マイナス金利の深堀りの是非

日本銀行(日銀)は、いま民間銀行が日銀に預けている現金にマイナス0.1%の金利をつけています。(なので、民間銀行がずっと日銀にお金を預けておくと、少しずつ減っていくことになります。)

マイナス金利の深堀りというのは、金利をさらにマイナス方向に下げるという意味です。そうすると、国債や銀行貸出などの市場金利も一緒に下がることが見込まれ、投資家の円建て金融資産への需要がさがるので、円高を防ぐ効果があります。

マイナス金利の深堀りが議論になる背景としては、アメリカが金利を下げ始めており、それを追う形で世界的な利下げが見込まれることが挙げられます。日本だけが金利を下げないと、円高、エネルギーなどの輸入品の値段の低下、物価の低下、というサイクルが発生する恐れがあり、日銀が物価をあげるために現在行っている諸政策の効果に水を差す恐れがあります。

ただ、日銀が民間銀行に払う金利がマイナスでも、民間銀行が預金者に払う金利はマイナスにはできないのが現状なので、民間銀行の保有資産に払われる市場金利が下がると、民間銀行の利益が減って、経営を圧迫する問題があります。そうすると、民間銀行がリスクのある投資を手控えたり、逆に高い利回りを狙ってギャンブル的な融資を行ったりする弊害が生じます。(後者の例としては、スルガ銀行が最近起こしたアパート向けローンの乱脈融資が挙げられます。)

以下の日経経済教室の記事に以前書いた通り、いまのマイナス金利でも民間銀行の経営は相当圧迫されており、この問題を考えるとなかなかマイナス金利の深堀りは難しいです。

とはいえ、アメリカの利下げ幅が大きくなり、円ドルレートが100円ラインを突破するなどした場合は、円高の悪影響を避けるためにマイナス金利の深堀りを選ぶかもしれません。その場合は、民間銀行のシステム投資費用に補助金をつけるなどの財政措置で、民間銀行の経費を下げて、民間銀行の経営への悪影響を緩和するなどの政策が考えられます。こちらは日銀の裁量外なので、政府と日銀が連携する必要があります。

この政策パッケージの課題は、社会のエリート層というイメージが強い銀行向けの補助金は、なかなか世論の理解を得られないかもしれないことです。今後の円滑なマクロ政策執行のためには、この辺のイメージを変えていく必要はあると思います。

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