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「無」   詩・本多裕樹

「無」







あてもなく歩き

夜の静かな秋の風

どことなく夢に見るささやきが

月の世界を彩るであろう



時の終わりに我らあり

静かな場所に埋められて

その念仏が大地を清め

新たなる夢を創造する



ありし象徴の森にて

キマイラを眺め歌う詩に

お前のように清くあればと思いつつ

実は輝きに満ちた月の原質を



女を捨てたら不運がやってきて

どうあっても女が不運だった

イブのような文明を我らが作ったとて

汝が夢にて労働の義務与えられる



かつてのリリスを思い出し、

その冥府に想いを馳せ

時に、火の海をわたりウジを身にまとう

時の終わりを願いつつそんな理想を抱きした



滅びの庭に我らあり

何をしても我らの新生

すべての終わりには

すべての始まりもまたあるものだ



どっさり心を奪われて

男は死地に向かいつつ

天空の世界を目に焼き付ける

そうしてまた蘇る事になった



ただ、その話は誰にもしないで

世は終わり

一部の秘境に伝わるだけで

誰も知らない神理となっていった



言葉は消えて

現実も消えて

すべて消えて

何もかも消えて



無にありし

自然に

自由に、

幸福に



幸福も消え

ただ、空と一体になり

宇宙が私となった

私はいないがありうる者となっていった



いずれ星に転生し

星の体を持って生命を養い

永遠の星になっていった

生命の原質になったのだった









令和6年8月17日 本多裕樹

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