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【#6安芸 みな】悔いを抱える人が一人でも少なくなるように

HuMAでは現在、北海道・利尻島で新型コロナウィルス感染拡大に対する医療支援活動を行っています。詳しくはこちら
コロナ対応の現場に立つ医療従事者の想いとして、大阪コロナ重症センターでの支援活動について2021年7月に取材した内容を再編して掲載します。
2020年冬から2度にわたりセンターで重症者のケアに携わった看護師•安芸さんに話を聞きました。

リレーをつなぐように現場を守る

大阪コロナ重症センターが稼働を開始して間もない頃、現場は深刻な人手不足に陥っていました。「短い期間でいいから力を貸してほしい」行政からの依頼を受けて、1週間から10日単位で各地から医療従事者が入れ替わり立ち代わり派遣され、リレーをつなぐように現場を守っているような状況でした。

私は、普段大阪府内の病院で非常勤の看護師として勤務する傍ら、リラクゼーションサロンの仕事にも就いています。急性期医療の経験もあり、自分のスキルが非常時の医療活動に役立てられるのではないか、と思い災害医療に関心を持つようになりました。
「どうすれば支援活動に関わることができるだろう」と思案する中で、縁あってHuMAの活動を知り、ファーストミッションとして今回のコロナ重症センターでの活動に参加することを決めました。自分自身の生活の拠点でもある大阪。「身近な地域のために」という想いも参加への後押しになったように思います。

センターでは、1日を3つの時間帯に分けてシフトを組んで勤務していました。
勤務中は常に頭も身体もフル稼働。防護服にフェイスシールドやN-95マスクをつけた装備はまるでサウナスーツ。空調は患者さんの状態に合わせて高めの温度設定にしており、自分たちが暑くても下げることはできません。
看護師は医師を含めたチームの中でカンファレンスを行い、それぞれの患者さんにどのようなケアを施すかを決め、実行していきます。病院のICUでは看護師1名に対して2名という体制が一般的ですが、センターでは看護師1名が4名の患者を担当します。
センターに運ばれてくる患者はいつ容体が急変してもおかしくない方ばかり。特に、肺炎が広がっている患者さんには伏臥位療法というケアを行わなければなりません。これは胸部の動きをよくするために身体の向きを2~6時間おきに変えるもので、身体の各所につないでいる管などもあわせて動かすため、一度行うにも6~8名の医療スタッフの手を要します。チーム全体での24時間体制のケアが続いていました。

過酷な日々を支えた仲間の存在

重症患者のベッドがあるエリア「レッドゾーン」では、患者さんの臨終の場面に立ち会うことが少なからずありました。その時、私たち看護師が大切にしていたのは、患者さんのご家族のケアです。
本来ならそばにいて看取ってあげられるはずなのに、それが叶わない。その無念さは計り知れません。せめて画面越しでも患者さんの顔が見られるように、家族の声を届けられるように、ビデオ通話をつないで最後の家族での時間を持ってもらうようにしました。
「後から遺体袋に入った姿を見るなんて悲しすぎる。せめて息を引き取るその瞬間を一緒に過ごしてもらいたい」その想いをご家族に伝えながら自分自身も涙が止まりませんでした。防護服の中であふれた涙を拭くこともできず、一連の処置が終わった後で防護服を脱ぐと、汗と涙で顔の皮がめくれあがっていたこともありました。

心身共に過酷な状況ではありましたが、志を同じくする仲間の存在がとても大きな支えになりました。センターに集まった看護師たちは勤務する病院も違えば、専門分野も違う。しかし、それぞれに際立つスキルとキャラクターを持つ「ホームランバッター」であることは共通していました。看護の実技が極めて優れている人もいれば、患者さんの心に寄り添う人もいて、各々が得意なことを活かすチームプレーでセンターは成り立っていたように思います。尊敬できる仲間たちから刺激を受け、学びを得る毎日でした。

緊迫した現場と平和な日常の間で

センターでの勤務を終えて日常生活に戻ってくると「ああ、世の中は平和なんだ」という感覚を得ました。現場の緊迫感とそれ以外の世界とのギャップ。「コロナウィルスの脅威は当事者でなければなかなか現実味を感じにくい。それがコロナの難しさなんだ」と思いました。
先日(2021年7月当時)大阪で「コロナによる死亡者が0になった」との報道がありましたが、私はそのニュースを聞いてとても嬉しく思いました。それは、センターでいろんな人々の後悔を目にしてきたから。
「あの時こうしておけば、苦しむことはなかったのではないか」
「あの時こうしなければ、家族は助かったのではないか」
そんな悔いを抱えてしまう人が一人でも少なくなることを切に願っています。そして自分自身も後悔をしないような生き方をしなければと思います。

今後も派遣要請があった時は、またセンターでの活動に携わっていこうと考えています。

災害医療支援活動には多くの方々の支援が必要です。一人ひとりの協力が支えになります。HuMAについて、より詳しく知りたい方はこちら


[TEXT:堂本侑希(広報ボランティア)]


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