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李禹煥◆兵庫県立美術館◆

◆李禹煥との出会い

私が李禹煥(リ・ウーファン)の作品に出会ったのは2011年、大学生の頃初めて直島に行った瀬戸内国際芸術祭がきっかけだった。

写真部の女子3人旅で、レンタル自転車を借りて島中のアートを巡る。
元々直島には美術館が点在しており、行ってみたかった夢の場所だった。
地中美術館やベネッセハウスミュージアムなど色々と有名なアートが見られるとあって、正直始めはよく知らない李禹煥美術館をサッと観るつもりだった。

しかしながら、ノーマークだった李禹煥美術館で大感動した事がきっかけで、今後はこれ目当てで直島へ行くようになる。

安藤忠雄建築と李禹煥の作品は一体感があって、作品だけでなく空間そのものに感動した。
その時大学生だった私は、それを上手く言語化出来ず、ただ感動してしばらくずっとその空間に居て、動きたくなかった。

当時はアートの祭典中。バタバタとレンタル自転車でたくさんのアートを見回っていた私たちには勿論ゆっくりする時間も無く。初回は名残惜しさを残してその場を後にした。

それが良かったのか、社会人になってからもまた行きたい場所として記憶に残り続け、それから2度、直島に足を運んだ。(初回のデートは早く帰れルール的な感じ)

今度のお目当ては勿論、李禹煥美術館だ。

一度観て満足するアートと、何度も観たいアートって、正直あると思う。

私は何度行っても飽きない事に驚き、またその時々の感じ方の違いにも驚いた。
(そもそも常設展で何度も同じ作品を見る機会などはほぼゼロに近く、これまで観てきたほとんどの作品を一度しか観ていなかったため、この感動は新しかった。
そしてこの経験は貴重で、直島へ行くことでそれが叶うのもすごく幸いなことだなぁと思う。)

私はアートにも色々な種類があるなかで、特に現代アートを何度も観たいと思う。
その時々で感じること、考えること、気づくことが変化するからだ。

直島でのアート鑑賞の場合、友人とだったり、その時の彼だったり、色々な人と同じアートを観るのはすごく面白かった。
(時にアートに集中出来なくてドキドキしたり、相手の表情を観察したり、そんなのだって立派なアート鑑賞の一環だと、私は思う…!)

李禹煥美術館はそんな私にとってぴったりの場所であり、最良の癒しの場所でもあった。
外のアプローチからワクワクしながら歩いたり、周りを回遊したり、写真を撮ったり、館内でゆっくり鑑賞したり、時には感極まった。

また、誰かと鑑賞した際に思っていることが、【アートの感想は議論しなくたって良くて、その場に一緒に出向くだけで良い】ということだ。
何を感じるかは人それぞれ。それをどうこうっていうのは無くて、何か感じたらそれが良いことだなぁと思う。もちろん、何も感じなくても、OK。ただ同じ場所で同じアートを観たという経験の共有だけで良いと思っている。

いろんな環境で育ち、考えや習慣の違いの中で、同じアートに出会ったのだから、そりゃ感じる事は違うでしょう、でも、似ている事はあるよね。そんな感じで良いのです。ひとつの答えに突き詰めることは難しく、ひとつの見解にすぎない。

特段、現代アートはその感じ方の幅が広いと思うので、色々な感じ方をし、それを知ること自体には興味がある。
そのアートをみて何を思い出したり、思い浮かべたり、どこで心が動くのか。
アートって技術的な事だけでなく、そのアーティストの思想や考えが反映されているから。そして作者の真意が伝わりにくいものも多いから。

話が大脱線してきたので元に戻すと、そんな思い入れのある李禹煥がその他の美術館で見かける事は多くなく、それが大好きな兵庫県立美術館で展示されることはすごく嬉しいことだった!


◆兵庫県立美術館での展示

まずは李禹煥の作品に再会できたこと、また貴重な初期の作品から現在の作品まで幅広く観れて、とても嬉しかった。

そして、李禹煥の作品に久しぶりに触れる私自身が過去の自分から変化し、今回は主人と一緒に観ることができたのもまた凄く嬉しかった。

約10年を経て、その間様々なアートに触れたことで感受性を磨き、展示を観れたので、これまでで一番李氏の意図を汲んだ鑑賞が出来たと思う。

ただ、あぁ質感が好きだな、綺麗だな、落ち着くな、だけでなく、解説を通じて李氏の経験や思想、そこからこの作品が生まれるのかと、そういう理解も含めて作品を鑑賞することができたなと感じている。

また、改めてなぜここまで李禹煥の作品に惹かれたのかも、私自身の過去や好みを思い返し納得し、顕在化した。

李禹煥の作品の、余白の美しさ、キャンバスだけでなく空間も併せて作品になる所、そして素材そのものを大切にする所、人としてきっと素直な人だよなぁと作品から伝わる所が好きだ。

主人と好きな作品が同じだったことも、嬉しかったことのひとつ。感じ方が近いということは嬉しいこと。

こんなに素晴らしい展示、また何年後かに観れたらなぁ、また直島にも行きたいな。

ところで最近久しぶりにnoteを開く機会があって、改めて言葉って大事。文章って大事って思い直した。そして文才の人に出会うとワクワクする私。笑
佐藤健寿の奇界遺産の展示を観た時もこれすごく思った事。
思った事をちゃんと残していこうと思っていたのについつい忘れている。
写真だけじゃなく、たまには書き残そう。

2023/1/30


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