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嫌いな人の記憶に残りたい

高校の時、いじめにあった。
当時は何度も死んでやろうと思った。
死ぬほどつらかったのもあるが、復讐がしたかった。いじめてきたやつの名前を遺書に書いて週刊誌に送りつけてやろうとか考えていた。

当時の大人はみんな
「幸せになることが1番の復讐だよ」
と言ってきた。
あたしはそれを信じて復讐を開始した。

高校をやめてから、友達ができた。みんな優しくて、当たり前みたいに「おはよう」と挨拶をしてくれて涙が出た。
希望の大学に進学した。やめた高校の半数よりも偏差値の高い大学に。
すごくいい人と結婚もした、あの人たちよりも早く。

でも月に1度は彼女たちのSNSを監視して、アイコンが更新されていたらスクショしている。そのスクショと自分の整形した顔写真を並べて「ブッサwwww」と鍵垢にツイートするのがやめられない。

あの人たちはもう、あたしのことなんか忘れてるのに。

あの頃のことを恨み続けているのはあたしだけ。
しんどい。

会社でハラスメントにあった。うつ病になり休職した。
弁護士に相談に行った。
「裁判になると多分負けると思います。ハラスメントは立証が難しいんです」
分かっていた。それでも着手をお願いしようとしていた。
だって、記憶に残れるじゃん。

示談で終わっても、裁判であたしが負けても、訴えられたことを忘れられたりはしないわよ、きっと。
そのために今のあたしにとって高額な弁護士費用を支払うことは、未来への投資に思えた。

でも周りは違ったみたい。
「え!勝てんのに裁判するん!?」
「裁判になると傷ついて、余計鬱悪化しますよ。やめといたほうがいいと思いますけどね」
「裁判では堂々とハラスメントされたりすることもあるので」
「お金が減るかもしれないのに、何が目的なん?相手がちゃんと反省すると思ったら大間違いよ」
親、弁護士、主治医、いろんな人にいろいろ言われた。

夫だけは賛成してくれた。
「勝てるかもしれんやん。勝てたら儲かるんやろ?」
そういう問題でもないけど、そう言ってくれるのは有難かった。

10年間うじうじSNSを監視する大人になってしまった。
もうやなの。
弁護士に依頼したってハラスメント加害者のこともうじうじ引きずるかもしれないけどさ。それでもさ、忘れないでほしいの、あたしのこと。

今は鬱病で、生きるので精いっぱい。判断力がないから何も決められない。
だれか決めて、未来が見える人。


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