見出し画像

クラスメイト

 野口美咲が死んだ。

 僕がそれを聞いたのは、青空眩しい7月の朝だった。特別関わりがあったわけでは無い。せいぜい、日直が被った時に数回言葉をかわした程度だ。しかし、クラスメイトの1人がいなくなったことにはネガティブな感情を持ったようだ。よかった。
 彼女は決して活発なタイプではなかった。けれど独特な空気を纏っていた。友達も特別多くはなかった。けれど、彼女と関わる人間はとても笑顔だった。
 彼女は特別美人ではなかった。けれど、化粧っ気の無い肌に無垢な笑顔を持っていた。恐らく好意を持っていた奴は多くいただろう。

 彼女は部活には所属していなかった。その代わりにコンビニのアルバイトをしていた。月、木、土曜日の17時から22時まで時給875円でレジ、陳列をしていた。勤務態度は良く、店長からの信頼も厚い。
 彼女は昨年から塾に通い始めた。火、水、金曜日に不得意な英語を中心に唐田先生から教授を受けている。半月前の模試では偏差値が4上がった。
 彼女には4つ下の弟がいる。小学生の時からやっていることから、野球部に入部した。内野守備が上手く、既にセカンドのレギュラーを確固たるものとしつつある。彼女も公式戦の際は応援に行っている。
 彼女は野球観戦が趣味である。これは弟の影響もあるようだ。贔屓している球団は無く、野球というスポーツ自体を楽しんでいる様だ。
 彼女の両親は…。

 「彼女の両親は…。まだ調べてないや。まだまだだな。」

 そんな彼女はもう死んだ。こればかりはしょうがない。また、君に会えることを、笑顔でいることを祈っているよ。

 そんなクラスメイトの野口美咲は、教室の端で特定の男子生徒と笑い合っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?