みおこんぼ

相貌失認症の主人公による〈私の実話シリーズ〉 完全オリジナルの百物語をゆるりと語ってい…

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相貌失認症の主人公による〈私の実話シリーズ〉 完全オリジナルの百物語をゆるりと語っていきます。無断転載はお断り。 大体週一更新です。

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【実話怪談】その人をその人足らしめるもの

〈第一話〉 私は相貌失認症です。生まれつきそうだったもので、それが普通で当たり前の世界だと疑いもせずに育ちました。 ただ、人の顔を覚えるのが苦手、表情を読み取るのが苦手、それだけのことです。 同じ相貌失認症でも、きっと感覚には個人差があると思います。私の場合は、人の顔が覚えられないぶん、相手の声や仕草、立ち振る舞い、服の感じ、全体的な雰囲気を感じ取るのが上手でした。 私が今、保育教諭の仕事をしているのは、その能力を最大限に活かすことができるからです。 お子さまは生ま

    • 【実話怪談】物理的にあり得ない

      社会人吹奏楽団で出会った、コバさんの話をします。 コバさんは某有名パン会社の営業さんで、全国転勤のある方でした。 私が趣味で社会人吹奏楽団に入り、3年ほど経った時に、コバさんは入団してきたと思います。 コバさんは30代半ばくらいの男性でとても人あたりがよく、行動力もある方で、「転勤で長くはいられないけど……。」と言いながら、自前のチューバをとても良い音で吹き鳴らしていました。 コバさんの凄いところは、入団してすぐに団員と打解けて、団長になったところです。 社会人吹奏楽団とい

      • 【実話怪談】桜の樹の下には

        マホ園長の話をします。 マホ園長は、とある小さな院内保育所の園長で、40代前半くらいの女性です。 院内保育所とは、基本的には病院スタッフのお子さまを預かる施設で、0歳〜2歳までのお子さまを一緒に保育します。 病院スタッフと同様に夜勤があったりと、お子さまの数は少人数ながら、独特な家庭的雰囲気のある職場でした。 私がマホ園長と働いていたのは、8年前までです。 マホ園長はとにかく判断力と行動力のある方で、憧れの存在でした。 自分が悪いと思ったことをすぐに反省して正すことがで

        • 【実話怪談】消しゴムのお告げ/下駄チェーン男

          「消しゴムのお告げ」私が初めてお付き合いした男の子、レン君のお話です。 大学2回生の夏、突然告白してきた男の子がレン君でした。オーケストラ部トロンボーンパートの後輩。身長がとても高くて独特な雰囲気の男の子だったので、相貌失認症を持つ私の人生初異性から告られイベントは幸いにも「この人誰だっけ?」とならずに済みました。 小学校、中学校、高校、大学と同性から告白されることはありましたが、異性からはこの時が初めてだったので、よく覚えています。 「俺のアパート、大学からめちゃくち

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        【実話怪談】その人をその人足らしめるもの

          【人怖】たったひとつの冴えたやりかた

          これは私が子育て支援のボランティア活動をしていた時の話です。 当時まだ、子育て支援センター等が普及しておらず、子育てをする母親の孤立が問題になっていました。 良くも悪くも時代が変わり、核家族化が進み、地域社会との繋がりも希薄になり、子育て中の母親の孤立が浮き彫りになってきていた時分。 母親が気軽に息抜きできるようにと、公共施設を使って乳幼児の遊び場の提供と、傾聴による育児ストレス発散。子育て力の向上を目指したセミナー企画などをしていたのが、私の所属するボランティア団体(子

          【人怖】たったひとつの冴えたやりかた

          【実話怪談】曲げる

          大学生の時、アルバイトで家庭教師をしていた時のお話です。 家庭教師は短い時間で高収入のアルバイトなので、大学生には特に人気があります。 個人的には人の家の中が見られるというのが面白くて、短い期間の家庭教師でも積極的に受けるようにしていました。 人に教えることも性に合っていたようで、受け持った生徒さんは順調に成績を上げていき、評判も上々。家庭教師仲介本部に気に入られ、徐々に紹介される生徒も難しい子が多くなっていきます。 そんな難しい子の中に、リョウくんはいました。 「この

          【実話怪談】曲げる

          【実話怪談】保育園、こども園の不思議な話【短編2話】

          「ビッグフット」昔、子育て支援のボランティア活動をしていた時に仲良くなった、小学生のカホちゃんから聞いたお話です。 カホちゃんは小学4年生で、よく喋る女の子でした。 「私が昔行ってた保育園のこと、特別に教えてあげる!」 ある時、何をどう気に入られたのか私にだけ教えてくれたのが、保育園での奇妙なお話でした。 その保育園は私のマンションからも近く、白いフェンスに囲われた古い保育園です。歴史のある保育園で、私が生まれるよりずっと前からそこにあるのだといいます。 防犯上の理由なの

          【実話怪談】保育園、こども園の不思議な話【短編2話】

          【実話怪談】失せ物出る

          これは私が長野県に住んでいた頃のお話です。 当時小学4年生だった私は、比較的毎日平和に過ごしていました。小さな不思議に出会うことはありましたが、どれも些細なもので、語るほどではありません。 例えば、兄とスゴロク遊んでいる時、手にしたサイコロが、振った途端に消えたことがありました。兄も消えるところを見ていたものですから、一緒になって大騒ぎしたことを覚えています。 他にも、見た目が明らかに浅い水たまりに、お友だちが長靴でバシャッと入った時、膝くらいまで片足が一気に沈んだことがあ

          【実話怪談】失せ物出る

          【実話怪談】ウミウシ

          私が小学1年生の時のお話です。 当時北海道のある島に住んでいた私達家族は、7人家族でした。 私が小学1年生の頃は、姉が小学5年生、兄が小学3年生、弟が2歳、妹が生まれたばかり。母は下の兄弟2人のお世話で忙しく、必然的に上の兄弟3人が毎日一緒になって遊んでいました。 当時はまだおおらかな時代で、土地柄もあったのでしょうか。私達兄弟は山にも川にも海にも、子どもだけで行き、1日中自然と戯れて遊びました。 特に海には夏になると連日泳ぎに行き、素潜りでウニを拾ったり、つぶ貝を取ってお

          【実話怪談】ウミウシ

          【人怖】アキオくんから聞いた3つの短いお話【実話怪談】

          【人怖】マスクアキオくんから聞いた話。 アキオくんは秋田出身で、私とは大学で知り合いました。 田舎者と思われるのが嫌で、大学デビューを果たしたアキオくんは、とにかくチャラくて声が大きくて馴れ馴れしくて……私とは縁のないタイプの男性だと思っていました。 ところが、不思議なことに、このアキオくんは大人になった今も交流があります。 そんなアキオくんが、この間会ったときに「悪いけどマスク外してくれない?俺さ〜、マスクをしている女性、今めちゃくちゃ怖いんだよね。」と、言い出しました

          【人怖】アキオくんから聞いた3つの短いお話【実話怪談】

          【実話怪談】中古服

          ユキちゃんの話をします。 ユキちゃんは大学の1回生の時に仲良くなった友人で、大人になった今でも仲の良い関係です。 アルビノゆえに銀髪に紅い目を持ち、パッと見た感じは外国人にしか見えません。 更には普段からロリータ服を身に纏い、個性を殺す日本の社会ではとても目立つ存在でした。 相貌失認症を持つ私が、ひと目で存在を認識できる有り難い友人の1人です。 そんなユキちゃんとは当時住んでいたアパートも一緒でした。 アルビノ特有の弱視を持つユキちゃんでしたが、そのハンディキャップを物とも

          【実話怪談】中古服

          【実話怪談】大家さん

          大学生の時の、アパートの大家さんのお話です。そのアパートは三之町迷路のど真ん中にありました。 三之町迷路とは、学生から『異界に繋がる』と恐れられていた地区です。 ぐちゃぐちゃに入り組んだ道は、1つ間違えると目的地には辿り着けず、迷ってしまいます。 また、『三之町迷路で待ち合わせをしても会えない』など、怪奇談が後を絶たない区域でもありました。 そんなわけで、三之町迷路は学生から畏れられており、『三之町迷路に住む者は三之町迷路に選ばれた者』と噂され、多少なりとも好奇の目で見られ

          【実話怪談】大家さん

          【実話怪談】食べること、生きること

          S教授の話をします。 S教授は、私の指導教官で論文指導をしてくださった先生です。 人文学部でも西洋文化、特に舞台演劇が好きで、ゼミ生とシェイクスピアを題材にラジオドラマを作ったり舞台を公演したり……。最終的には自宅を改装して演劇スタジオにするほど、どっぷり演劇の世界にハマっていました。 私はと言うと、高校時代に演劇部と吹奏楽部を掛け持っていた経験があり、元々脚本を書くのが好きだったので、ゼミ生として脚本を書いて貢献していました。 小道具を作ったり、照明を手伝ったり、アルバイ

          【実話怪談】食べること、生きること

          【実話怪談】雨降る校舎

          高校1年生の夏休み前。 退学していったクラスメイト、セトさんの話をします。 私は中学校から高校に上がる時に、引っ越しをしました。 高校受験は、「電車で通えて、制服が可愛くて、自分である程度カリキュラム選べる自由なところが良いなぁ……。」くらいの気持ちで、少し特殊な公立高校を選びました。 無事に合格して、やれやれと一息ついてから気が付いたのは、(あれ?もしかして通学めちゃくちゃ大変かもしれない。)ということです。 自転車を全力で漕いで、片道40分はかかります。もちろん電車でも

          【実話怪談】雨降る校舎

          【実話怪談】見分けがつかない

          大学4回生の春の日のことです。 学生から〈三之町迷路〉と呼ばれる場所に私は住んでいました。 大学からは少し距離があり、迷路のように道が入り組んでいて、道を一本間違えると目的地に辿り着けないような複雑な造りの地域でした。 学生の間では「三之町迷路は異界だ。」と言われており、アパートも多く建っていたものの人気はなく、格安になっていました。 当時貧乏学生だった私は、そんな三之町迷路のど真ん中に位置する家賃月額16,000円のアパートに居を構えてアルバイト三昧。 色んなことがあり

          【実話怪談】見分けがつかない

          【人怖】怒りの積載

          コンビニの準夜勤帯アルバイトで、週2回ほどシフトが一緒になったIさんの話です。 準夜勤帯は22時〜2時という時間帯のせいか、アルバイトの募集にはいつも訳ありの人が集まってきました。 本業との掛け持ちで働く人も多く、あまりお互いの事情を話さないのが暗黙の了解になっていました。そもそも準夜勤帯はアルバイトが2人で回すので、黙々と集中して作業しないと終わらない仕事量です。 実際終わらずに居残りが当たり前だったので、そのせいか長続きせずに人はどんどん辞めていきました。 そんな中、

          【人怖】怒りの積載