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サステナビリティ情報開示と人的資本開示の融合・進化

登壇者紹介

安藤 光展氏
一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事

専門は、サステナビリティ経営、ESG情報開示。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。日本企業のサステナビリティ経営推進、ESG情報開示支援、情報開示ガイドライン対応、マテリアリティ特定、ESG評価向上支援、レポート/サイトの第三者評価、など支援実績多数。1981年⻑野県中野市生まれ。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。著書は『創発型責任経営』(日本経済新聞出版、共著)ほか多数。

本イベントレポートの全文は、下記URLからダウンロード可能です。
サステナビリティ情報開示と人的資本開示の融合・進化

サステナビリティとは

サステナビリティとは、将来世代のための経営方針・姿勢のことで、一般的には「持続可能性」と訳されます。ただ、一言にサステナビリティと言っても、その概念は多岐にわたり、社会性や経済性を重視したさまざまな側面が存在します。たとえば、SDGsやCSRは「リスク管理」の側面が強く、社会的な性質を含むアウトカムが多い傾向にあります。一方で、ESGやCSVは「事業機会創出」の側面が強く、財務的な性質を含むアウトカムが多くなります。このように一括りで語ることが難しい「サステナビリティ」という概念ですが、共通の軸も存在します。それは、「サステナビリティ活動を通じて、企業の事業によって生み出されるポジティブな影響を最大化し、ネガティブな影響を最小化する」ということです。

※一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会の本セミナー講演資料より

主なサステナビリティ課題

サステナビリティを取り巻く課題は非常に多く、国際的な重要課題としては、以下のような項目が挙げられています。

各課題は、Environment(環境)Social(社会)Governance(統治)の領域に分類され、「Social(社会)」領域には、特に課題が多いのが現状です。また最近では、環境問題に対する国際的な圧力も強まっており、国内上場企業においては事実上、対応が義務化されつつあります。

企業にサステナビリティが必要な理由

企業がサステナビリティに対応するようになった背景としては、社会問題の顕在化や消費者意識の高まり、ESG投資の拡大などが要因として挙げられます。また、法制化の動きや政府による推進活動、サステナビリティとビジネスに対する見方の変化なども、企業の対応を後押しした大きな要因の一つとして挙げられます。
こうした動きは、今後さらに加速・浸透していくことが予想され、適応できない企業は取り残されていく可能性が高くなります。そのため、サステナビリティに対応するということは、事業や組織存続のために、非常に重要なことなのです。

サステナビリティ推進のメリット

企業がサステナビリティ活動を推進する最も大きなメリットは、「組織や事業の持続的な成長につながる」という点です。サステナビリティ課題には、事業活動を阻害する要素も多く含まれます。そのためその課題を解決することで、事業活動が円滑になり、組織の質をより向上させることができるのです。
たとえば、自社の労働問題。これを解決することで、組織の生産性・従業員満足度の向上を期待することができます。またそれだけでなく、生産性が向上したことで、新しい価値創出や、社会的評価の向上も期待できます。
このように、サステナビリティ課題と向き合うことは、企業の本質的な成長につながります。一方で、短期的な取り組みだけでは、メリットを享受することが難しいのが実情です。メリットはサステナビリティ課題への取り組みを進めていく中で、徐々に成果として現れてくるため、中長期的な実践を継続することが重要です。

※一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会の本セミナー講演資料より

なぜサステナビリティは広がったのか

近年、認知度が高まっている「サステナビリティ」の概念ですが、そもそもなぜここまで浸透することになったのでしょうか。その理由としては、「採算性の向上」「政府からの圧力」「ステークホルダーからの圧力」といった、3つの要因を挙げることができます。

まず「採算性」については、2011年の東日本大震災、2015年のパリ協定を経て、大きく変化したと言えます。元々2010年頃までは、「サステナビリティは採算が取りづらい」という見方が強くありましたが、これらの出来事を経て、注目度が高まるとともに、「採算が取れる取り組み」として見方が変化していったのです。

また、人的資本の情報開示に関する法制化や、有価証券報告書による情報開示の義務化など、「政府からの圧力」も大きな要因の一つです。「サステナビリティに対応せざるを得ない状況」が作り出されたため、それまで関心がなかった企業の認知を集めるきっかけとなりました。

さらに、株主や投資家のみならず、消費者や求職者などのステークホルダーからの開示需要が高まったことも一つの要因です。ステークホルダーと良好な関係性を築くことは、事業活動を円滑に進めるうえで非常に重要です。ブランドの価値評価にもつながるため、対応を強化する企業が増えるきっかけになりました。

サステナビリティ企業評価の高い企業

サステナビリティ施策を設計・実践する際、日本のトップ企業がどのような開示を行っているのかをチェックすることはとても大切です。以下は、東洋経済新報社と日本経済新聞社による、調査結果と格付けです。同業他社だけではなく、先進的な施策を行っている企業は、ベンチマークの対象としてチェックしておくと良いでしょう。

※一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会の本セミナー講演資料より

情報開示としての人的資本

その人的資本開示は適切か

ESGの情報開示に際しては、ステークホルダーの要望やニーズに対して、適切に対応していくことが重要です。そのため、「リスクと機会の視点」「ガバナンスの視点」「投資家の視点」を意識した開示を行うことがポイントです。

「リスクと機会の視点」とは、自社の資本構造や価値創造プロセスについて「ポジティブな面とネガティブな面」が、しっかり示された開示になっているかどうかということです。たとえば、従業員が6,000人在籍している企業であれば、「その従業員数を活かしてどのような価値を創造できるのか」、逆に「その従業員数がもたらすリスクには何があるのか」など、各要素における「リスクと機会」について整理し、説明できるようにしておくことが重要です。

また「ガバナンスの視点」とは、人的資本のKPIに「ガバナンスの要素」を取り入れることができているかどうかという視点です。「組織全体の構造をふまえたKPI設定ができているか」「企業経営と人的資本のKPIがリンクした状態になっているか」などがポイントです。

そして「投資家の視点」とは、投資家からポジティブな評価が得られる開示なのかどうかという視点です。企業側は、自社のビジョンをふまえたKPIを設定し、投資家がKPIの内容からストーリーを読み解けるようにしておくことが重要です。

最近ではISO30414などのガイドライン整備も進んできています。しかしながら、既成の枠組みに沿った開示だけでは、ステークホルダーのニーズをとらえきれず、企業価値の認知につながらない可能性もあります。そのため、ステークホルダーの視点に立ち、企業の価値や新しい価値創造がイメージしやすい開示を行うことが重要です。

企業を取り巻く資本と人的資本の整合性

サステナビリティ経営を取り巻く資本には、人的資本以外にも、知的資本や財務資本、自然資本や社会・関係資本など、有形無形問わずさまざまな資本が存在します。そのため、開示の際は「人的資本とそれ以外の資本が、どのようにリンクしているのか」を示すことが重要です。

たとえば、「人的資本に〇円投資する」「〇〇関連の知的資本を増やす」といった、相互関係が見えづらい開示は好ましくありません。この場合は、「どんな価値創造がしたいのか、そのためにどんな知的資本が必要なのか、その知的資本を得るためにどれくらい人材に投資すべきなのか」というように、それぞれの情報がリンクした開示を行うことが重要です。情報の受け手は、企業の内情についてよく知らないことが多いため、ストーリーの納得感、開示内容の分かりやすさは、評価を受けるうえで重要なポイントになるでしょう。

※一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会の本セミナー講演資料より

アウトカム思考の重要性

投資家に向けた開示においては、アウトカム思考を持つことも大切です。投資家にとって、最終インパクトとなるアウトカムを理解することは、企業評価のプロセス上とても重要です。ストーリーテリングを意識しながら、資本投下によって得たアウトカムと課題について、しっかり説明できるようにしておくと良いでしょう。サステナビリティに関する情報開示は、単なる事業紹介や活動紹介の場ではないということを認識しておくことがポイントです。

※一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会の本セミナー講演資料より

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