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小説

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2023年12月の記事一覧

白澤優人の人となり 4

 「へぇ、そうなんすね……」
 カツを食べる。
 肉はともかく、衣はサクサクでカレーの味を引き立てる。
 白澤先輩はラーメンを食べていた。
 特盛のラーメンはドでかい器に盛られているようなのだが、先輩との対比であまり大きく見えない。
 先輩はラーメンを啜ると随分と美味しそうに微笑んだ。
 学食のラーメンなので特筆して美味い、なんてことは無いと思うのだが、先輩を見ているとラーメンを食べたくなってしま

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白澤優人の人となり 3

 カツカレーから目を離して、声の主の方を見る。
 こちらが椅子に座った状態とはいえ見上げるほどの身長、がっしりとした体形、黒縁眼鏡にものすごく特徴的な喋り方。
 そんな人物は一人しかいない。
 そこに立っていたのはうちの部長の数少ない友人の一人、ボードゲーム部部長の白澤優人先輩であった。

 白澤先輩は唐揚げ定食と、特盛らしいラーメンの乗ったトレイ二つを両手で持ったまま俺の反応を待っていた。
 「

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白澤優人の人となり 2

 さて、食券機の前まで来たものの何を頼んだらいいものやら。
 食券機にずらりと並ぶメニューに一通り眺めてみる。
 定食に丼物、麺類にサラダ、デザートなど種類は意外と豊富で、悩ましい。
 悩ましい、のだが悩んでいる時間は無さそうだった。
 次から次へと俺の後ろに客がやってくるのだ。
 既に三人ほどの男女が並んでいるのだが、彼らは一様に先頭で呑気にとぼけた顔で俺に怪訝な顔を向けてきているようだった。

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白澤 優人の人となり 1

 『食堂』という施設がある。
 多くの方がご存知の通り、食事の提供と飲食をする為の場所だ。(それ以外の目的もあるだろうが、一旦脇に置いておく)
 人が集まる公共施設には設置されていることの多い『食堂』だが、仮にも名門と冠せられることもあるこの高校にも例外ではなく存在していた。
 生徒のおよそ三分の一程度(目算)が昼休みの時間に利用し、一番の賑わいをみせる学校施設である。

 さて、そんな学校の食堂

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