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読書感想文)沈まぬ太陽

沈まぬ太陽 / 山崎豊子 / 新潮社
1~5巻全巻単行本、市立図書館蔵書

図書館貸し出しのメモから

  1. アフリカ篇上 2023/8/22~26

  2. アフリカ篇下 2023/8/26~9/11(中断含む)

  3. 御巣鷹山篇 2023/9/16~10/3

  4. 会長室篇上 2023/10/3~14

  5. 会長室篇下 2023/10/13~11/3

読書習慣がもどってからなかなか小説を読み始めなかったし、小説を読み始めてもなるべくシリーズものを避けるような選定をしていた。小さな部署でなんだかんだで仕事が回ってきて残業になるし、子供がまだ小さいため世話をしていたら時間がとれない。なかなか長い作品を読むことにならないから避けるようにしていたという感じだ。
しかしある程度読み始めると、複数並行でさばいていくような読み方でも楽しめるようになってきたし、時々当番で土曜日会社に出る時もありなんだかんだでまとまった時間もできそうだ。山崎豊子は沈まぬ太陽も読みたいが、昔テレビでみた(唐沢寿明の方ではなく田宮二郎の方)記憶がある白い巨塔も読んでみたい。両作品とも5巻構成で長いが、文体があうあわないもある。企業ものは好きな分野ではあって、多少文体があれでもまあ読めるだろうということで、山崎作品の試験的な意味合いもあって本作を読み始めることになった。

まあ、結果としては長いのを読みなれてスピードアップしたけど並行処理が多くなって冊数が増えるような感じにはなっているが。

本作品は渡辺謙の映画を先に見ているのと、WEBでストーリーは見ているのでなんとなくあらすじは押さえている、という感じで読み始めた。作品は三部一・二巻のアフリカ篇、三巻の御巣鷹山篇、四・五巻の会長室篇に分かれる。恩地のモデルである小倉さんが経験しているのは三巻を除く部分であり、実際墜落事故の当時は二度目のナイロビ赴任をしていたそうで(小説なので当然ではあるが)三巻の恩地と事故処理の関わりは創作による部分となる。

読んでいると三巻だけは浮いていて読んだ当時は少し違和感が残る感じであった。子供ごころに事故発生当時の状況は覚えているので、読んでいて記憶が呼び起こされる部分もあるのだが、ネット等で山崎作品についていわれる「資料そのままで脚色部分がほとんどない」というのが、特に三巻については強く実録ものに近い感じだ。

ただ全体を通して読み終わると、作者が日航の腐敗を強く訴えたかったということもあり、例えモデルの小倉さんが実際に経験していなかったとしても御巣鷹山の話を核に据えたのは、まあ正解だろうなと感じる。ただし三巻は恩地はお客様係として時折役割を演じているだけで、特に目立った働きはしない。というか四巻以降も社内腐敗と国見会長の話がメインで時々腐敗追及の仕事で活躍する、という感じである。

自分の中では恩地が主人公として活躍しているのはアフリカ篇だけである。苦しみの中でもがいている恩地がよく描かれ、苦しいながらもなんとかしようとする恩地と会社との闘いにどうなるのかと楽しみながら読めた。そして三巻は(創作が入った)事故の記録、四・五巻は企業腐敗糾弾の話という感じで人間ドラマからは遠ざかった。(三巻は別の意味で人間ドラマではあるが、主要登場人物の、という意味で)

話もハッピーエンドではないし、行天が連行されたのと岩合が更迭されたのが物語としては救いではあるが、読んでいて胸のすく思いは全くしない。まあこれだけ腐敗していたらその後の倒産も仕方がないね、という思いはある。そこからの再生についてはおそらく稲盛さん関係の実録ものを読めばわかるのだろうと思うが、まだそこまで手をだそうかという気にはなれない。

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