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ビー玉

吐くほど泣いて
涙も枯れて
鳴咽とともに
せり上がり
のどの奥から
こぼれ落ちる
透きとおった
ビー玉ひとつ

かつん、
またひとつ
こつん、
硬質な音を立て
床に跳ねかえり
それからまた
ふたつ、みっつ
かちりかちり、
そこからは
数えきれないくらい
ざあざあ、
ざらざら、
両手に受けきれず溢れ

胸を突き破り
のどをこじ開け
叩きつける雹のように
こんなにもわたしのなかに
仕舞い込まれていたのだと
驚愕するほどに

気がつけば
床の上には
行き場のない
ひと山のビー玉
冷え切った部屋
おし黙って座りつづける
あなたと、わたしの間
失われてしまったものへの
供物のように

あなたがすくい上げた手のひらで
ビー玉は細かくひび割れて
ぴしりぴしり、
はらり、
ぱあん、
ひとつ残らず
かけらとなって
立ち昇り
灰色の部屋の空気に
つかの間のきらめきを

やがてあなたは
ゆっくりと
向きを変えると
振り返ることなく
出ていった

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