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リコージャパンのSDGs浸透における企業文化変革の取り組み

登壇者紹介

太田 康子氏
リコージャパン株式会社
経営企画本部 コーポレートコミュニケーション部
SDGs推進グループ マネージャー

英国 CMI 認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー
CSR48 総監督
一般社団法人水風戦協会 理事
一般社団法人HAPPY WOMAN 理事
一般社団法人HAPPY EARTH 理事
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン組織拡大委員長
 
北海道札幌市生まれ 
震災ボランティアをきっかけに、2012年から サステナビリティ担当者の女子会「CSR48」に参画。
2代目総監督としてセミナーやイベントへの登壇のほか、ソーシャルビジネスマガジン「オルタナ」に CSR トピックスとコラムを連載中。
リコージャパンでは、サステナビリティレポートの制作と、全国約420名のSDGsキーパーソン制度を運営。
社内へのCSR勉強会を受講した社員は1万人以上。SDGsの取組セミナーへ参加した企業は2,000社にのぼる。

本イベントの全文は、下記URLからダウンロード可能です。
リコージャパンのSDGs浸透における企業文化変革の取り組み


企業を取り巻く環境の変化

近年、SDGsやESG、人的資本の情報開示への注目の高まりとともに企業を取り巻く環境にも変化が生じています。その最初のきっかけは1999年に行われたダボス会議です。

当時の国連事務総長、コフィ・アナン氏が、社会課題の解決には「民間企業」の存在が重要であると発言したこと、世界最大のサステナビリティイニシアチブ「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」が発足したことは企業に意識変革に影響をもたらしました。
リコーも2002年に日本企業としては2番目に「国連グローバル・コンパクト」へ署名し、翌年には国内初のCSR部門を設置しています。

また、コフィ・アナン氏は、2006年にPRI(責任投資原則)を提唱しています。PRIとは、投資家に「持続可能な社会」という観点を考慮した投資を行うよう促した任意の署名です。これにより、投資家が投資先選定基準にESGの観点を入れるという動きが加速しました。

さらに、2011年には人権の保護・尊重・救済に関する指導原則を記した「ビジネスと人権に関する指導原則」が発表されました。この原則でSDGsやESGの中枢である「人」にまつわる部分がフォーカスされるきっかけになりました。

リコーにもESGに関する情報開示要求はいただいております。ビジネスと人権など、社会からの要請も踏まえ、人的資本の情報開示の動きにも注目しています。

投資家・顧客からのESG要求

リコーグループの紹介

リコーは、創業者の市村清が掲げた「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」という三愛精神を大切にし、創業100周年にあたる2036年のビジョンとして「“はたらく”に歓びを」の実現に向けた取り組みを行っています。
リコーグループには約8万名、そのうちリコージャパンには約1万9千名の社員が在籍し、拠点数は国内に351か所(2021年4月1日現在)あり、全国広域をカバーした地域密着型の企業です。

また、経営理念であるリコーウェイの中で掲げている私たちの使命「世の中の役に立つ新しい価値を生み出し、生活の質の向上と持続可能な社会づくりに責任を果たす」のもと、グループ全体で「“はたらく”」の変革を含む7つのマテリアリティ(重要社会課題)を掲げています。私たちは、我々社員の「はたらく歓び」だけでなく、お客様にもその価値を提供できるよう、日々企業活動に取り組んでいます。

デジタルサービスの会社への変革

また、3年毎に発表している中期経営計画の経営目標には、2020年度よりマテリアリティ毎にESGの要素を盛り込んでいます。リコーでは、ESG目標=将来財務として考え、取り組みを進めています。

ESGを経営目標として設定

リコージャパンでは、事業とSDGsの同軸化も進めています。リコーのデジタル技術を活用した生産性向上や、データ分析・活用による新しい価値創造に向けた取り組みについても積極的に行っています。

たとえば、「路面モニタリング」や、バーチャル教室などです。リコーのデジタルサービスによって仕事の負荷を軽減し、クリエイティブに注力する時間を創出することで、お客様の「“はたらく”」を変革させたいという思いがあります。「お客様と一緒に広げる活動の見える化」という観点から、複合機の導入台数に応じたマングローブの植林にも取り組んでいます。

そのほか、急速なデジタル社会の進展のなかで、情報格差により就労に困難を抱える若者たちの支援を行う「若者向けデジタル支援プログラム」という企画も実施しています。在宅でもできるスキルトレーニングの一環として、オンライン会議の背景画像をデザインしてもらい、実際に社員に活用してもらっています。

リコーグループ社員とのコミュニケーションを通じて、「“はたらく”」ことについて知り、就労について前向きな気持ちが持てるような支援ができればと思っています。

NPOと取り組む社会貢献活動

リコージャパンのSDGsの浸透

リコージャパンでは、毎月「CSR-week」を設けています。これはコンプライアンスや社会貢献活動の参加の有無などに関するセルフチェック、インシデントの共有などを行う期間です。「CSR-week」を活用して、SDGsの認知度調査も複数回実施しています。2019年の1月時点では「全社員の99.6%がSDGsを認知している」状態です。ここまで認知度が高まったきっかけは、とある企業でリコーの社会貢献活動を紹介したことです。その際、大変大きな反響をいただきました。自分たちのCSR活動を紹介することで、社会課題解決に一緒に取り組むパートナーとして見ていただくことが出来るということに気付きました。

そこから「社員にもこのことを伝えたい!」と思い、2016年から開始したのが、CSR報告書を編集者視点で解説する勉強会です。全国47都道府県48支社で実施したのですが、ここでもポジティブな反響が多々ありました。私自身も勉強会の実施を通して、会社の施策や制度を浸透させることの重要性に気付くことができ、CSRについて見直す良い機会になったと感じています。現在は録画した勉強会の動画配信を行い、全社員が勉強会を受けることができる環境を整えています。また、スキマ時間でESGのテーマ毎に学ぶことが出来るスキマ講座やe-learningなど、リコーではさまざまな角度からSDGsの浸透を図っています。

CSR報告書勉強会

こうしたボトムアップの活動と併せて、お客様とのコミュニケーションの場も大切にしています。地域密着型企業であることを活かし、地元企業・地場産業の方々と情報交換をざっくばらんに行ってきました。これにより、いろいろな課題を共有することができ、今では頼りにしていただける場面も増えてきています。CSRはどの企業でも取り組んでいますし、企業経営に直結するので、より広く活発なコミュニケーションに発展しやすいと感じています。
 
また、社内にSDGsが浸透した要因としては、社長から従業員に向けたメッセージが発信されたことも、大きかったと思います。「リコーで働いていることを誇りに思えるような会社にしたい」「事業の繁栄には、SDGsの達成に寄与していることが必須である」など、社長自らの言葉で従業員に語りかけたことは、従業員の意識変革に大きな影響をもたらしたと感じています。

社内でSDGsに対する意識変革が起こり始めた頃、SDGsに関する正しい知識を、社内外に発信できる人材を生み出すために始まったのが「SDGsキーパーソン制度」です。キーパーソンの役割としては大きく分けて2つあります。1つは企業のブランド価値向上と信頼獲得、もう1つは業績貢献です。制度発足時は92名だったキーパーソンも、SDGsに関するお問い合わせの増加とともに現在は約420名まで増えています。

<紹介動画>
https://www.ricoh.co.jp/sales/about/sustainability/movie#anc02 

SDGsキーパーソンとは

SDGsキーパーソンはお客様や地域の課題を理解したうえで、どのような価値提供ができるのかを考え、部門内で共有・展開していくことをメインミッションとしています。
具体的には、提案活動にSDGsの観点や要素を盛り込み、日常活動への落とし込みを行います。また、好事例の収集や発信、水平展開を行っています。そのほか、SDGsや社会課題、企業課題についての理解を深め、各課題と事業を結びつけた活動を行っていくことが求められます。

SDGsキーパーソンの活躍

SDGsキーパーソンはSDGsへの理解を深めるためにさまざまな活動の「リード役」として、全国で活躍しています。キーパーソン同士、横のつながりも強く、1つの支社で実施された取り組みが、全国各地の支社に広がっていくこともあります。そのため、支社横断のプロジェクトも多く走っています。オンラインでインタラクティブなイベントが実施されるなど、社員が自発的に発案し、楽しみながら形にしていくという文化が醸成されています。

支社横断のプロジェクトが多数

また、こうした取り組みを年に一度、「RICOH JAPAN AWARD」という表彰制度で表彰を行います。さらに、社内イントラネット掲示板に社外から褒められた活動や、支社の取り組みが社員であれば誰でも投稿できるようになっています。全国の社員からリアクションが付くため、支社の垣根を越えたコミュニケーションの場にもなっています。そうして、いいね!をたくさん集めると翌週の役員幹部の朝会で発表されます。

RICOH JAPAN AWARD

これだけ社内でSDGsが浸透していても、まだまだやれることはたくさんあると考えています。現在は、事業とSDGsの同軸化をさらに推進するために、部門ごとにサステナビリティ目標を立てています。また、事業とSDGsの繋がりについて、認識をさらに深めてほしいという思いから、社長と部長クラスのSDGsをテーマにしたランチミーティングを実施しました。認識した課題については、今後もひとつずつしっかり取り組んでいきたいと思っています。

質疑応答

・トップが強く意識したきっかけとは?
元々リコーは環境経営を推進してきていますが、特にRE100に署名したことが大きかったと思います。日本企業として初めて2017年4月にRE100に署名したことで、メディア取材も増え、さまざまな企業からのベンチマークが増えました。また、それによってセミナーに登壇し、トップ自らが取組を発信する機会も増えたため、SDGsやESGへ取り組む意義を強く感じるようになったのではないかと考えます。
 
・キーパーソンの増加理由とは?
当初は、「上司に指名されたから仕方なくやっていた」という社員もいたと認識しています。しかし、SDGsの認知度が高まり、徐々にその必要性を感じる社員が増えたように思います。また、SDGsキーパーソンになりたくて入社した方や、子どもが学校でSDGsを学んでいるので、自分の会社のことを説明できるようになりたいと、自ら手を挙げて加わったというケースもあります。
 
・SDGs活動が生み出す価値について定量化しているか?
キーパーソンの活動に対しては、アンケートによる活動実績の把握をおこなっています。また、サステナビリティ目標も立てているため、弊社が提供するデジタルサービスによってどれくらい業務負荷を軽減できているか、何人分の労働力を生み出せたか、といったところは今後も追求していきたいと思っています。

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