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人的資本の開示項目に関する基礎知識

前回、人的資本経営について
以下の記事でご紹介しました。

今回はこちらの話の続編です。

まだ読んでいない方は先に
読んで頂くことをお勧めします。

前回の記事を要約すると、
以下の内容となります。

①人は企業においてコストではなく、
 成長に不可欠な投資対象となる
 「資本」である。

②人的資本を可視化して企業価値を測る。
 上場企業に対しては、これによって
 株価や金融機関の融資にも影響する。

③人的資本のKPIは主に
 「働き易さ」と「成長促進」を目指す
 項目で設定される。

④人的資本を企業価値向上の源泉と位置づけ
 そのプロセスの言語化、かつストーリーが
 企業価値を決める。

今回は上記の③について
具体的にいつから、何を公開しているのか?

簡潔にご紹介したいと思います。



1.人的資本の情報開示が注目された背景


一般的には以下の3つが挙げられます。

①ESG投資の広まりと
 米国における情報開示の義務化

 Environment:環境
 Social   :社会
 Governance :ガバナンス

②高齢化社会における労働力不足

 労働力が不足する中、人的資本への投資
 によって労働生産性の向上が求められる。

③ダイバーシティ経営の推進と
 イノベーション創出の必要性

 グローバルな市場競争で生き残るため、
 多様な人材を育成することで
 イノベーションを起こす引き金となる。

要するに、人的資本経営とは、
これまで企業内で秘密とされてきた
人材への投資を数値化して、

投資家へ示すことで
自社の企業価値をアピールしなければ
ならなくなったということです。

更に、メリットとしては
企業ブランドの価値向上によって
採用活動にも良い影響を与えるという点です。


2.いつまでに準備が必要?


2023年8月に人的資本経営の可視化指針が
発表されてから重要性が高まる中、

2023年3月期より、
金融商品取引法第24条において
「有価証券報告書」を発行する
約4,000社の上場企業に対して、
人的資本の情報開示が義務化されています。

例として、トヨタ自動車の有価証券報告書
を以下にリンク先を貼っておきます。
(P.15以降が該当する項目です。)


3.人的資本の開示情報とは?


人的資本可視化指針では
以下の7分野、19項目が開示情報となります。

  1. 人材育成

    • リーダーシップ

    • 育成

    • スキル/経験

  2. エンゲージメント

    • エンゲージメント

  3. 流動性

    • 採用

    • 維持

    • サクセッション

  4. ダイバーシティ

    • ダイバーシティ

    • 非差別

    • 育児休業

  5. 健康・安全

    • 精神的健康

    • 身体的健康

    • 安全

  6. 労働慣行

    • 労働慣行

    • 児童労働/強制労働

    • 賃金の公平性

    • 福利厚生

    • 組合との関係

  7. コンプライアンス

    • コンプライアンス/倫理

以下に、リンクを貼っておきます。
興味のある方はご覧ください。

https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf

また、
国際的なガイドライン(ISO30414)では
人的資本の情報開示に関する指針が提供され、
企業は戦略的にどの領域に焦点を当てるかを
委ねており、戦略的に取り組む必要があります。

11分野、58項目がありますが、
少し要約したものを列挙します。

  1. コンプライアンスと倫理

    • ビジネス規範に対するコンプライアンスの測定指標

  2. コスト

    • 採用や雇用、離職など、労働力のコストに関する測定指標

  3. ダイバーシティ

    • 労働力とリーダーシップチームの特徴を示す指標

  4. リーダーシップ

    • 管理職への信頼などの指標

  5. 組織文化

    • エンゲージメントなど、社員の意識と定着率の測定指標

  6. 健康、安全

    • 労災などに関する指標

  7. 生産性

    • 人的資本の生産性と組織への貢献の指標

  8. 採用、異動、離職

    • 人事プロセスにおいて、適切な人的資本を提供する企業の能力を示す指標

  9. スキルと能力

    • 個人の人的資本の質や内容に関する指標

  10. 後継者計画

    • 後継候補者の育成度合いに関する指標

  11. 労働力

    • 社員数などの指標


4.最後に


今回は、
「あれ項目って何だったかな?」
と忘れてしまった人向けに
一発で分かる様にまとめた資料です。

備忘録的に使ってください。

それと、
最後にお伝えしたいことがあります。

人事の人間は
戦略・労務・評価・採用・育成の中で
特定の分野だけに精通していては
DXの進化と共に不要な存在となります。

採用の担当者であっても
社内の人事の制度や開示情報を把握し、
どのように採用へ生かせるか?

この視点を常にもっておく必要があります。

よく巷では
「経営と人事の融合」などと
大きな括りで話をしてしまいがちです。

しかし、それは小さな視点で見ると
経営の人間は人事に無関心ではダメ
人事の人間も経営に無関心ではダメ

ということに等しいのです。

御社の経営陣は、採用も意識した
人事制度の改革を行っているでしょうか?

また人事の皆さんは
経営戦略を何も見ずに言えますか?

ぜひ御社でも、問いを立ててみてください。

上場企業はともかく
多くの中小企業の社長、人事部長は
この重要性にまだ気づいていません。

だからそこにチャンスがある。
そう私は思います。

学生は企業側が思っている以上に
人的資本経営には興味があり、
企業の公開情報をチェックしています。

採用担当者は
自社の公開している数値情報や
人事制度、経営戦略くらいは
すぐに言えるようにしておきましょうね。

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