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【#4北野 信之介】支援を求める人たちのために、知識と経験を積み重ねる

HuMAの活動に携わる人々に注目するインタビュー。
第4回目は、日本体育大学大学院で救急災害医療学を学び、さらに日本医科大学多摩永山病院救命救急センターで臨床経験を積みながら、災害医療支援に力を注ぐ救急救命士・北野信之介さん。HuMA の次の世代を担うリーダーとして期待される北野さんの想いとは。

北野救命士②

「救命士はオールラウンダー」と話す北野さん(写真右)


高い専門性を持った救命士を目指して

「人を助けられる仕事をしたい」という想いが心の中に芽生えたのは、高校生くらいのことだったと思います。自分自身の記憶はほとんどないのですが、私は1歳で川崎病を患い、2歳の時には大けがを負った経験があります。家族から当時の話を聞く中で「今の自分は助けてもらった命。次は自分が人の役に立ちたい」と考えるようになりました。

高校卒業後の進路を決めようとしていた時、ちょうど日本体育大学で救命救急の専門コースが新設されることを知りました。従来、救急救命士になるには専門学校への進学が主流でしたが、社会の高齢化に伴う救命医療へのニーズの高まりを受け、より学術的なバックグラウンドを持つ救命士が必要だと考えられるようになったのです。ここなら、自らが志す「人を助ける仕事」に近づけるはず。新しくできたコースという魅力も手伝って、日本体育大学救急救命士養成課程への進学を決めました。

大学1年生の秋、初めてマラソン大会の救護ボランティアに参加しました。メディカルスタッフとしてけが人を医務室に案内し応急処置のサポートをすることが私たちの役割だったのですが、痙攣を起こしている人がいたり、嘔吐している人がいたり、目の前には想像していた以上にハードな光景が広がっていました。救命の勉強をしていながら、現場で立ちすくんでしまっている自分にショックを受け、一方で「この状況に対応できるようになれば、人の役に立てる。自分が目指そうとしているのはこれなんだ」という確信を得たのを覚えています。

その後、大学の課程を修めるだけでなく何かプラスアルファの活動をしていこうと、友人と共に救急医療サークルを立ち上げました。心肺蘇生の講習会やスポーツの救護ボランティアといった活動を続け、学会での発表も経験しました。HuMAの存在を知ったのもこの頃です。HuMA会員の先生を通してイベントに参加させてもらったこともあり、救命士の資格を取得した後HuMAの活動に加わったのは、自分にとって自然な流れでした。


現場に立つ度に感じる、難しさと責任

これまで携わった災害医療支援では主に「業務調整員」の役割を担ってきました。それは一言でまとめるなら、医療チームが活動するための環境づくり。活動場所の調整、資機材の管理や補充、移動・通信手段の確保、さらには活動の広報など、一般的には「ロジスティクス」と呼ばれるもので、医師と看護師が行うケア以外の全てを指します。

ただしHuMAの場合、医師・看護師と業務調整員が完全に分業しているわけではなく、互いに補い合いながらチームを運営しています。それぞれが枠にとらわれず、率先して行動する意識で取り組む。それは「必要な人に必要な支援を届ける」というHuMAの理念に通じるものであり、HuMAならではの良さなのだと思います。チームとして常に最善を尽くすことは、私自身の大きなやりがいにつながっています。

業務調整員としての役割の中で、特に重要なのが情報の取得です。被害状況や被害者数に加えて、被災地周辺の医療機関が機能しているのか、薬の処方は可能なのか、そのような情報をもとに計画を立て、活動を進めていくことになります。災害の現場では被害の全体像を把握することが難しく、また状況は刻一刻と変化していきます。何が信頼性の高い情報で、何がそうでないものなのかを見極め、チームで判断をしていかなければなりません。現場に立つ度に、その難しさと責任を感じています。

北野救命士③夜間診療後のミーティング

夜間診療後のチームミーティング

救命士になって今年で4年目。HuMAでも1年目から活動に参加させてもらい、翌年以降の活動でも先遣隊のメンバーに加わったり、現地スタッフを遠隔でサポートするチームのリーダーを任されたりと、貴重な経験をさせてもらっています。しかし「私たちはどこまで被災地の人々の役に立てるのだろうか」「かえって現地の負担になってしまわないだろうか」活動の陰には、実はそんな思いもつきまとっていました。

2019年、長野県を襲った台風被害の支援活動でのこと。発災翌日に現地入りし、一度東京に戻って再び長野に赴いたのですが、現地の保健師の方が私たちのことを覚えていてくれ、その時「自分たちのやってきたことは間違っていなかったんだ」と思うことができました。

経験豊富な先輩たちと共に活動できること、そしていろいろなことを任せてもらえることは、本当に恵まれていると感じます。先輩たちの期待に応えられるよう、これからも自分自身の専門性を高め、支援を必要とする人々のために活かしていきたいと考えています。

北野救命士①

災害発生から数カ月後の慢性期医療にも対応
ケアを求める人がいる限り支援活動は続く

災害医療支援活動には多くの方々の支援が必要です。一人ひとりの協力が支えになります。HuMAについて、より詳しく知りたい方はこちら

[TEXT:堂本侑希(広報ボランティア)]


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