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大人がハマる昆虫研究

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40になって知ったディープな昆虫の世界。身近な環境も、視点次第で宝の山に。
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2023年1月の記事一覧

微小甲虫の楽園としての「芝生の裏側」―チビミズギワゴミムシとコケシマグソコガネ―

微小甲虫の楽園としての「芝生の裏側」―チビミズギワゴミムシとコケシマグソコガネ―

はじめに私が現在居住する賃貸住宅の庭には5 $${\text{m}^2}$$ほどの小さな芝生がある(下写真)。

いくら虫屋でも、こんなつまらなそうな場所でわざわざしゃがみ込んで虫を探そうという発想にはなかなか至らないものであるが、たまたま妻に頼まれた作業を玄関前で行っていたのがきっかけで、この芝生にチビミズギワゴミムシとコケシマグソコガネが生息しているのを発見した。いずれの種も、こんな身近過ぎる

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アキノヒメミノガ―身近なミノムシの謎の多い生態―

アキノヒメミノガ―身近なミノムシの謎の多い生態―

はじめにアキノヒメミノガ Bacotia sakabei Seino, 1981という虫がいる。ミノガ科(いわゆるミノムシ類)に属する小型で焦げ茶色の地味な蛾である。ミノムシ類は、幼虫が植物質の材料を綴り合せて作ったポータブルケース(ミノ)を背負って暮らす生態で広く知られている。また、下手に自然度の高い所よりも、人間の居住環境近くの方が多く見られるため、蛾類の中では特に身近な仲間である。その中で、

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アサヒナコマルガムシが生息する高原の湧水帯

アサヒナコマルガムシが生息する高原の湧水帯

妻の実家が長野県央の白樺湖に程近い高原にあるため,帰省の度に現地の昆虫相を調査するようになった。長野県の茅野市と立科町の境界に位置する白樺湖周辺の一帯は,周辺の霧ヶ峰や八ヶ岳連峰の太古の火山活動によって形成された高原となっており,標高1,300~1,700 m程度の範囲で緩やかなに起伏する地形が広範囲に広がっている。この一帯で特徴的なのは,緩やかに起伏する樹林帯の至る所に湧水流があり,林床にミクロ

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