当事者署名型」と「立会人署名型」という二つの方法があります。

当事者署名型とは、第三者である指定認証局が本人確認した後に発行される電子証明書を使って、本人だけが利用できる環境で署名する方法です。

一方、立会人署名型は、ユーザーの依頼によって電子契約サービスの事業者が署名する方法です。契約当事者の確認(本人確認)はメールアドレスを指定して契約締結を依頼し、メールを受信した人が事業者に署名を依頼します。証明書発行などの面倒な手続きをしなくても電子契約が可能になるため、導入が容易かつ契約相手への負担も軽微です。

「立会人署名型は当事者本人の証明ではないのに、真正性があるの?」と疑問視する声があったことから、2020年9月に総務省・法務省・経済産業省は連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」を発表し、立会人署名型でも二要素認証など一定の要件を満たす場合は電子署名として有効であることを示した背景もあります。

電子契約のメリットとデメリット

多くの企業が電子契約を導入するのは、電子契約には多くのメリットがあるためです。

[電子契約のメリット]

  • 契約書の印刷・製本が不要

  • 「物理的」な記名押印や署名捺印が不要

  • 契約締結までのリードタイムを短縮

  • 契約書の送付にかかる送料が不要

  • 契約書の保管・管理のコスト削減

  • 契約書の検索が容易

  • 収入印紙の貼付が不要 (印紙税が不課税)

電子契約であれば、契約書の印刷や製本が不要なため、契約書を作成するためだけに出勤する必要はありません。もちろん、契約書の真正性を証明する署名や捺印の代わりに電子署名があるため、これもリモートから数分程度で対応可能です。物理的な契約書をやり取りするための郵送料や、契約書を保管しておく場所や管理コストも大幅に軽減できますし、締結した契約書を検索するのも簡単です。また、こうした特性から契約締結までの時間を大幅に短縮できることができるのも電子契約の魅力です。

しかし、何よりも大きなメリットとして挙げられているのは、収入印紙によって納付する「印紙税」が不課税となるため、コスト削減ができることでしょう。

もちろん電子契約の導入にはデメリットもあります。

[電子契約のデメリット]

  • サイバー攻撃の対象になることがある

  • すべての契約が電子契約化できるわけではない

  • 新たな契約方法に対応するために業務プロセスを変更しなければならない

  • 契約相手が電子契約に対応できるとは限らない

デジタルデータはすべてサイバー攻撃の対象となり得ますが、特に電子契約書は企業の機密データでもあるため、攻撃者に狙われやすいデータであることは間違いありません。そのため、電子契約書の保管には細心の注意が必要になります。また、公証人が必要になるような契約など電子契約化できない契約もあるため導入の際は確認しておきましょう。

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人気の電子契約サービス比較

電子契約サービスを提供するクラウドサービスプロバイダは続々と増えています。やはり早い時期から電子契約を提供している「クラウドサイン」と「GMOサイン」が人気ですが、「freeeサイン」や「マネーフォワード クラウド契約」など会計などのサービスを提供しているプロバイダの系列サービスも注目されています。また、真正性の証明として当事者型の電子契約サービスにこだわるのであれば、GMOサインの他にも「セコムWebサイン」があります。

クラウドサイン

クラウドサインは、弁護士ドットコムが運営する立会人署名型の電子契約サービスです。弁護士がサービス全体を監修しているため、適法性や証拠力など法的な観点を見据えた運営が特長です。
月額の基本料金はStandardプランで10,000円(税別)からとなっており、1件送信するごとに200円の従量課金があります。ユーザー数は無制限なので、電子契約に関わる担当者数に増減があっても料金は同じです。
無料のフリープランは月の送信件数月5件までです。

GMOサイン

GMOサインは、GMOグローバルサイン・ホールディングスが提供する電子契約サービスです。当事者署名型のサービスは「実印タイプ」、立会人署名型サービスは「契約印タイプ」と呼ばれており、どちらの方式でも電子契約サービスを提供していることが特長です。
月額の基本料金は一律8,800円(税別)ですが、1件送信するごとに実印タイプは330円、契約印タイプは110円の従量課金があります。ユーザー数は無制限ですが、API連携など追加機能には別途オプション料金が発生します。
無料のフリープランは月の送信件数5件までで1ユーザー限定です。

freeeサイン

freeeサイン(旧NINJA SIGN)は、freeeサイン株式会社が運営する立会人署名型の電子契約サービスです。freeeサインも弁護士がサービス全体を監修していることが特長となっています。URL発行機能によって、普段ビジネスで利用しているコミュニケーションツールなどでも契約相手に署名を依頼できます。
月額の基本料金はLightプランで4,980円(税別)からとなっており、電子署名での送信には1件送信するごとに200円の従量課金(電子サインでの送信であれば無料)があります。ただし、Lightプランは1ユーザー限定で、月に送信できるのは50通までという制限があります。
無料のフリープランは月の送信件数1件までで1ユーザー限定です。

マネーフォワード クラウド契約

マネーフォワード クラウド契約は、株式会社マネーフォワードが運営する立会人署名型の電子契約サービスです。
月額の基本料金は小規模〜中小企業向けプランで2,980円(税別)からとなっています。なお、契約書の送信や保管にかかる従量課金はありませんが、ユーザー数は4名までに制限されています。中堅から大企業向けのプランは、個別に問い合わせが必要になりますが、契約管理や内部統制など全ての機能が利用可能です。
無料のフリープランは提供されていませんが、月額800円(税別)からの個人プランがあります。

セコムWebサイン

セコムWebサインは、セコムトラストシステムズ株式会社が提供する電子契約サービスです。国内では数少ない当事者署名型のサービスです。同社は国内初のルート認証局をはじめとする複数の認証局を運営しており、1社で電子証明書、タイムスタンプが提供できる国内唯一の事業者でもあります。
月額の基本料金は一律20,000円円(税別)ですが、1件送信するごとに200円、PDF編集に150円(IDごと)の従量課金があります。また、契約書を保管するディスクを追加すると、10GBあたり月額500円(税別)の料金が発生します。
無料のフリープランは提供されていませんが、30日間の無料トライアルが用意されています。

契約書などのテンプレートの豊富さや、利用している企業数という観点から、クラウドサインは非常に魅力的です。特にフリーランスや個人事業主の場合、クラウドサインのフリープランだけで対応しているというケースも少なくありません。

電子契約書の真正性を厳格に求めるのであれば、当事者署名型のサービスを提供しているGMOサインやセコムWebサインがおすすめです。特にセコムWebサインは、月額料金が他社よりも高い傾向にありますが、自社で認証局を運営していることや高いセキュリティを誇る国内の堅牢なデータセンターにおいて契約書を保管できるという点において他の追随を許しません。

弁護士が監修しているサービスということから、クラウドサインやfreeeサインを選ぶという企業も多いようです。いずれも法的な観点でサービスを運営しているため、立会人署名型のサービスでも電子契約書の真正性を担保されることを明確に表明しています。

電子契約書の送信に従量課金がないサービスを選びたいということであれば、マネーフォワード クラウド契約がおすすめです。なお、freeeサインでも、電子署名ではなく電子サインであれば、送信は無料なので状況に応じた使い分けが可能です。

今後、ますます電子契約に対応していく企業が増えていくことは明白です。取引先に「電子契約に対応できていない企業」という印象を与えてしまうことのないよう、自社の業務に合った電子契約サービスを利用しましょう。

まとめ

  • 電子契約はデジタル関連法等によって法的に認められている

  • 電子契約なら印刷、製本、署名捺印のための出社が不要で、印紙税のコストもカットできる

  • 電子契約サービスは、電子署名の種類や料金体制などの違いを把握して選定することが大切

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