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人的資本経営と「ISO 30414」に人事はこれからどう向き合うべきか

2018年12月に国際標準化機構(ISO) から発表された「ISO 30414」。
これは、企業が人的資本への投資や改善にどのように取り組んでいるのかを“見える化”し、投資判断の材料とする人的資本の情報開示のためのガイドラインです。上場企業だけでなく、すべての企業の人材や組織の課題を浮き彫りにし、課題解決に繋げる有効な指標ともなるもので、日本企業の間で関心が高まっています。

「ISO 30414」導入には、人的資本の状況をデータ化する必要があり、HRテクノロジーの導入は不可欠です。そこで今回は、日本で初めて「ISO 30414リードコンサルタント/アセッサー認証」を取得された慶應義塾大学大学院特任教授 岩本隆氏に「ISO 30414」の意義や企業・人事に求められる役割などについてお話を伺った記事から一部抜粋・編集してお届けします。

本インタビューの全文は、下記URLからダウンロード可能です。
人的資本経営と「ISO 30414」に人事はこれからどう向き合うべきか

Profile
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授 岩本 隆 氏
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ(株)、日本ルーセント・テクノロジー(株)、ノキア・ジャパン(株)、(株)ドリームインキュベータを経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授。
HRテクノロジー大賞審査委員長、HR総研アドバイザー、(一社)ICT CONNECT 21理事、(一社)日本CHRO協会理事、(一社)日本パブリックアフェアーズ協会理事、(一社)SDGs Innovation HUB理事などを兼任。2020年10月、日本初のISO 30414リードコンサルタント/アセッサー認証取得。

投資における非財務情報の必要性が契機に

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「ISO 30414」が制定された経緯
80年代のアメリカではソフトウェア産業が興隆しました。しかし、以前から投資家の間ではICT企業の財務諸表を見ても投資判断がつかないという不満がありました。例えば、製造業であれば、設備投資や研究開発投資などで判断ができていました。

しかし、ICT企業は人的資本がすべてなので、そこにどんな投資をしているかが分かりにくいことが要因です。つまり、いくら財務諸表を見ても無形資産の価値は見えてこないという状況にありました。それが「ISO 30414」開発の背景です。

リーマン・ショックとの関係
金融工学を駆使して財務データを分析し、投資を続けたことがリーマン・ショックに繋がったとして金融資本主義が大々的に批判されました。これが非財務情報、なかでも人的資本情報の重要性が叫ばれることに繋がり、投資家間で、技術や知財をつくり出す人材の情報を開示すべきとの声が高まりました。

日本での開示義務化の動き
2021年6月にコーポレートガバナンスコードが改定されました。現時点ではソフトローとして人的資本開示が盛り込まれていますが、日本企業は追随するところが大半だと予測しています(※2021年9月時点)。

※2022年2月1日に内閣官房で「非財務情報可視化研究会」が開始され、人的資本など非財務情報についての価値を評価する方法についての検討を行い、企業経営の参考となる指針がまとめられることになりました。

「ISO 30414」は企業や組織にどのようなメリットをもたらすのか

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ISO 30414に取り組む目的とメリット
まず、企業が人的資本にどれだけ投資しているかを様々な観点からデータ化することが目的です。かつ、短期的なリターンではなく、中長期的・持続的成長のためという狙いがあります。「ISO 30414」には11の人的資本領域に計58のメトリック(測定基準)があります。

この58のデータを整理すると、それぞれの関係性が現れます。その関係性を読み解くと人材戦略を立てるうえでのポイントが見えてきます。つまり、経営判断を定量的、論理的に行うことができます。そして、何年か続けて時系列でみることで業績の変動がどのメトリックに関係するか、という動的な分析が可能になることが大きなメリットになります。

例えば、58のメトリックの中には「自社の経営戦略にとって必要な人材がどれぐらい準備できているか」を問う後継者育成に関するものがあります。必要な人材を定義し、その育成にどのくらい投資することで後継者の準備につながるのか、という関係性を明示できるようになります。また、育成にも充分な投資をしていることを筋道立てて対外的にアピールできることもメリットになると考えています。

ISO 30414への対応と人材データ活用のポイント
経営とは、データを活用して行うものです。CFOは財務・会計データの存在があってこそ経営ボードの一員になれるわけですが、データで語れないCHROは真の経営ボードの一員になれないのではないでしょうか。ここに、データで人的資本の現状を表す「ISO 30414」の重要性があると思います。

この人材データを基に、CHROはCFOと財務諸表と組織状態を見て、より適切な人材投資の議論ができるようになります。開示は年1回でも構いませんが、社内では最低でも1ヶ月に1回はチェックして、採用・抜擢・配置決定などに活かすべきです。そのためにも、まずは人的資本に関するデータを収集し蓄積することから始めることが重要だと思います。

ISO 30414とタレントマネジメントシステムの関係性
60名を超える組織には、タレントマネジメントシステムは必要不可欠です。「ISO 30414」には「多様性」や「リーダーシップ」、「スキルと能力」などタレントマネジメントシステムで管理するメトリックが多くあります。

タレントマネジメントシステムで管理したメトリックを「サスティナビリティレポート」で公表できます。タレントマネジメントシステムは、離職率改善などの日々のマネジメントにも効果を発揮するので、必要不可欠といえるでしょう。

「従業員エンゲージメント」から「従業員エクスペリエンス」へ

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「従業員エンゲージメント」の改善に企業はどう取り組むべきか
ISO 30414にも従業員エンゲージメントというメトリックがありますが、まずは経営戦略に合わせて58のメトリックを具体的に定義します。そして、何が重要か、どこまで数値を高めるかを指標化した上で、従業員エンゲージメントと相関性の高い因子を特定し、数値目標を掲げる、という取り組みが良いでしょう。

従業員エンゲージメントと従業員エクスペリエンス
「従業員エンゲージメント」は抽象度が高いため、分解して施策に落とし込むのが難しいと言われています。さらに、テレワークによって今まで以上にエンゲージメントの低下に課題がある企業が増えています。そのため、従業員エンゲージメントを測るだけでなく、その後にどうアクションを取って効果を出すかが肝心であるとされています。

そこで、「従業員エクスペリエンス(Employee Experience: EX))が注目されています。従業員エクスペリエンスは従業員の入社から退職まで、組織との関わりを通じて得られる全ての経験や体験を意味しており、従業員エンゲージメントの改善指標として有効と言われています。

最後に


企業の人事は「ISO 30414」にどう取り組むべきか
まずは全社を巻き込んだ動きにしていくことが重要です。「ISO 30414」に必要なデータは人事部門だけでは揃わないことも多く、経営企画部門やサスティナビリティ部門が推進部隊となっても良いでしょう。

また、タレントマネジメントや従業員エクスペリエンス向上はシステムを導入するだけでは成功しません。人事・経営・現場が三位一体となり経営戦略と人材戦略を一致させることが不可欠だと考えています。

本インタビューのより具体的な内容は、下記URLからダウンロード可能です。
本インタビューの全文は、下記URLからダウンロード可能です。
人的資本経営と「ISO 30414」に人事はこれからどう向き合うべきか

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