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そろそろ人生ベスト映画の話する?

 
趣味の合う友達と会うと定期的にしてるようなしてないような話ではあるが

『結局てめえのベスト映画は何なんだ?』

という正解があるんだかないんだか分からない難題。音楽でも写真集でも漫画でもまあ何でもいいんだけど今回は映画の話。この手の話は正解も不正解もないが、なんとなくその人間の生き様やカルチャー深度を試されているような悩ましい質問である。ちょっと前もそんな話になっていつものようにうーむ、、、と悩んだ。こんなに歪なのにボーイミーツガール!と衝撃を受けた『愛のむきだし』か、この前金曜日ロードショーでやってた『ショーシャンクの空に』も間違いない名作。ちょっとマイナーだけれど『パーティで女の子に話しかけるには』もSFとパンクと初恋とカルトが入り混じってて最高だ(少し人を選ぶかもしれないが)

まあ自分は大して映画を観てるわけでも無いのだが、あーだこーだ言いながらまとまらずにその日も終わった気がする。そして先日ぼんやりと一人でその時の出来事を反芻している時にうわ、これだ!!!という作品が記憶の片隅から出た。出たのです!しかもこの作品は映画好きの友達との話にも、某ポパイや某アンドプレミアムなどの映画特集でも全く話題に上がらないおそらく世間に見逃されているダークホース。ドラマシリーズの映画なので純粋な映画ファンはあまり食いつかないのかもしれません。いいですか?言い切りますよ?ワタクシのベスト映画はこれだあ!!!

木更津キャッツアイ 〜ワールドシリーズ〜


なかなかのダークホースなんじゃないでしょうか?確か中学生の頃でしょうか。実は初めて泣いた映画がこの作品でした。以下ネタバレ含みますのであしからず。


ドラマからの延長の映画ですが、大まかなあらすじが分かれば楽しめます。初めて観た時は自分もそんな感じだった気が(勿論ドラマ観た後の方がグッとくるシーンは多いと思うが)


本当にざっくりと話すと物語は木更津に住むうだつのあがらない5人の若者の話です。主人公のぶっさんは病気により突然余命半年宣告を受けますが、今まで通り仲間と騒いだり草野球をしたりたまにヤンチャ(主に泥棒)をしたりしながら楽しく暮らします。このぶっさん、何度か死にそうになりますがなんだかんだ死なずに戻ってきます。

今回人生ベストにあげた『ワールドシリーズ』の前に『日本シリーズ』という作品もあるが、砂に埋葬された後もなんだかんだ生き返るのである。以下映画あらすじ───────

ぶっさんが死んで3年後。バンビ以外は木更津を去りそれぞれ違う生活をしていた。そんなある日バンビはぶっさんの声を聞き、久しぶりにアニやマスターに会いに行く。そして3人でぶっさんをよみがえらせようとぶっさんらしき声のいうとおりに何かをし始める。それをつくりあげて、突然爆発が起き、3人はぶっさん復活を期待したが自衛隊訓練所から脱走してきたうっちーとゾンビ軍団であった。当然脱走したうっちーを捕まえに教官の杉本文子がやってきてゾンビ達の提案で負けたらうっちーとバンビら3人が自衛隊になることを条件に野球で対決することになる。うっちー以外の3人は落胆しながらグラウンドの整備をしているとそこにはなぜか復活しているぶっさんとオジーがいた。

Wikipediaより引用


全く持ってぶっ飛んだあらすじである。そう、この映画はなんやかんや死ななかったぶっさんが死んで3年後の話なのだ。大切な人が亡くなっても生活は続く。正直、3年も経てば忘れはしないだろうが、残された人間もある程度故人の死を受け入れてそれが当たり前になっていくには十分な時間であろう(映画でもぶっさんの父、公助が亡くなった年数を間違う描写もある)メンバーのリーダー格であったぶっさんの死により他の仲間は次第に疎遠になりそれぞれの道をゆく。野球をするために集まることも無いし、お互い何をやっているかもよく分からない。

まずここ!!共感ポイントである。二十後半の年齢になって段々と分かってくるけれど、大人になると友人と段々疎遠になってくるものです。それは各々の生き方が出来上がってきてしまうから。映画のように誰かが死んでないとしてもそれぞれが家庭を持ったり、仕事が忙しくなったり、共通言語が無くなったり(似た趣味や似た生活、似た愚痴)なんとなく、 前のように気軽に集まれる仲間というのは限られてきてしまう年齢だ。そんな始まりが今の年齢になってかなりリアルに感じられる。



そんな仲間たちだがなんやかんやあり再び集い、なんやかんやありぶっさんが生き返り、なんやかんやぶっさんと共に蘇ったゾンビ軍団と共に野球する事になります(マジでここに関しては説明し切れないので観てくれ)

詳しいことは割愛するがぶっさんが生き返って3年前のように馬鹿をしようとするけれど、イマイチ盛り上がらない。なんとなくぶっさんの勢いについていけない4人。ぶっさんは死んだ3年前のままなのだが4人はなんとなく大人になってしまった。こういうズレが観ていて本当に辛い。95%がコメディだからこそ5%のリアルさが際立つ。ぶっさんが死ぬ前に弱っていく姿を見てられずに顔を合わせることを避けて誰も見取れなかったことや、いざ死んだ時に自分達は全く泣けなくて卒業以来会っていないような同級生が号泣してる描写なんかも感情としてリアルだと思う。


『何故ぶっさんは生き返ったのか』


物語の終盤までワイワイと誤魔化しつつ祭りをやってきたが、目を背けられない現実。ぶっさんが蘇った理由、それはみんながぶっさんにバイバイを言えていなかったからであった。最後のアニの不器用な別れの切り出しが本当にグッとくる(記憶による多少の誤差はあるかもしれない)

「呼び出しておいてワリーけど、ぶっさんもう帰ってくんねえかな?」

本当はバイバイなんてしたくないだろう。だけど彼らは前に進まなくてはならない。きちんとぶっさんにバイバイしてそれぞれの道を歩まなければならない。当時の自分は号泣してしまった。家族で観ていた金曜ロードショーかレンタルしたDVDだか忘れてしまったが、思春期真っ只中で涙を見せたくない家族の前で涙が止まらなかった。


もう一つ映画中の小ネタとしてぶっさんの父、公助だけ生き返ったぶっさんが何故か見えないというネタがある。割とギャグ要素として描かれているのだが、物語のラストで理由が分かる。公助だけはぶっさんを最後まで見届けてお別れをするのだ。きちんとバイバイをした公助にはぶっさんは見えない。ぶっさんは父のことを日頃名前で呼んでいるのだけれど最後だけ『お父さん』と呼…あかん書いてて泣いてしまう、、、

ここは個人的に自分とぶっさんが重なる描写である。自分は父と母を「お父さん」とか「母ちゃん」と呼んだことがない。多分ぶっさんと同じで気恥ずかしさからからなのだろう。幼少期のパパママ呼びから移行することが出来ず、呼ぶ時は「ねえ」とか「おい」みたいな感じになってしまう。本当に親不孝者だ。そんなぶっさんが最後に「お父さん、ありがとう」というところに毎度号泣してしまう。自分はどちらかが死ぬ前に呼んであげられるだろうか。


終盤のネタバレをかなりしてしまったが、木更津キャッツアイにはこんなネタバレには収まりきらない大きな仕掛けや伏線、小ネタが盛りだくさんでそれをドラマの1話分で毎度毎度やっているので感心してしまう。青さ、ギャグ要素、現実に直面するリアルさ、感動、いわば青春の全てが詰まっている。少し難点なのが調べたらオンデマンド配信はやっていなさそうだ。今のご時世ではちょっと大変かもしれないが気になったらレンタルしてみてほしい。


それではまた。

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