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ハードボイルドなヘミングウェイも猫が好き🐾

昨夜、友人のM先生から「大藪春彦新人賞に出したいから作品を読んでみた感じを教えてほしい」と連絡がきた。

大藪春彦新人賞といえば、第一回で赤松利市先生が受賞した、あの大藪春彦新人賞!?

作品を読む前に大藪春彦新人賞の下調べしました。今回は第六回で……締め切りは明日!?

あれ、二、三日前に「新しいのを書くの」って言ってツイッター断ちしていましたよね?

あ、明日!?(2022/04/24)

第六回大藪春彦新人賞とは

募集作品:冒険小説、ハードボイルド、サスペンス、ミステリーを根底とする、エンターテインメント小説主催:大藪春彦賞選考委員会
後援:徳間書店
審査員:今野 敏、馳 星周
原稿:枚数は400字詰め原稿用紙換算で50枚以上80枚以内。ワープロ・パソコンでの印刷は、A4サイズの用紙を横置きで、1ページに40字×40行の縦書きとし、400字詰めで換算枚数を付記すること。(18.000~30.000字くらい目安)
締切:2022/04/25(当日消印有効)

大藪春彦新人賞募集サイトより

審査員が今野敏先生と馳星周先生ですと!?

M先生の好きな作家さんが、どんぴしゃで審査員に。
うーん、これは脊髄反射で応募したくなる気持ちはわかる。

けど、三日前からって……いっそ痛快な状況だから、原稿が間に合うかどうか賞がとれるかどうかより先に、M先生の挑戦を実録コラムにしたいです。
よろしいですか?
M先生?
イニシャルなら、よい?
わかりました。ではイニシャルで……あ、来年何か賞をとったら名前だしますよー。いいですね?

連絡から十五分後。さっそく冒頭約一万文字の原稿を読みました。

……
…………
………………っかー!
※以下段落の文は読まなくても大丈夫ですただの叫びです。

知っていたけど、ほんとすごい。唯一無二の表現力。この人を十五年ものあいだ野放しにしていた出版業界人の目は節穴か。小さなジャンルで書くなんてもったいなさすぎる。頭打ち数万部数の小さなジャンルより、天井までいく大きなジャンルで書いて《中略》昨日書いた感想の書き方コラムは、頭から吹っ飛んだ! 語彙力は死んだ! しかし素晴らしい原稿。最初に読ませてくれてありがとう。思春期爆発してるボーイが博多の狭いライブハウスで《中略》冒頭から一気にタイムスリップしたよ。博多弁はわからないけど、めちゃわかる。友人フィルター全開かもしれないけど、これを読んで、なんとも思わない商業なんて〇〇くらえだー!!

わたしの心の叫び

一通り作品に影響されてロックな感想を送ったあとは……さて、本題に戻りましょう。

Q. これをわたしに読ませて、何を聞きたいのかな?
A. これ、ハードボイルドになっているかな?

……なってない。けど、お互いが認識している「ハードボイルド」にずれがあるのかもしれない。

これがハードボイルドかどうかを論じる前に、互いの認識をすり合わせてゼロ地点を決めましょう。

ということで、ハードボイルドを調べました。

ハードボイルドとは

卵などを「固くゆでた」という意味です。
ハードボイルドエッグは固ゆで卵。ぱさぱさしてます。

ソフトボイルドという言葉もあります。こちらは卵に例えると半熟ゆで卵。

わたしの記憶が正しければ(WEB検索では見つからないのですが)海外の著名なハードボイルド作家(レイモンド・チャンドラーかな)が「ハードボイルド」とは何かを凄い枚数で書いた本があった気がします。語源はイギリスだった気がします。

もうひとつ。これも短い時間では出典を探せなかったので、あやしいわたしの記憶です。

縫製関係の職業を経験した人は聞いたことがあると思いますが、紳士用ワイシャツの襟につけた糊(キーピング)を落とすとき「ハードボイルド」します。ゆでないと、あの固いバリバリになった糊が落ちないという現象から「ハードボイルドな人」は頑固な人。堅物な人を揶揄する言葉。

だったと思います。たしか……おそらく……。

そんな経緯を踏まえ「ハードボイルド」はウィキペディアによると、大きく分けて三つの意味になりました。

ハードボイルドな人
「ハードボイルド」は元来、ゆで卵などが固くゆでられた状態を指す。転じて感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的・肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す。
ハードボイルドな文体
文芸用語としては、暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体をいう。アーネスト・ヘミングウェイの作風などが一例である。
※ちなみに文体のポイントは2つ。一文が短い。心理描写を最小限に抑えて行動によって説明する。
ハードボイルドジャンル
ミステリのサブジャンルとして扱われるのが一般的だが、サスペンスや一般小説など主人公をハードボイルド風の文体で描く作品は他のジャンルにもある。
また、ミステリにおいては主人公は私立探偵とするものが一般的だが、必ずしも主人公が私立探偵であることがハードボイルドの条件ではない。
特に私立探偵という職業が一般的ではない日本では、小説家や非番の日の刑事など、さまざまな職業が探偵役として提案されている。

ウィキペディアから引用

さらに「ネオ・ハードボイルド」なるものも出現します。
こちらは、1970年代に流行った小説に多く、主人公の個人的問題を通して社会を描く風刺みたいな作品。アル中やドラッグ、ポルノにタバコなどなど。精神的に不安定な主人公がハードボイルドであろうともがくなど。定義はあいまいです。

ウィキペディアから引用

わたしはハードボイルドといえばヘミングウェイと答えるタイプの人間ですので、当然「文体としてのハードボイルド」を思い浮かべました。

M先生はネオハードボイルドの定義に近いイメージを思い浮かべていました。

あぶないあぶない。よく使う単語も、ちょっとした認識のずれでまったく会話がかみ合わなくなります。

会話のゼロ地点って、大事ですね。

いずれにしても「ハードボイルド」とは少しちがうのですが、幸い他の要素も満たしている。
このまま完成させて公募に出すという話で一件落着。

今ごろ、残りン十枚の原稿を必死に書いていることでしょう。

アーネスト・ヘミングウェイ

ハードボイルドといえばヘミングウェイ。と言いましたがヘミングウェイはみなさんお好きですか?

わたしは、若い頃。ちょうど思春期のころに読んでおりました。あの不愛想な文体は一度読むと癖になるので、もし未読の方がいらっしゃったら、いつか読んでみてくださいね。

ハードボイルドに興味はなくとも、ヘミングウェイの逸話には興味が惹かれると思います。

彼は猫が好きで、知り合いの船乗りから二匹の猫を貰い飼っていました。その猫は足の指が六本ありました。
多指症といいます。

そんな猫を「幸運を呼ぶ猫」だと信じていたヘミングウェイ。

キーウエストのヘミングウェイ博物館では、この猫の子孫が今もたくさん飼われているそうです。もちろん子孫たちは六本指の幸福の猫ちゃんです。
では、最後にヘミングウェイの代表作をリンクしておきます。

《老人と海THE OLD MAN AND THE SEA 著者:アーネスト・ヘミングウェイ 日本語訳:石波杏 URL:青空文庫》

ハードボイルドが何かわからないときに、このコラムを思い出していただけたら幸いです。

長々とお読みいただき、ありがとうございました。 

その後

2022年4月25日20時30分にM先生からメッセージが1件。
完成した原稿を印刷しようとしても、30分前からネットワークエラーになる。助けて!
家から郵便局まで車で10分。窓口は21時まで。

……
…………こらー!
なぜいつもギリギリに連絡するだー!

しかもいま、わたしお風呂中だよ、湯船に入って一息ついたばかりだよ。
画面に水滴ついて文字がうまく打てない。うああ。

もう、コンビニ印刷も間に合わない。15分間、手に汗握るPCサポート。USBメモリもない。SDカードもない。スマホをケーブルで直繋ぎして何とか印刷はじまった! やった!

……ってノンブルも打ってないとはっ!
手書きでよい。ノンブル手書きで……え?
娘さんがよんでる?
泣いてる?
熱でた?
えええ?

……M先生の挑戦は終わった。

はじまる前に、終わってしまった。

どこにやったら良いのか分からぬ原稿がひとつ。
もらったPDFファイルはわたしが大事に保管しよう。

我々の戦いは来年までつづく。


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