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2、制作 (芸術の書 断片)

2、制作


 制作という題で話を始めてみたいと思います。とくに、ここでは絵画の制作について語って見たいと思います。そこで、制作というとかなり広い範囲の言葉ですが、制作に対する態度と、その絵画制作の状態について書くのがいいと思いここにて語りましょう。

さて、絵画制作というと、画家なら一番大切な行為だと思います。制作無くしては絵画というのはできないでしょう。しかし、絵筆を持つ前から、画家は制作がはじまっています。

絵の着想は描く前からイメージの中で出来ている。風景を描く人であれば、いろんな風景の一瞬の美を見出すでしょう。もちろん静物画を描く人もモチーフを組み合わせたりして、いろいろ考えながらセットするでありましょう。人物を描く人であれば、内在する美意識でもってモデルを描く中に画用紙に対するでしょう。

その時に、イメージとしてはすでに可能性が予想できていたり、しなかったりして、描いてみないとわからないのが現状だと思います。そう、絵画は描いてみないとわからないのです。

制作の途上において、最初のイメージとはちがったものとなっていくでしょう。それは、制作している中で、いろんなことを考えます。制作の中で、たくさんの発見があります。絵筆が勝手に動くこともあります。とても不思議な神秘的な奇跡が制作の中にあります。  

画家にとって制作は、神殿で神官が祈りの祝詞(のりと)をささげて天上の神々の言葉を受け取るように似ています。それは祈りの現場であるのです。

制作の現場には、あらゆる天使や神々の力を受けています。いかに、美の確信があるかという事、画家自身が心澄んでいて、イメージを受ける器ができていれば、枠から外れて天上の美に感激し、歓喜し、最高の法悦にひたり、画家自身の精神が最高に高揚し、興奮状態になっていきます。

その時、画家の自我は消え去り、一心不乱に、真剣勝負であります。作品が完成するまで、気が気でないでしょう。制作には情熱が必要である。それは、普段の生活を超えた神酒に酔った法悦がある。画家は制作しているときは、絵に夢中です。例えば、囲碁や将棋の棋士のような真剣勝負が繰り広げられているのです。そして、その制作には、神々の霊感、インスピレーションが降り、天使たちが画家に入り制作して絵筆とパレットが画家の体が溶け込み、自分を忘れるのです。制作の中、画家は無になっています。

神々、諸天の天使と一体となり、宇宙の大道と一体となって、小さな自分は消え行く。制作は、天地創造の現場でもあると言えます。制作は、自分を無にしてキャンバスに真剣に向き合い、真剣勝負をすることです。そして、心は他の世界に通じ、それは神の世界を見ていて、神の心を、世界をキャンバスに再現することをいうのです。なので、それは画家自身それを説明できない場合があります。その筆のひと塗りひと塗りに説明できないでしょう。ひと塗りひと塗りに画家の人生観なり思想などが込められ、それと神のイデアが込められ、作品が出来てきます。絵画は完成する場合、画家自身が決めます。作品は制作途中に生命が込められます。よく、絵画は画布に絵の具がついた絵の具の塊(かたまり)でしかないという人もいますが、絵画は決して絵の具の塊ではなく、生命が宿っていて、時に人の心を揺り動かすことがあります。絵を観て感動することもあれば、言い知れぬ恐怖や美感覚など、いろんな感情を抱かせるのです。

絵画は生きています。画家は生命を作っています。画家は預言者であり、天上のイメージを受けて、霊感を受けて、画家に神々や天使たちが協力して作品を作っているのです。  

自分の中にある魂を感性で聞こう、神を感じ、感性をもって天上の美を感じよう。そして、自分の感じたイメージを絵画に再現していきましょう。

それが、制作であるという事です。

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