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#76 百鬼堂農園(23) 晴耕雨読の日々

 雨が降ると畑に行けないので本を読む。晴耕雨読とはこのことか。

 世俗から離れ、穏やかな心持ちで書物に没頭できるかというと、そんなことはない。畑が気になり、なんとなく鬱々とした気分で過ごすことになる。仕事もそれなりに忙しい。

 農園の運営を始めて初めての梅雨。この長雨の季節のことを、作物を育てる者としての視点からは、考えたこともなかった。恵みでもあり、災いでもある。大雨のニュースをみて、被害に遭われた人たちのことを思う。家屋はもちろんだが、畑や田んぼはどうなっているのだろう。

 晴れ間がのぞいたすきに畑に出るも、泥濘はいかんともしがたい。わが農園の南区画の南さんも、「おたくの畑はかなり水はけが悪いね」と心配するような様子。長靴にへばりついた粘りけの強い泥は、洗っても簡単に落ちない。梅雨も長引くと、心もぬかるむようである。

 でもまあ、雨音を聞きながら、確かに本は読める。気圧のせいか頭も少し重く、なんだか分からない諦念のようなものを抱えながらではあるけれど。

 きょうも降っている。休みだしサウナに行こうか。梅雨らしい梅雨の季節が、もうすぐ終わる。

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