わかりにくい人は、自分の言いたい事がわからない内に語り出す。
「すいません。相談があるのですが」
なにやら困った様子で部下が私に話しかける。
部下の困り事は上司にとっても優先だ。
まずは話を聞いてみよう。
「何かあった?」
「クライアントのAさんから、多くの修正依頼がきました。期日もあまりありません」
なるほど、それで何か困ってるというわけか。
もう少し詳しく聞いてみよう。
「ほう、それで?」
「どうしたものかと思いまして」
「期日内に、全部対応できないのかな?」
「いえ、そういう事ではありません」
では、どういう事なのか。
「で、なにを困ってるのかな?」
「なにを優先すべきかと思いまして」
ああ、優先順位がわからず困ってるのか。
待てよ?
「全部できるのなら優先は関係ないのでは?」
「とは言え、一部間に合わない可能性もありますので」
まあ、それはそうだろう。
「なるほど。で、相談したい事とは?」
「一部でも間に合わなければ、何かと困ると思いまして」
「例えば、Aさんに迷惑がかかるとか?」
「そう、言いたかったのはそれです!」
なるほど、クライアントファーストで考えるのはいい事だ。ここはひとつアドバイスしておこう。
「だったらAさんに優先順位を聞いて、一部間に合わないかもしれないとお伝えしたら?」
「そう、そうしようと思ってるんです!」
思ってる?自分でもわかってるという事か?
「じゃあ、早速聞けばいいのでは?」
「なんか断ってるみたいなので、そう言っていいものかと」
ああ、クライアントの心象を気にかけてる訳だ。
Aさんは無理を言う人ではないので今回は気にしなくていい。
「Aさんだったら、そう伝えても大丈夫だよ」
「そう!初めから、相談したかったのはそれです!」
ウソだろう。
どう考えても「それが初めから相談したかった事」ではない。
初めからわかってるなら、上記のやりとりは
「僕の言いたい事、わかるかな〜クイズ」
という事になり、タチの悪いことこの上ない。
とは言え、完全にウソとも言い切れない。
「クライアントの要望に、一部間に合わない可能性を伝えるべきか」
と、初めから言いたかったのは事実だろう。でも、私に話しかける段階では「自分が一番言いたい事」として自覚できていない。
わかりにくい人は、自分の言いたい事がわからない内に語り出すのだ。
ではどうすればいいのか。
30文字以内で言いたい事を先に書いてみればいい。
それだけで劇的にわかりやすくなる。
「そう、初めから言って欲しかったのはそれです」