見出し画像

キリスト教で特に大切にされている平日

 キリスト教で最も大切にされているのは日曜日です。これは、イエス・キリストが十字架の死から3日目に復活したことに由来します。この日にほとんどの教会でミサ・礼拝が行われますが、セブンスデーアドベンチスト教会では旧約時代から安息日として守られていた土曜日に礼拝が行われています。

 いずれにせよ、クリスチャンは週1回のミサ・礼拝を大切にしています。キリスト教の三大祝日は、キリストの誕生を記念するクリスマス(降誕祭)キリストの復活を記念するイースター(復活祭)、そして天に昇られたキリストの代わりに「助け主」として聖霊が与えられたことを記念するペンテコステ(聖霊降臨祭)ですが、このうちイースターとペンテコステは日曜日と定められています。しかし、クリスマスは12月25日に固定されているので平日の場合が圧倒的です。前者が移動祝日、後者が固定祝日と呼ばれます。
 この三大祝日について、以前ノンクリスチャンの知人に説明する機会がありました。その方には三位一体の神(父・子・聖霊)について既にお話していたんですが、三大祝日について「父なる神が出てこないんですね」と言われたのです。そういったことを考えたことはそれまでありませんでした(^^;; キリストの誕生と復活、昇天、そして聖霊の降臨はすべて父なる神の主導で行われた業である…という返事をしましたが、これで合っているでしょうか。

 少々脱線しましたが、今回は日曜日以外に記念されるキリスト教の記念日をご紹介していきます。しかし、予めお断りしなければいけないのは、キリスト教には数多くの教派(宗派)があり、暦をどれくらい大切にするかは、伝統教派以外の場合、各教会によってまちまちだということです。
 教派間の一番分かりやすい違いは、カトリックや聖公会には聖人暦が存在するということです。

 運用方法について教派外の人間が闇雲に説明しようとするとボロが出かねないので、2つのリンクを紹介するにとどめたいと思います(^^;;
 「特に」とタイトルで記した通り、この記事では多くの教派で共有されている祝日・記念日に限定した紹介となります。
 なお、キリスト教の暦(教会暦・典礼暦)はクリスマスを前にしたアドベント(待降節・降臨節)から始まります。それに関しては以前の記事をご覧ください。

 紹介順はこの一年の流れに準じることとし、移動祝日については2022年の日付を記します。(来年以降も更新予定)

12月25日 クリスマス

 すでに紹介していますし、言うまでもなく有名な日です。ちなみに、イブというのは前日ではなく前夜を意味します。聖書の舞台であるユダヤ社会では、一日は日没から始まります。創世記1章の天地創造物語で「夕べがあり、朝があった。第〇の日である。」(5節他)と書いてある通りです。ですから、イエスは24日夜に生まれた=25日に生まれた、となる訳です。
 聖書には、12月25日にイエスが生まれたとは書かれていません。元々は、当時の太陽神(ミトラ)の生誕祭だったのです。キリスト教は、様々な面で異教的要素を取り込んでいると言えると思います。
 ちなみに、24日夜のイブ礼拝は多くの教会で行われますが、プロテスタント教会では「クリスマス礼拝」がイブ前の日曜日に行われることが多いです。厳密に言うとこれはアドベント第4主日の礼拝なんですが、 戦後になってこのような文化が広がったと言われます。個人的にはアドベントはアドベントとして十分味わうべきなのではないかと思いますし、戦前は25日を過ぎて最初の日曜日を「クリスマス礼拝」としていた教会もあったと聞いたことがあります。
 なお、正教会(東方教会)では1月7日がクリスマスです。
 クリスマスのために作った創作賛美歌がありますので、よろしければお聞きください。

ルカ福音書2章1~20節参照。他に、キリスト誕生を詩的表現で描いたヨハネ福音書1章1~18節が読まれることも多い)

1月6日 公現日(顕現日、エピファニー)

 日本の教会ではクリスマスを過ぎるとすぐに飾りを片づける、と揶揄されることもありますが、特に欧米ではこの日までの2週間弱がクリスマスシーズンです。
 この日は、占星術の学者(東方の博士)が幼子イエスのもとを訪れて礼拝し、黄金・乳香・没薬を贈り物としてささげたことを記念します。贈り物の数を根拠に「三人の博士」と言われることもよくありますが、実際の人数は定かではありません。4人目の博士がいたという逸話から、非常に味わい深い物語も生まれています。

 博士たちの旅は非常にリスクに満ちたものでした。マタイ福音書2章冒頭にある通りですが、この危険はイエス一家にも降りかかろうとしていたのです。詳しくは、以前の記事をお読みいただけると幸いです。

 この博士たちはユダヤ人ではない「異邦人」でした。そのような人々にも救い主イエスが現わされたというのが「公現」の意味です。
 ここまでは西方教会の話で、東方教会におけるエピファニーはイエスが公生涯(伝道活動)を30歳前後で始めるに当たって洗礼者ヨハネから洗礼を受けたことを記念する日になっています。元々は西方教会でもこれを記念していたものの、徐々にこの意味が失われていったそうです。
 最後に、日本聖公会東京教区の聖餐式(礼拝)配信を添付します。(以下、適宜同様の措置)

3月2日 灰の水曜日

 今回紹介する中には祝日ではないものも含まれます。そういった日は「聖日」と呼ばれるそうです。ただし、ホーリネスを中心とする一部教派では日曜日のことを聖日と呼ぶのでややこしいのですが。
 この日は、キリストの十字架上での死(受難)を覚える期間(レント、受難節、四旬節、大斎節)の始まりの日です。レントは、受難日までの、日曜日を除く40日間のことを言います。その間に挟まる日曜日を含めると46日間になります。
 この記事で理解を深めていただけるのではないかと思います。

3/2追記:この日から始まるレントを意義深く過ごす一助となる黙想の手引きと説教集をご紹介します。前者は毎日のためのガイド、後者は主日礼拝のために作られたメッセージ(もちろんいつでも読んでいいですが)…と用途が分かれていると言えます。そして、いずれにも姉妹本?がありますが、今回はあくまでも平日の紹介なので、姉妹本の紹介は泣く泣く割愛します。

 この時期に使っていただきやすい賛美歌と奏楽曲の創作作品です。

4月14日 洗足木曜日(聖餐制定記念日)

 今回の趣旨を厳密に運用するため、受難「週」の始まりである「棕櫚の主日」(日曜日)は残念ながら紹介していません。レント最後の1週間を受難週(聖週間)と呼びます。
 受難週の前半はあまり注目されませんが、それについても言及されている記事をご紹介します。

 さて木曜日の出来事は、ダ・ヴィンチの名画で有名な「最後の晩餐」です。
 27の書簡で構成される新約聖書は4つの福音書から始まりますが、マタイ・マルコ・ルカは共観福音書と呼ばれ、最後のヨハネ福音書はそこから外れた、非常に独特な福音書です。その1章についてはクリスマスの項で紹介しましたが、それを一つとっても独自色が強いことがお分かりいただけると思います。「最後の晩餐」については両者で非常に対照的で、共観福音書では「最初の聖餐」についてのみ書かれ、ヨハネ福音書では洗足の出来事と告別説教、そしてイエスの祈りが記されています(箇所後述)。告別説教では、自分の代わりに来られる聖霊について、またイエスを信じる共同体が大切にすべきことについて、3章余に渡って丁寧に述べられています。
 キリスト教の礼拝で大切にされるのは神の言葉(聖書朗読と説教)と聖礼典(洗礼・聖餐)だと言われます。最後の晩餐はこれらを豊かに含んだ出来事だったと言える訳です。(洗足の伝統を受け継いでいる教派は限られますが)
 カトリックでは、この日からの3日間を「聖なる過越の3日間」と呼びます。

 過越というのは、モーセに率いられたイスラエルの民が捕囚の地・エジプトから脱出したことを指します。(出エジプト記12章参照) 最後の晩餐も、ちょうど過越の祭りの食事として行われていたものでした。(マタイ26章17節他参照)

マタイ26章26~30節、マルコ14章22~26節、ルカ22章14~23節、ヨハネ1317章参照)

4月15日 受難日(聖金曜日、受苦日)

 イエスが十字架につけられた日です。この日についても説明しようと思えばキリがないですが、イエスは最後の晩餐の後、十字架にかかる前にも様々な痛み・苦しみを受けていたことにも言及したいと思います。その極みが十字架だったということです。

 英語ではこの日のことをGood Fridayと呼びます。これは、イエスの死が単に悲しい出来事なのではなく、全人類の罪の代価(贖い)としてささげられた、救済の業の完成として位置づけられているからです。

マタイ27章32節以降、マルコ15章21節以降、ルカ23章26節以降、ヨハネ19章17節以降参照)

 ちなみに、カトリックや正教会では最初に紹介したユダヤの慣習に倣って土曜日の日没後に「復活徹夜祭」が行われます。正教会では今でも文字通りの徹夜で行われるそうですが、カトリックではさほど長くない儀式です。

5月26日 昇天日

 イースター(4月17日)は灰の水曜日からペンテコステまでの日付を決めるのに不可欠な要素ですが、その日付は「春分の日を過ぎて最初の満月の日の次の日曜日」という、説明も難しいような基準で決められています(^^;;
 それから40日目に、イエスが弟子たちの見ている前で天に上げられていきました。この出来事は使徒言行録1章3~11節に最も詳しいですが、同じ場面で語られた「大宣教命令」はマタイ福音書28章18~20節とマルコ福音書16章15節に記されています。
 この日からペンテコステ(6月5日)までは10日間ですが、とある国の聖公会ではこの時期を「昇天後聖霊降臨前」と呼ぶんだそうです。この10日間は世界の聖公会で大切にされているそうで、私は昨年のこの期間に行われた祈祷週間のプログラムにいくつか参加しました。

 当日に礼拝をしない教会では、次の日曜日を昇天後主日礼拝として行う場合があります。

 このような祝日・聖日が定められている意味について、キリスト教礼拝・礼拝学事典(新版)p.83で次のように解説されています。

暦上の日時全体を守ることによって、信仰共同体の信仰生活の規律と秩序、そしてリズムが保たれるのである。

 このポイントは、日本の生活上の暦と通じるのではないかと思います。

 教会暦の一年は、アドベント~ペンテコステ前を主(キリスト)の半年、ペンテコステ以降を教会の半年と呼びます。後者の期間には、今回紹介したような祝日・聖日はありません。聖霊降臨節(あるいは、ペンテコステの翌主日から始まる三位一体節)が半年近くも続くことに対しては個人的には間延び感を否めませんが、逆に言うと聖徒の日(召天者記念日、11月第一主日、関連記事)や宗教改革記念日(10月31日、関連記事)、世界聖餐日(10月第一主日)等の記念日が多くある期節であることも事実です。

 一応キリスト教の馴染みのない方向けに書いたつもりですが、実際はそうもならなかったような(^^;; 関心をお持ちになった方は、ぜひ参考書もお読みになってみてください。

 必要に応じて調べながら書きましたが、訂正のご指摘等がございましたら忌憚なくいただけますようお願い申し上げますm(_ _)m
 今回の見出し画像は、2014年4月から2年間通っていた高田聖書教会上越市)の十字架です。たまたま夕日に照らされたタイミングに出くわしました。

より多くのアウトプットをするためには、インプットのための日常的なゆとりが必要です。ぜひサポートをお願いしますm(_ _)m