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#10 人々の主観的な日常経験と科学・技術をつなぐ方法について

2020/7/30

主観的な日常経験にはいろいろあるが、ある人間からの外部へのアクセス方法(インプット)は身体移動等に加えて五感で分けて考えることができる。すなわち視覚、聴覚、触覚等である。

科学・技術はそれらを補助や代替が可能であり、その進歩によって障害者等の不便も解消できる。視覚にはタブレットや読み上げ機能のソフトウェアがある。VRやARでバーチャルな体験もできる。聴覚にはキャプション機能や音声テキスト化ソフトなどがある。


これまで触覚についてはあまり議論がなく科学・技術の具体的成果は見られない。私は「触覚移動」「ハプティクス」などの技術に興味があり情報を収集している。東京大学発の技術も多い。将来的は、遠距離であっても皮膚体感できるような日が来るだろう。


双方向でのアクセス方法は、アウトプットからの側面も考えることが必要である。これも身体の移動、動作・表現、五感で分けて考えることができる。

すなわち自分から外部に与える方向である。身体の移動には車いすがある。スポーツとして陸上やバスケットは人気が出てきた。動作のパワードスーツは身体障害者や高齢者の運動補助できるようになった。一般の身体表現にはジェスチャー、ダンスなどがある。視覚表現には書く、描くなどの他、カメラやスマホを使って写真や動画がある。音による表現は、おしゃべり、朗読、プレゼン、楽器や歌唱などがある。

これまで障害者の自己表現の場は限られており、特殊な括りのような扱いであった。しかし科学・技術によって補助代替できるどころかこれまで無かった全く新しい表現手段を、健常者と区別なく手に入れることができると期待している。

インプットとアウトプット共通に、人間の基礎的な感情表現としての機能がある。これはノン・バーバルなコミュニケーションの手段として重要である。障害者の日常生活において本人も相手にとっても文字通り障害になることがある。特に自閉症スペクトラムの人々にとっては非常に理解困難な部分である。科学・技術による補助代替も最も難しい最後になると思う。人間の機微や感情の動きを無理にデフォルメしても解決にはならないからだ。

それらテクノロジー自体への「つなぐ方法」も考える必要がある。学校や会社への導入制度やNPO団体等のボランティアの役割が大きい。なぜなら障害者から「こうした機器はないか?」「こうしたソフトがあるはずだ」という意見が出難いからだ。そういった情報に疎いのは当然であり、専門家の方から本人に合った補助機器や方法を提案して本人に選択してもらうべきである。

特に自閉症スペクトラムのような人々は、メタ認知機能が劣っており自分を客観視する力が弱い。また自分の感情を自覚して表現することが苦手(アレキシサイミア)なこともある。カウンセラーなど専門家との相談がうまくできないこともある。したがって、当事者から積極的な要望は期待できない。私は、発達障害者へ適したテクノロジーを「つなぐ方法」については、日常を過ごしている保護者・介助者などに聞くのが良いと思う。つまり、代理者としての保護者向けのプログラムを並行して実行する事が有効と考える。

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