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認知症とアロマテラピー(1)

介護現場にいらっしゃる方は、認知症についてはご承知かと思います。
ざっくりと脳の機能低下により生活に支障をきたす症状が見られる疾患の総称だと思います。

最初に結論から申し上げますと、神経細胞の変性をアロマテラピーで治療をする。と言うような話は、残念ながら1件、ブラジル(だったような記憶)の脳外科チームの話しか聞いたことがありません。それも、脳腫瘍の治療に関するトピックだったような記憶があります。これは、アロマテラピー業界では世界的に有名なロバート・ティスランド先生がセミナー中に、ポロッと、これからに期待したい分野として、話してくださったレベルでの話です。

2022年の現時点では、日本では、鳥取大学の浦上克也医学博士が出版された著作と、それの元データと思われる神保大樹氏の卒業論文による「昼夜ブレンド」が有名ですが。
実は、2016年の日本アロマテラピー学会の総会にて、神保大樹医学博士が登壇されたセミナーに参加させていただきました。
そこで、以前からどうしても気になっていた、昼夜ブレンドの選択理由を伺うことができ、私の中で、謎は全て解決されました。
それより前に、浦上氏の登壇されたAEAJ主催のセミナーでは、「いくつか候補はあったが、結果が良かったから。他に何があったか忘れた。」と、お答えになっていましたが、やはり、臨床実験をされたご本人である神保氏は、どうやって選定されていったのかを、明確にご記憶されていました。

昼用ブレンド「レモンとローズマリー・カンファー」夜用ブレンド「ラベンダーとオレンジスイート」と言われ、各メーカーそのようにブレンドして販売されていますが、これこそまさに、『本に書いてあったから。』の実践ですよね。
もちろん、有効ではないと言うことではありません。
認知機能の低下とともに、昼夜が逆転してしまい、何時間かおきにウトウトしてしまうせいで、夜起きてお散歩してしまう方も多いかと思います。
そもそも、認知症と診断された方は、ずっとボーとしているわけではなく、波のように意識が明確な時と、ぼんやりする時とを繰り返していらっしゃると思います。
この波を、芳香成分により大脳辺縁系に直接刺激を与えて、リズムを整えよう。と言う手法なので、朝、陽の光を浴びるように、脳を起こす刺激的な香りを嗅ぎ、夜、入眠しやすいように心が安らぐ香りを嗅ぐ。と言うことが基本になります。
しかし、神保先生は医学博士として、医療として考えたときに、『安定供給できること』も考えなければなりませんでした。『有効と思われる希少な精油もありましたが、希少な精油では、医療として安定供給ができない為、安定して収穫でき、収油率も高く、比較的安価で提供できるもの。』が、精油選定の理由との事でした。

そもそも、アロマテラピーは、利用する本人にとって『いい香り』すなわち『脳にとって快』である事が大切です。良薬口に苦し。と言うこともありますが、アロマテラピーは、解剖生理学的に情動や記憶と深い結びつきがあり、ネガティブな感情と結びつく精油は、どんなに有用な薬理作用があっても、本人にとっては『ストレス』となり、『闘争と逃走』の自律神経が働き、有意差を出すことはないと思われます。
ここが、アロマテラピーの論文の難しいところです。正直。

そう言ったわけで、臭い。嫌い。と思うと、香りを嗅ぐ行為は続かなくなると思いますが、きっとそう言う被験者さんが、「いくら続けないと意味がないと言っても途中でやめちゃうんだよね。」と言う、浦上氏の言葉に繋がっているのだろうと、私は解釈しています。
何しろ、相手は医療をテリトリーに考えており、アロマテラピーについては、私の方が勉強していると自負しておりますから、大元は神保氏の論文であり、彼が記憶していたことの方が真実だと確信しています。

そう言う理由なので、続けられるためには、有用な成分を含む本人にとって好きな香りであることが重要です。
ひとりひとりの利用者さんの体調、体質、既往症、嗜好を加味して、予算に応じて精油を選択できるアロマセラピストにご相談ください。
きっと、続けられる香りを見つけて、脳イキイキ生活に活かせることと思います。

アロマテラピーの嗅覚と大脳辺縁系の関係について詳しく学びたい方は、順番に書いていきますので、順番にご覧ください。
順番は、守っていただいた方が理解しやすいように書いております。

この記事は、「介護に活かすアロマテラピー」として、まとめています。

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