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ドキュメンタリー「ニューヨーク公共図書館」

こんにちは。
株式会社HYAKUSHO代表の湯川です。

7月で第4期に入りました。サラリーマンのときの3年と経営者としての3年はまるでスピードが異なるので、「これがアインシュタインが言っていた相対性理論なの?」と感じております。

そんなことはさておき、不定期に、書きたい時に、書きたいことを書いておりますが、今回やっと見ることができたドキュメンタリー「ニューヨーク公共図書館」を見たので、その感想を書いていきたいと思います。(なぜ時間がかかったとのかというと、このドキュメンタリー3時間30分以上あるため)

※この文章は写真もなく、ただ文章が羅列されているだけなのでご容赦ください。

図書館は、本の置き場ではない

作中に、こんな発言があります。

そして、そのあとに「図書館とは、ひとである」という言葉が続きます。これだけを聞くとは意味不明ですが、作中を通して、図書館とはどうあるべきなのか?という激論がスタッフで何度も行われます。

このイベントどうしよう?ではなく、図書館とはどうあるべきか?という議論です。

作中には様々なワークショップやイベントの様子が描かれています。中国人などのアジア人のための講座や、「新しいアメリカ人」という企画コーナー、盲目の方のための講座、高齢者のダンス教室、資本主義とマルクス講座、黒人問題のディスカッションなどです。

このドキュメンタリーは、ただ普段のこの図書館の日常を見るだけなのですが、「そんなことも図書館でやるの?」ということがたくさんあります。

さらに、利用者向けの講座だけではなく、スタッフミーティングも描かれます。その中で一番印象的だったのは、事務局長的の方(紹介はされないけど議論をリードをするのでおそらく偉い人)が「ホームレス問題」を議題に挙げていたことです。

図書館とは常に誰にでも開かれていないとダメであるが、どうしても利用者同士の要望がぶつかるケースがある。その場合に、図書館としてどのような振る舞いをするべきか?規則で縛って利用制限をすることは簡単であるがそれは本当にすべきなのか?

と言います。

もっと大切な価値観あるのではないかという議論が行われます。なかなか答えが出ない議論をスタッフ全員で考えます。

図書館は、社会問題を解決する

ホームレスの方の図書館の利用に対する対応をスタッフの中で考える中で、議論はさらにその先へ行きます。

図書館内でのホームレスの方への対応だけではなく、「ホームレス政策にどこまで踏み込むべきか?」と問題提起されます。

もちろん、図書館だけではその課題を解決できないので、行政や専門機関とどのように連携にするのかに議論が移っていきます。

我々のやっていること、やりたいことをもっと地域に出て説明して、行政の予算審議会にもいって、政治家にもコンタクトして・・・と積極的に地域・外部と関わっていく必要があるとミーティングで話し合いが行われます。

このミーティングを見るだけで、日本に住む僕からは衝撃を受けます。

(余談)
最近、地域連携したいとある文化施設から依頼がありましたが、地域連携のアウトソーシングみたいな依頼で久々に激おこしました。自分達のやっていることをよく見せるために、地域の方々を手段に使うなと申しました。

僕は、図書館の機能を、本の貸し出しだけではなく、ホームレスという社会問題を解決する主体として自分達を位置付けている点が衝撃的でした。

また、この図書館は、デジタルデバイド問題にも取り組みます。

ニューヨークでは300万人がネット環境がないため、その問題にコミットし民間の出資を集め、連邦予算の検討がはじまったとのことです。(民間の寄付が公の出資を動かした事例として紹介)

その中で、事務局長的な方が、「教育と情報へのアクセスが不平等を解消する。その力を過小評価してはいけない。」と熱弁します。

インターネットに接続できない3分の1の市民へ、どのようにアプローチをするかを図書館内で激論されます。

図書館のあるべき姿、役割、責任が議論のすべてのベースになっています。

図書館は、民間施設である

このニューヨーク公共図書館は、ニューヨーク市からの出資が61%で、そのほかは民間の出資から成り立っています。行政の組織ではないのです。財団法人なのです。

それでも、公共図書館としては世界屈指の規模をもち、年間の予算額3億4000万ドル(約340億円)、年間来館者数は約1700万人にのぼる施設ですが、その約40%を民間からの寄付などで成り立たせているのです。

もちろん、日本とアメリカの寄付文化、寄付税制の違いはありますが、図書館の運営方法としてこれも衝撃的でした。

ただ、非常にインサイト富んでいたのは、事務局長的な方が「民間の出資が集まるからこそ、公の出資が集まるのだ」という発言です。

この点については、日本も大きく学ばなければならないと思います。

何か社会問題があった際に、「行政の出番」とみんな思います。それでも、自分達の所属している団体や組織が「何かできないだろうか?」と思って行動することはあって良いと思います。

僕なりの解釈ですが、民間の出資というのは、ある種、「民意」なのだと思います。デジタルデバイド問題、ホームレス問題などに社会問題に図書館として積極的に取り組んでいるからこそ、民間からの寄付が集まり、公が資金を提供するようになり、さらには、民間がさらに出資する好循環が生まれているようです。

自分たちの身近な問題を自分達で小さくても少しずつ動いて解決していくこと、それがとても大切なのだと思います。

でも、僕たちは、仕事や子育てなど日々の生活で忙しくて、なかなか社会問題にコミットできない環境にいます。それでも、誰かがこの指止まれと言って、楽しくコミュニティをつくりながら、取り組んでいくことはできるんじゃないかと思うわけです。

選挙だけが、民主主義ではないのだろう。

そんなことを「ニューヨーク公共図書館」から学びました。

さいごに

もうお気づきだと思うのですが、この図書館の正式名称がニューヨーク公共図書館で英語名称「New York Public Library」なのです。

「Public」がわざわざついているのです。

作中でも、「Public」がついている意味を感じる場面がたくさんあります。それは、ぜひこの長い3時間30分というドキュメンタリーを見ていただき、感じてほしいと思います。

特に、美術館や図書館など文化施設で働いているひとにぜひ見てほしいなって思います。

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